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タイムカード

勤怠管理はますます重要に!テレワーク時代の勤怠管理の課題や考え方は?

2020.08.31

勤怠管理とは、会社が従業員の就業状況を適正に把握することです。その基本は、従業員の労働時間をきちんと把握することといえます。近年では、この勤怠管理の重要性が高まってきています。

今回は、会社が従業員の労働時間を把握することが必要な理由をご紹介していきます。

(1)なぜ従業員の労働時間を把握することが必要なのか?

労働時間を把握する理由はいくつかありますが、まず挙げられるのは、残業代を含む賃金をきちんと支払うためでしょう。また、長時間労働による健康障害や過労死などを防ぐためにも必要です。従業員の労働生産性を把握し、より効率的な働き方を考えるうえでも、勤怠管理は重要となります。

特に、賃金を正確に支払うためには、勤怠管理が絶対に必要になります。なぜなら、労働基準法では、賃金は労働時間に対して支払うことが原則だからです。

労働基準法は、昭和22年に公布された法律です。その当時、就業者全体に占める雇用者の割合は4割以下でした(現在は、8割を超えています)。

まだ農業などの第1次産業や家族経営の商店などが多く、雇用者は多くありませんでした。雇用者は、工場の工員など製造業に携わる人の割合が多く、労働時間と生産量が比例します。したがって、労働時間に対して賃金を支払うという考え方は理にかなっていました。

(2)多様化した働き方では労働時間をどう管理する?

現在は働き方も多様化し、労働時間と仕事の成果が必ずしも一致しないような職種も増えており、労働基準法では、そのような働き方に対応できていません。一部の限られた業務については、裁量労働のみなし労働時間制が適用可能になっていて、労働時間ではなく成果に対して賃金を支払うといった考え方に近いものもあります。

しかし、依然として、ほとんどの業務については、賃金は労働時間に対して支払うこととなっているため、従業員の労働時間を把握することは会社の義務とされ、労働時間に則った適正な賃金が支払われていなければ、労働基準法違反となります。

『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』によると、使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することとされています。その方法としては原則「使用者が、自ら現認することにより確認する」または「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する」こととされています。

(3)テレワークで労働時間の算定が困難なときは?

使用者が労働者の労働時間を把握する必要があるという考え方は、たとえテレワークであっても同様です。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、多くの会社がテレワークを導入したり、あるいは導入を検討したりしています。

しかし、テレワークであっても、会社は従業員の労働時間を把握し、その労働時間に則って賃金を支払わなければなりません。ただし、テレワークにより、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、労働基準法第38条の2で定める“事業場外労働に関するみなし労働時間制”が適用されます。

『情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン』によると、テレワーク勤務者に事業場外みなし労働時間制が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

要件1:情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと(情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態であること)

要件2:随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

テレワーク勤務者に“事業場外みなし労働時間制”が適用された場合、実際の労働時間にかかわらず、所定労働時間を労働したものとみなされます。ただし、業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を労働したものとみなされます。

(4)そもそもどこまでが労働時間なの?

ところで、労働時間とは、具体的にどのような時間のことを指すのでしょうか? それは、“使用者の指揮命令下にある時間”のことをいいます。そのため、実際に労働している時間はもちろんのこと、何かあればすぐ業務を行えるように待機している時間や、参加が義務付けられている研修時間、朝礼・終礼時間なども労働時間となります。

使用者の黙示の指示により業務に従事した時間も労働時間に当たります。そして、労働時間に対しては、1分単位で賃金を支払わなければなりません。

タイムカード等の打刻時間が、必ずしも労働時間と完全に一致するわけではありませんが、タイムカードなどは客観的な記録とされ、その打刻時間と賃金算定の基礎となった時間数に大きな開きがあるようであれば、賃金未払いが疑われます。

(5)会社は従業員の健康への健康配慮義務がある

会社には、従業員の健康への配慮義務があります。長時間労働と過労死や精神疾患の発症には、強い因果関係があるとされています。会社が従業員の労働時間を適正に把握することは、従業員に健康に働いてもらうことに繋がります。

それが、過労死などで亡くなった遺族からの損害賠償などのリスク回避につながりますし、会社の生産性向上にもつながります。今や、労働時間と会社への貢献度が比例しない職種も増えています。
逆に、長時間労働による労働生産性の低下が問題ともなります。

適正な労働時間の管理は、従業員の健康、そして、労働生産性の向上に役立ちます。無駄で不要な残業を減らすことで、残業代を減らす効果も期待できます。

労働安全衛生法では、健康管理の観点から、会社に対し、従業員の労働時間の状況の把握を義務付けています。これは、すべての労働者が対象になります。

管理監督者やみなし労働時間制の適用者に対しても、労働時間の状況を把握する義務があります。また、週の実労働時間が40時間を超えた時間が1月当たり80時間を超えた場合、当該従業員に労働時間に関する情報を通知するとともに、当該従業員から申出があった場合には、医師による面接指導を実施しなければなりません。

ここで気を付けなければいけないのが、長時間労働に対する古い価値観が未だに残っていることです。長時間労働をいとわず、残業や休日労働を進んで行う従業員に対し、会社への忠誠心や仕事へのやる気が大きいとの高評価を与えるような管理職者や経営者がまだまだ多くいます。長時間労働を美徳だと考えている管理職者や経営者もいます。ですが、そのような考え方は、完全に時代遅れの考え方です。

(6)今後は勤怠管理も効率化が求められる

ワーク・ライフ・バランスの重要性は年々高まってきており、長時間労働を高く評価するような会社は、魅力ある会社とはいえず、優秀な人材を集めることはできません。

今は、アフターコロナの経営が模索されています。今までのビジネスモデルが通用しない職種、今後収益が悪化していく職種も多いでしょう。より労働生産性の高い働き方へと移行せざるを得なくなります。

そういった状況で、いかに労働生産性の向上を図るかを考えたり、労働時間と労働生産性との関係の中で最も効率的な働き方を見つけたりなど、勤怠管理を戦略的に考えていく必要があるのではないでしょうか。

勤怠管理は、今後ますます、その重要性が増していくと考えられます。現在のタイムカードの打刻による勤怠管理ではなく、より低コストで、より細かく正確に、より戦略的に勤怠管理を行っていける様々なサービスが存在しています。

たとえば、リアルタイムに勤怠状況を把握・確認できるサービスがあります。勤怠管理を行う側にとっても、勤怠を申告する従業員にとっても、手間や面倒が省けるようなサービスも存在します。もちろん、リアルワークだけでなく、テレワークにも対応しているサービスもあります。

勤怠管理サービスには様々なサービスが存在しますが、それぞれの特徴を知って、最適なサービスを導入していきましょう。

【参考】
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン – 厚生労働省
情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン – 厚生労働省

※IYO / PIXTA(ピクスタ)