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TOP > 総務・法務 > 義務や配慮義務とはどう違う?労働法における「努力義務」とは?
努力義務 配慮義務 義務 解説

義務や配慮義務とはどう違う?労働法における「努力義務」とは?

2020.10.26

効率的な企業経営を目指すなら、「やるべこと」と「やったほうがよいこと」の見分けは重要です。そこで、落とし穴になる可能性があるのが労働法の「努力義務」です。

努力義務に対する会社の考え方は大きくふたつに分かれます。ひとつは「努力義務も重要だからできることをやる」という考え方。もうひとつは「努力義務だから何もしなくてよい」という考え方。

筆者の経験上、優秀な人材が自然と集まってくるようなよい会社は前者のような考え方をしています。この記事ではよい会社が注目する労働法における努力義務をお伝えします。

“義務”と“配慮義務”と”努力義務”の違い

労働法には、義務、配慮義務、努力義務の3種類の義務があります。

“義務”は、ある特定のことをしなければならない、もしくはしてはいけないことを指します。

“配慮義務”は、義務とは異なりある特定のことをしなければならないというわけではありませんが、なんらかの具体的な行動をしなければなりません。

“努力義務”は何かをするように努めることを指します。

正社員と比較した場合の契約社員に対する食堂の利用を具体例として挙げると次のとおりです。

<義務の具体的例>

法律で「契約社員も食堂を利用できる機会を与えなければならない」と規定されていたら、会社は契約社員も正社員と同じ条件で食堂を利用できる状態にしないと法違反となります。

<配慮義務の具体的例>

法律で「契約社員にも食堂が利用できるように配慮しなければならない 」と規定されていたら、会社は契約社員に正社員と同じ条件で食堂を利用させる必要はないが、契約社員も利用できるように具体的な行動を取る必要があります。

・配慮義務を履行した具体例

正社員の優先的な食堂利用時間を11:30~12:30までとし、契約社員の優先的な食堂利用時間を12:30~13:00までとし、契約社員の食堂利用を促す。

<努力義務の具体例>

法律で「契約社員も食堂を利用できるように務めなければならない」と規定されていたら、契約社員が食堂を利用できるように努めればよく、仮に契約社員が食堂を利用できなくても法違反とはなりません。しかしながら、後にご紹介する”パワーハラスメント防止措置”の例のように、将来的には強制力の増す“配慮義務”や”義務”に変更になるケースもあるため、早めに対応しておくことが好ましいケースも少なくありません。

注目の努力義務1:勤務間インターバル(2019年4月1日~)

ここからは、注目すべき努力義務を取り上げます。まずは“勤務間インターバル”です。勤務間インターバルとは、勤務終了後、一定時間以上の休息時間を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するものです。

退勤時刻が遅くなってしまった場合、翌日の始業時刻を後ろ倒しします。そうすることで生活時間や睡眠時間を確保します。

勤務間インターバルが導入されていない会社だと、翌日もいつもと同じ始業時刻に出社しなければなりません。そうなると労働者は家事など生活を送っていく上での必要な時間や睡眠時間などを削る必要があります。そんな状況が続けば「この会社で継続的に勤務することが難しい」「睡眠不足が続いて体調を崩してしまった」ということになりかねません。勤務間インターバルを導入することでそのようなことが減り、労働者が継続的に就業しやすくなります。

注目の努力義務2:70歳までの就業機会確保(2021年4月1日~)

会社は65歳~70歳までの高年齢者就業確保措置を講ずることを努力義務とされています。具体的には、定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)が努力義務となります。

このような努力義務が作られた背景には、少子高齢化による労働人口の減少と年金財政の悪化があります。日本経済が低迷している原因はさまざまな説がありますが、労働人口の減少が主たる原因という説が最も有力のようです。労働人口の減少が経済停滞の原因であれば、逆に労働人口を確保できれば日本経済は成長する可能性が高まります。

現在の日本労働市場において活用して切れていない労働力として“引退後の高齢者”がいます。その労働力をうまく活躍させようというのがこの70歳までの就業機会確保の狙いです。

また、日本の年金財政は苦しい状況で、将来的には年金の受給開始年齢が65歳から70歳へ引き上げられるだろうという見解もあります。そのような時代を見据えて、70歳までの就業機会確保をおこなうことで高齢者の所得を確保させる狙いです。

注目の努力義務3:パワーハラスメント防止措置(2020年6月1日~ 中小企業は努力義務)

まずお伝えすることは大企業においてパワーハラスメント防止措置は義務となります。努力義務となるのは中小企業となります。とはいえ、中小企業においても2022年4月1日から義務化されます。それまで間は努力義務となります。そういった中でこのテーマを取り上げた理由は中小企業ではまだまだパワーハラスメントに対する意識が低いと感じたためです。

パワーハラスメント防止法の施行された2020年6月1日の前後において、大企業からはさまざまなパワーハラスメントに関する相談を受けました。しかし、中小企業からはあまり相談を受けませんでした。これは「努力義務だからうちの会社はまだやらなくていいだろう」という考えによるものかもしれません。

ですが、「いい人が来ない」と人手不足で困っている中小企業こそ、パワーハラスメント防止措置を積極的に取り組み、魅力的な職場を作り人材確保に励むべきです。

職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置

・事業主の方針等の明確化及びその周知や啓発
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 ・職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
・そのほか併せて講ずべき措置(プライバシー保護の周知など)

前述の通り、中小企業においては努力義務となっています。どこから手をつけていいのかわからないという話も聞きます。すべての体制が整っていることが望ましいですが、現実的には手が回らないかもしれません。

そこで、パワーハラスメント防止の措置としてはじめにオススメしていることは“相談窓口の設置”です。相談窓口を設置して、従業員の皆さんに周知しましょう。相談窓口を設置した事実が従業員の会社への信頼を高め、パワーハラスメント行為の抑止につながるでしょう。

今回は労働法における努力義務についてお伝えしました。本記事が皆さまのお役に立てば幸いです。

*tomcat / PIXTA(ピクスタ)

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