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TOP > 人事・労務 > 就業規則の変更、トラブルを避けるにはどうすればいい?
トラブル 労使関係

就業規則の変更、トラブルを避けるにはどうすればいい?

2020.10.08

10人以上の従業員がいる事業所では作成が義務付けられている”就業規則”。社会情勢や自社の状況に併せて、適切なタイミングで就業規則の内容を変更している事業所もあれば、しばらく放置しているという事業所もあるでしょう。

本記事では、就業規則とはそもそもどういったものなのか、実際に変更する際はどういった点に気を付けたらいいのかについて綴っていきます。

就業規則の作成や変更の手続き

10人以上の従業員を雇っている事業所では、就業規則を作成し、その事業所の従業員の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数代表者)の意見書を添えて、労働基準監督署に届け出なければなりません。就業規則を変更した場合も同様です。

これは、事業所の義務として労働基準法に定められていますが、従業員が10人未満の事業所が就業規則を作成したり、監督署に届け出たりする事は問題ありません。

雇用契約としての就業規則

就業規則には、労働時間や賃金、退職などの従業員が働くうえで重要な事項について定めなければなりません。また、新しくその事業所全体で適用されるようなルールや規則を定める場合にも、就業規則への記載が必要になります。

就業規則とは、いわば会社のルールブックであり、会社と従業員との労働条件を定めた契約書でもあるのです。

一度定めた就業規則ですが、経営環境や社会情勢は刻々と変わってくるため、就業規則も変更の必要が出てきます。

ただし、就業規則の変更を行うことは、従業員にとっての労働条件や社内のルール・規則の変更ということになります。就業規則が会社と従業員との労働契約書である以上、就業規則の変更は労働契約の変更となります。従業員にとって不利益となるような変更もありえます。

そうなると、就業規則の変更については慎重に行っていかないと従業員とのトラブルに発展しかねません。

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労働契約法について

ここで、労働契約法という法律についての話をします。労働関係の法律は数多くあるのですが、その中で特に重要な法律として、労働基準法と労働契約法という2つの法律があります。しかし、この2つの法律は全く性格が異なります。

労働基準法は、従業員が働く上での労働条件の最低基準を定めたもので、この法律の定めを下回るような労働条件は無効とされます。また、この法律に違反した場合、労働基準監督署による監督・指導や罰則があることで、使用者に義務の履行を強制するものです。

一方、労働契約法とは、裁判例などの積み重ねによって定められた民事的な法律であり、労働契約における権利義務関係を明らかにしたものです。 この法律に違反したからといって罰則はなく、労働基準監督署からの監督や指導も行われません。労働契約法の違反については、あくまで、裁判などで白黒をつけることになります。

労働契約法に定められた合意の原則

この労働契約法の第8条に、“労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労総条件を変更することができる。”と定められています。ですから、労働条件を変更する場合には、原則としては、個別の従業員の合意が必要になります。

ただし、労働契約法第9、10条で、以下のように定められています。

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

要するに、労働条件を変更するには、原則として、従業員との個別の合意が必要であるが、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、その就業規則を周知することと、変更の内容が合理的であれば、たとえ個別の合意がなくても、労働条件の変更が認められます。

そして、変更の内容が合理的であるかどうかは、最終的には裁判で判断することになり、無効の判決が出るまでは、原則、その変更が有効となります。とはいっても、裁判になれば、就業規則の変更が合理的であることの主張立証は使用者側が行わなければなりません。

そして、変更の内容が従業員にとって不利益が大きい場合、従業員が変更の無効を訴えて裁判に発展する可能性が高まりますし、裁判になれば、その変更が合理的でないとして無効と判断される可能性があります。

したがって、就業規則を変更する場合には、労働契約法第10条に定められた“労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況”などについて熟慮する必要があります。特に、労働組合との交渉も含め、従業員への説明を尽くすことは、労使トラブルリスクを減らすためには絶対に欠かせません。

就業規則の変更によって不利益を被る可能性がある従業員に対しては、特に丁寧に説明し、できる限り納得を得られるよう努めましょう。また、従業員全員とはいかないまでも、できるだけ多くの従業員からの合意を取り付けておくことは、変更の合理性の判断の際には重要となります。

就業規則の変更が必要な場合とは

ところで、どのような場合に就業規則を変更する必要があるでしょうか? まず考えられるのが、労働関係の法令が改正されたときです。

労働関係の法令は頻繁に改正されています。改正の多くは、労働者保護や労働者の権利拡大の方向での改正で、その改正内容に合った就業規則への変更が必要になります。

この場合、就業規則の変更が法令に適合したものであることや、多くは労働者にとってより良い方向への変更となるので、変更が労使トラブルに発展する可能性はあまり大きくありません。

労使トラブルに発展しやすいのは、賃金制度の見直しや退職金制度の変更・廃止といった変更です。経営環境の変化によって、会社にとって重要な事業も変わっていきます。

今まで高く評価していたスキルが陳腐化してしまうこともあるでしょう。過去と同じ評価制度や賃金制度では、現在会社が置かれた状況に適さなくなくなることがあります。

そこで、評価制度や賃金制度の変更を行うことになるのですが、その変更によって、賃金が減少する従業員が出てきます。裁判では、賃金が減少するような労働条件の変更については、“高度の必要性に基づいた合理性”が求められます。退職金制度の変更や廃止についても同様です。

この場合には、急激に賃金が減少することを避けるよう、移行期間を長く設けたり不利益を緩和したりするような経過措置を講じるのがよいでしょう。もちろん、制度変更の必要性は厳しく問われますし、従業員への説明も丁寧に行う必要があります。賃金や退職金などの金銭にかかわる変更は、とりわけトラブルに発展しやすいので、慎重な対応が必要なのです。

事業内容の変更や合併などによっても、就業規則の変更は必要になるでしょう。

また、今回のコロナ感染拡大によって、働き方を大きく変更することになった事業所もあると思います。テレワークの導入にしても、就業場所や労務管理の方法の変更、各種手当の見直し、通信費や光熱費の負担の問題など、就業規則の変更が必要となることが多くあります。そして将来的には、更に全く別の新たな働き方が必要になるかもしれません。

今後は、就業規則の変更は特別なことではなく、事業活動の変化にフレキシブルに対応するため、活発に行っていくことになるでしょう。経営環境や社会情勢に適宜対応していくためには、常に、就業規則の変更を念頭においておく必要があります。

そこで繰り返しになりますが、労働条件の変更については労使の合意があることが原則です。就業規則の変更による労働条件の変更については、労働者の受ける不利益の程度や労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況等、合理的でなければならないことを十分に考慮しながら、適切なタイミングで行っていきましょう。

*Tan Wan Chiang / PIXTA(ピクスタ)

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