登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 採用 > 優秀な若手社員の採用・定着に向けて ~「採用準備」ですべき4つのこと~
採用活動 若手

優秀な若手社員の採用・定着に向けて ~「採用準備」ですべき4つのこと~

~中堅ハウスメーカーのとあるマーケティング部長のつぶやき~

「うちの職場にも、フレッシュな新しい人材が欲しいなぁ」と、部長はオフィスを見渡して考えた。

中堅どころのメーカーなので、人材の定着率はよいほうだ。だからこそ、長く在籍するベテラン社員ばかりともいえる。居心地はよいものの、なかなか新しいアイデアも出てこない。
世間には常に新しいマーケティング手法が溢れ、部長の焦りは強くなる。

新卒採用は大手に負けてしまうため、ここ数年は実施していない。優秀な若手を採用するには、中途採用でヤル気のある人に応募してもらうしかない。

しかし、部長自身も「自社の何をアピールしたら、優秀な若手に響くのだろう。」と首をひねる状況だ……。

新しい人材の採用は、職場の業績向上や活性化のために不可欠な活動といえます。

特に勢いのある若手社員が入社してくれれば、既存方法以外のアイデア発信などで、周囲に刺激を与える効果は大きいでしょう。

今回は全3シリーズで、大手企業など採用ブランド力が高い企業でなくても、工夫次第で優秀な若手社員を採用でき、生き生きと活躍できるまでに職場に定着する方法を解説します。

第1回目となる今回は、“採用準備”にフォーカスをあててポイントをお伝えします。

若手人材を取り巻く現状

競争が激しい若手人材マーケット

若手人材の採用に苦労する背景として、労働市場に若手人口自体が少ない現状があげられます。

厚生労働省のデータによると、15歳~34歳の若年労働力人口は「総労働力に占める割合」と「人口そのもの」の双方について減少傾向にあります。

各社、ただでさえ人不足なのに加えて、若手はどの企業でも欲しがる層です。この競争が厳しい若手層にアプローチするには、一律の中途採用のやり方ではなく、この層に響く工夫をする必要があるのです。

若手の転職への前向きな意識

若手社員の採用に関して、好材料もあります。それは若手自身の意識変化により、かつてより転職に前向きな考えの人が多い点です。

ある調査では、若手社員の約半数(48.8%)がすでに転職を検討・活動中で、転職サイトの登録状況も、「登録している」が46.8%でした。(※1)

終身雇用が崩れた時代に育った現在の若手は、新卒で入社した会社にずっと居続ける意識は希薄です。むしろ、若いうちから自分の腕を磨きたいと思う血気盛んな若手ほど、ステップアップのために転職をすることは当たり前に思っているのです。

若手社員獲得のために社内でやるべき2つのこと

前述の調査結果の通り、若手層の約半数は転職に向けてアクティブに動いています。

これまでの採用活動で成果がないのであれば、つまりは方法を変える必要があるといえます。逆に、工夫次第ではコストをかけずに自社にフィットする若手が採用することができます。

欲しい人材像・ペルソナをクリアにする

「どんな若手が欲しいかって? そんなの決まってるよ。明るく積極的で、スキルが高くて、行動力があって……。」

このような情報を“人材要件”と思ってはいないでしょうか。よく採用は“お見合いだ”と表現されます。この人材要件では、“誰もが羨む高スペックの人が欲しい”と言っているようなものです。

人材要件は“なるべく具体的に(メッシュを細かく)する”“職場の人とすり合わせする”の2つを意識するようにしてください。

先ほどの“明るく積極的”という人材要件ですが、試しに行動に置き換えてみましょう。

「常にハイテンションで、顧客の立場を十分に吟味せず売り込みをしている」という行動は望ましいでしょうか? ただし先ほどの人材要件では、この行動も“明るく積極的”という特徴に当てはまってしまいかねません。

人材要件を明確にするときは“行動や場面を思い浮かべる”ようにしてください。同時に“なぜそのような行動が必要なのか”もセットにして描くとよいでしょう。

人材要件を明確にするプロセスを職場の人と行うと「あれ? 自分はもっと控え目な人のほうがいいと思っていた」という意識の違いも生じるでしょう。このギャップそのものは問題ではありません。

重要なのは、同じ職場メンバーと「なぜそう思ったか」などと背景を共有することです。色々な人の意見をすり合わせて、最終的に「こういう人が欲しい」という結論に落ち着けます。

このプロセスを踏めば、採用選考で複数のメンバーが関わったとしても、同じ基準で応募者を見ることもできます。

自社(自部署)のアピール材料を探す

前章の“人材要件を明確にする”ことは、自社のアピール材料を探すことにもつながります。

高給与で、近代的な職場などという誰に対しても響く武器があればいいですが、そうでない場合は、自社の魅力を改めて言語化する必要があります。その際、万人に響く魅力ではなく、先ほどの人材要件の人に響くかどうかという観点で考えると、非常に考えやすくなるはずです。

人事制度など、自部署でどうにもならない物理的条件もあるかと思います。しかし、ステップアップしたいという意欲の高い若手層は、物理的条件以外に“仕事の進め方”や“成果を上げたい”などのソフト面での充足を求めています。

自部署の業務を見つめなおした際に「新しいアイデアを出してくれた人には、まずチャレンジさせてみる」や「若手もベテランとチームを組んで、動きながら仕事を覚えてもらう」など、意欲の高い層に響くエピソードがあるはずです。

なお、今の若手は“ワークライフバランス”と“評価の明瞭性・公平性”は必ずといってよいほど気にするポイントです。

現在そこに応えられない場合は、将来的な観点でもいいので「ゆくゆくはテレワークを導入したい」や「年功ではなく成果を志向したい」など、若手に期待を持たせるような兆しを見せるとよいでしょう。

若手社員獲得のために募集時にやるべき2つのこと

“求める人材要件”と、その人に響くための“自社の魅力”が抽出できたら、いよいよ募集段階です。ここでは「若手ならでは」にこだわった工夫点を2つご紹介します。

募集する手法を検討する

最近流行っている“採用ピッチ資料”をご存知でしょうか? 無名のスタートアップ企業であっても、採用ピッチ資料を活用して大きな採用成果を上げていることで、注目を浴びている手法です。採用ピッチ資料とは、短めにエッセンスをまとめた自社の紹介・プレゼンテーション資料のことです。

従来型の会社紹介資料は、良い点や魅力にフォーカスすることが多いのに対して、採用ピッチ資料は自社の課題点や一緒に働く人の実情などもありのままで伝える資料です。良いことも悪いことも含めて現場のリアルをあえて開示するため、募集段階でのミスマッチを減らすことができます。

採用ピッチ資料は自社WEBサイト上に公開し、面談の前に目を通してもらう活用方法が一般的です。オンライン面談であっても、一緒に画面の資料を閲覧してやり取りができるため、効率的に採用活動をすることができます。

デザインや製本が難しい場合でも、“自部署らしさ”が感じられるペーパーを数枚オリジナルで作っておくだけで十分です。採用側の熱意が応募者にも伝わるため、ぜひ作ることをおすすめします。

募集する場を検討する

どうしても大手の就職エージェントでは、有名企業に自社が埋もれがちになりますが、近年は“第二新卒専用”や“ベンチャー専用”などの謳い文句で、若手に特化した採用エージェントや募集サイトが数多く存在します。

若手の応募がそもそも少ない場合は、そのような特化型のエージェント活用を検討してはいかがでしょうか。

また、若手にアプローチするためにはSNS活用は外せないポイントです。公式アカウントを開設し、SNS上で募集をかけたり自部署のリアルな情報発信を必ず行ったりしてください。

若手の情報収集ルートは複雑なので、戸惑う人もいるかもしれませんが、まずは知り合いの若手社員にヒアリングしてみるのがおすすめです。今時の若手がどのようなルートから転職情報を収集するかが分かります。

ひょっとすると、その若手を通じて、流行りの“リファラル採用(知り合いからの紹介で採用をすること)”に展開できるかもしれません。

まとめ

今回は採用ブランド力がない企業であっても、工夫次第で優秀な若手人材を採用するポイントを紹介しました。

余談ですが、筆者が在籍していた企業は創業時のころから“採用が最も重要行事”と位置付けて、多忙な現場の敏腕プレイヤーを指名し、面接者の役割を課していました。

無名企業が大手企業と人材を取り合った際に、自社の一番ピカピカの人材をぶつける戦法を採っていたのです。地味な作戦ですが、予算はかかりません。徐々に、何度かに一度は優秀な若手が大手を蹴って自社を選んでくれるようにもなりました。

不思議なもので、最初は「現場が忙しいのになんで採用に協力するんだ」と文句を言っていた社員も“うちの会社は採用が最重要ミッション”という風土が会社全体に広がると、まんざらではない様子でした。それどころか、少し誇らしい素振りまでも見せていたのです。

このように、採用活動は中長期の組織風土にも影響を与えることもあります。しかし、少しの工夫でいきなり良い人材が採用できたり、あるいは会社の風土がガラっと変わったりすることは稀なので、長い目で採用活動に取り組む必要があるといえるでしょう。

基本的には、採用は“新しい仲間を探す”前向きな活動です。うまくいくこともいかないことも含め、「どうしたらいい人採れるかな」と職場全体でアイデアを出しながら、楽しんで改善を積み重ねていってください。

【参考】

※1 2019年『入社半年・2年目 若手社員意識調査』 – 一般社団法人日本能率協会

*metamorworks / PIXTA(ピクスタ)