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高齢者 仕事

中小企業が高齢者を雇用する課題とメリットとは? 定年70歳時代への準備を

2020.10.15

新型コロナウイルスの感染症拡大が収まらず不安定な社会情勢が続いている我が国ですが、その中でも進み続けている問題のひとつが、少子高齢化でしょう。高齢化が進むということは、それだけ働く人、つまり、労働人口が減少していることが伺えます。働き手が減少するということは、国を運営していくにあたり死活問題です。

これを受けて、政府は高齢化に対応するために定年延長制度や雇用継続体制の整備など、さまざまな施策を打ち出しています。企業としても、高齢化を迎えるにあたり守らなければならないルールや、状況に合わせた体制づくりなど、対応すべき内容が多々あるのが現状です。

今回は、高齢者を雇用する際のルールや注意点、実際に高齢者を雇った場合の課題やメリット、高齢者雇用にまつわる助成制度などについて、順を追って解説していきましょう。

高年齢者雇用安定法とは

高齢者の雇用を確保する際に気をつけなければならないのが“高年齢者雇用安定法”という法律の内容を遵守しているかどうかになります。高年齢者雇用安定法とは、正式名称を『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律』といい、年を重ねても働き続けたいと考える中高年齢者の雇用促進を促すため、事業主が守らなければならないルールについて定められた法律です。

中高年齢者の求職者数が増加していることと、それに反して求人数が少ないこと、実際に就職を果たした中高年齢者の数が非常に少ないことなどの問題を受けて施行されました。企業規模に応じたルールはなく、全ての企業がこの法律を守らなければなりません。

高年齢者雇用安定法は、2012年に大幅な改正がありました。

改正内容の詳細は、定年年齢を65歳未満としている企業に対し、少なくとも65歳まで働き続けることができるような制度の導入(定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年制度の廃止)が義務づけられたことです。上記制度のうち“継続雇用制度”については、2025年3月末まで制度適用の対象年齢が段階的に引き上げられる状態が続きますが、同年4月以降は経過措置がなくなり、実情として定年年齢が65歳として義務づけられることになります。

なお、2021年より更に法改正による大規模な改正が行われる予定です。こちらの内容については、次項目で順に見ていきます。

法改正による定年年齢延長

2021年4月以降に改正される内容で最も注目されている内容が、“70歳までの就業機会確保”についてです。これまでは、少なくとも65歳までの対応が求められた定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年制度の廃止等の制度の対象が、70歳までに引き上げることが企業の努力義務となります。つまり、65歳までの定年延長措置は義務、65歳から70歳までの定年延長措置は努力義務になるということです。

また、高齢者の雇用継続措置の制度に、新たに“労使で同意した上での雇用以外の措置”が加わることにも特徴があります。具体的には、継続的に業務委託契約する制度・社会貢献活動に継続的に従事できる制度のいずれかを導入することが努力義務とされています。

さらに、高齢者が再就職をする場合の支援制度や、フリーランス契約をする場合の継続的な業務委託、起業を志す高齢者の支援制度など、昨今の経済情勢をふまえた選択肢も含まれていることに特徴があります。

高齢者雇用のメリットとは

高齢者雇用に関する法律の概要を理解いただけたところで、次は実際に高齢者を雇用する場合のメリット・課題点について述べていきましょう。高齢者雇用のメリットとしてまず挙げられるのは、豊富な経験を活かすことで社員のスキルアップを図ることができる点です。

経験の長さは、それだけさまざまな知識や成功・失敗談を抱えていることにつながります。管理職としての経験がある高齢者も多いことから、若手社員を育成するための方法について熟知しているケースも多々あります。人材育成を担当してもらうことで、社員一人ひとりのスキルアップやよりレベルアップした仕事へのチャレンジを後押しすることが可能になるでしょう。

続いてのメリットとしては、労働力不足に対応することが可能となり、純粋に戦力確保につながるという点です。昨今では、少子高齢化の影響により、高齢者が増加している一方で若手の働き盛りの労働人口が減少しているという問題があります。即座に戦力となる高齢者を雇うことで、不足している労働力をアップさせることが可能になります。

また、高齢者の存在は、企業内に新たな視点を加える良いきっかけにもなります。別の世代の者が社員として加わることで、これまでには考えることのなかった新たな価値観から社内外を見るきっかけが生まれ、企業に良い刺激を与えることができます。また、高齢者の人脈を利用し、新たなビジネスチャンスを掴むことができる可能性も生まれるでしょう。

高齢者雇用の課題点とは

高齢者を雇用する場合にまず考えなければならないのが、雇用形態や賃金面などの待遇でしょう。現役社員との兼ね合いも含め、高齢者に対してどのように仕事をさせていき、どの程度の賃金を支払うかを決定するためには、労力と時間が必要になります。まずは現体制の見直しをした上で、ひとつずつ決定をしていかなければなりません。今後は、定年年齢が70歳へ引き上げていくことが努力義務とされていることから、現状の制度からさらに延長した場合の対処法についても検討をする必要があるでしょう。

また、定年を迎えた後の高齢者は、現役時代と比較すると気力や体力が減少するペースが早まる可能性があります。昨日までは精力的に働いていた場合でも、翌日には働く意欲が変化するケースも少なくありません。

高齢者を雇用する場合は、このモチベーションの変化に対応できるような業務分担や契約期間を設定しなければなりません。また、身体の不調についての可能性も考慮した働き方をさせる必要もあります。

高齢者雇用に関する助成金

最後に、高齢者の雇用に活用することができる助成制度についてお伝えします。実際に高齢者を雇う際の参考にして下さい。

1. 65歳超雇用推進助成金

高年齢者が安心して働くことができるような制度を導入した企業が助成金を受けることができます。「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」の3コースで構成されています。

2. 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

65歳以上の離職者を、ハローワークを介して雇用し一年以上継続雇用することが確実な場合に、助成金を受け取ることができます。

3. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

60歳以上65歳未満の高年齢者を、ハローワークを介して雇用し継続雇用する企業が助成金を受け取ることができます。

年齢に関わらず働くことができる社会のために

高齢者を雇用することは、企業にとって決してマイナスなことばかりではないということがお分かりいただけましたでしょうか。今後は、働く意欲のある元気な高齢者が年齢を気にせず働くことができる環境を、企業全体で推し進めていくことが求められています。

*mits / PIXTA(ピクスタ)