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BCP 事業継続計画

企業が被災したら!? 『BCP(事業継続計画)』で重要となる「安否確認」の必要条件とは

2020.11.16

突如として発生する自然災害やテロは、企業経営に大きな影響を与えます。本記事では、事業活動の復旧の第一歩となる“安否確認”の重要性についてお伝えます。

事業継続計画(BCP)とは?

BCPとは“Business Continuity Plan”の頭文字で、事業継続計画を意味します。中小企業庁によると次のような定義です。

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
出典:中小企業庁webページ 1.1 BCP(事業継続計画)とは

企業が、自然災害や大災害、テロ、感染症の蔓延などの緊急事態に直面した際に、できるだけ早く通常の状態に復旧し、事業を継続させるためにBCPは必要となります。

BCPは、防災計画策定、社内体制の整備、防災訓練、安否確認、事業の復旧など多岐にわたります。それらの中から本記事では「安否確認」について取り上げます。

非常時においてなぜ「安否確認」が重要か?

真夜中に大地震が発生した状況を想像してみてください。大地震が発生すると、インフラが止まり、建物が倒壊、火災が発生し、企業活動に大きな影響が予想されます。本社ビルは倒壊し、製造工場では火災が発生しているかもしれません。そのような状況において、事業活動を復旧させるには、まずは「従業員の命に別状はないか?」など従業員の現状を把握する必要があります。

もし、従業員に連絡する手段がないという状態だと、従業員の誰を会社に出社させられるのかわからないという事態になります。非常事態では人によって事情が大きく異なるでしょう。出社できる人もいれば、できない人もいます。事業活動の復旧の第一歩として「誰が復旧のために仕事ができるのか?」ということを把握することが重要です。

安否確認の方法とは?

安否確認の方法は下記のようなパターンが考えられます。

方法1:電話をかける

まず思い浮かぶのは、電話をかけるという方法ではないでしょうか。

電話かけて、声を聞いて安否確認できれば安心するでしょう。しかし、電話による安否確認には問題があります。「非常時は電話がつながりにくい」「電話にでられない場合、発信者が繰り返し電話する(もしくは受電者が折り返す)必要がある」という点です。少ない人数の安否確認を行うにはいいかも知れませんが、企業が復旧のために行う安否確認として電話では不十分です。

方法2:メールをする

次にメールという手段が考えられます。メールだと非同期型のコミュケーションとなるため、連絡をする人が一度メールをすれば、繰り返し連絡をせずに済むという点は電話と比べるとよいです。

しかし、相手がメール見ているとは限らない点や基本的に1対1のコミュケーションとなるため、他の人のやりとりが見えにくく、全体の状況がつかみにくいことが難点です。

方法3:SNSで連絡をとる

非常時にはTwitterやFacebook、LINEなどのSNSが役に立ったという話を聞きます。電話と比較すると、インターネット回線を使うため、非常時に繋がりやすいためです。またメールと比較すると、1対不特定多数への情報発信が簡単で、自分の安全を伝えやすいためです。

しかし、SNSには問題があります。従業員がSNSをやっているとは限らないという点です。安否確認の方法をSNSとすると、SNSをやっていない従業員への連絡は別の方法を使う必要があります。企業活動の復旧という点を考えると、SNSでは十分とはいえません。

方法4:安否確認サービスを使う

安否確認サービスという安否確認のための専用サービスがあります。企業はまず緊急時の連絡先を安否確認サービスに登録しておきます。そして、緊急事態が起こった際にはその連絡先に安否確認連絡がいくというシステムです。

「メーリングリストやグループトークと何が違うのか?」という印象を持たれるかもしれません。それらとの違いは次のとおりです。

メーリングリスト等と安否確認サービスの違い

・非常時に備えてサーバーを確保しているため、遅延や停止になりにくい
・非常時に安否確認メールを自動送信できる
・安否確認の進捗状況の自動集計機能がある
・個人情報の管理体制がある
・掲示板などコミュケーション機能がある

安否確認サービスはさまざまなものがありますが、最低でも上記の機能があるものがよいと筆者は考えます。サービスが停止すると事業活動に大きな影響を与える企業の場合、安否確認サービスの導入を検討したほうがよいでしょう。

事業継続計画(BCP)と労務管理のつながり

ここからは社会保険労務士として労務的な観点からBCPと労務のつながりについて解説します。

事業継続計画(BCP)とテレワーク

新型コロナウイルス感染症拡大により、多くの企業がテレワークを導入しはじめています。テレワーク導入の目的は「満員電車など、人との接触機会を減らし、感染リスクを下げるため」というものだと思います。

BCPという観点からテレワークを捉えると、自宅は会社オフィスのバックアップオフィスともいえます。例えば、大地震により本社ビルが使用できなくなった場合、自宅でも業務ができれば、事業活動は継続できるはずです。テレワークを実施する際にはBCPという観点も忘れずに、制度設計するとよいでしょう。

事業継続計画(BCP)と同一労働同一賃金

大企業は2020年4月1日から(中小企業は2021年4月1日から)通称“パートタイム・有期雇用労働法”が改正され同一労働同一賃金が始まっています。企業には正規社員と非正規社員の待遇格差を説明する義務が設けられています(パートタイム・有期雇用労働法第十四条)。

説明の方法はさまざまですが、ひとつの方法としてBCPの観点から非常時のおける対応の優先度の違いを理由にできます。例えば、非常時の際「正社員は出社するが、非正規社員は出社しない」というルールを作って、そのルールをもとに給与金額など待遇差を説明する方法が考えられます。

事業継続計画(BCP)と住宅手当

非常時に交通機関がマヒすることに備えて、会社から徒歩で移動できる距離に従業員が住んでいると企業の事業継続性が高まります。

例えば「会社から徒歩10分圏内に住所がある場合、住宅手当を支給する」というルールを設けたら、一定数の従業員は会社から徒歩10分圏内に住むでしょう。そうなると、交通機関がマヒしても従業員は出社でき、非常時における事業継続性が高まります。

日々の業務追われていると非常事態への対策はどうしても後回しになりがちです。しかし、非常事態への準備度合いによって、企業が生き残るのか、廃業・倒産なのか会社の運命が変わる可能性があります。BCPという観点から安否確認の体制の確立や労務管理の改善を図ってはいかがでしょうか?

*NOV / PIXTA(ピクスタ)