優秀な若手社員の採用・定着に向けて~「採用選考」と「面接」3つのポイント~
~中堅ハウスメーカーのとあるマーケティング部長のつぶやき~
「こんな優秀そうな若手が応募してくれるなんて」と、部長は職務経歴書を眺めて顔をほころばせた。
優秀な若手を採用したくて、人材要件を固めたり採用ルートを変更したり、さまざまな工夫したのが1か月前だ。
そのかいがあり、他社で最先端のマーケティングに触れている若手層の応募が増えて来た。まさに狙い通りだ。心躍るも、部長は面接のことを想像してふと不安になる。
ここ数年、自部署の人員の出入りは社内異動ばかり。自分自身を始め、部署のメンバーも採用面接には不慣れだ。「面接といっても、何を話せばいいんだろう?」と部長は首をひねる……。
中途採用の特徴は、人事部門ではなく現場部門が主導で面接などの採用選考を進める点です。
狙い通りの若手層が応募をしてきたとしても、現場での面接プロセスがうまくいかず、途中辞退などを招くケースも少なくありません。
今回は全3回シリーズで、大手企業などの採用ブランド力が高い企業でなくても、工夫次第で優秀な若手社員を採用でき、生き生きと活躍できるまでに職場に定着する方法を解説しています。
第2回目となる本記事は、「採用選考編」です。採用選考のなかでもとりわけ重要になる“面接”にスポットをあててコツをお伝えします。
➤第1回記事:優秀な若手社員の採用・定着に向けて ~「採用準備」ですべき4つのこと~
面接前に準備すべきポイント
面接前には応募者の書類を読み込むなど、さまざまな準備が必要です。今回は意外と忘れがちな、前提ポイントを2点お伝えします。
選ばれる意識をセットする
中途採用は、いわゆる“現職”の人が応募してきます。新卒採用と比べて、応募者側も“会社を選ぶ”感覚が強いです。
つまり、面接者が応募者を選考するように、ひょっとするとそれ以上に、応募者も面接者を選考しているのです。応募者にとっては、会った面接者を通じて会社を選ぶことになるため、“会社の顔になる”くらいの感覚でいたほうがよいでしょう。
「こっちが選んでやってるんだ」とふんぞり返って、一昔前のような圧迫面接をするような人はいないとは思いますが、改めて応募者と自分は対等の立場である意識・心構えをセットしてください。
質問の禁止事項を確認する
新卒・中途採用に関わらず、面接で本人に聞いてはならない“NG質問”があるのをご存知でしょうか。
具体的には“出身地”、“家族”など、応募者の個人情報に関する質問です。
職業安定法では、「必要な範囲を超える求職者の個人情報を同意なしに収集してはならない」と定められており、面接で不適切な質問をすると違法になる可能性もあります。
採用面接に不慣れな人は、必ず人事部門に禁止事項を確認したうえで、面接にのぞむようにしてください。
なお、厚生労働省のWEBサイトでも「面接で聞くべきではない11項目」が閲覧できるので、事前にチェックしてください。
面接で実施すべきポイント
面接は、大きく3つのフェーズで捉えるようにしてください。
「場作り」「見極め」「動機付け」の3つのフェーズについて、ポイントを解説します。
場作りをする
初対面の相手と話をするときは、誰しも緊張するものです。ましてや「合否が決まる」と感じて、身構えてしまう応募者もいるでしょう。
そのため、面接の初期(導入段階)は“アイスブレーキング”という時間を作る必要があります。
アイスブレイクとは「氷を溶かす」を意味しており、営業の初回アポイントや社員研修の開始で行われる、場の緊張を解きほぐすための時間です。
テクニックとしては“特定質問”という「はい・いいえ」で答えられる質問を投げかけます。
「オフィスの場所はすぐにわかりましたか?」や「緊張してますか?」など、当たり障りのない質問を行い、応募者にリラックスした状態で口火を切らせます。
反対に“拡大質問”という漠然とした問いは、場が暖まっていない状態では避けた方がいいでしょう。
初対面の人に「うちの会社どう思う?」など、返答を考えなくてはいけない質問をすると、相手へのプレッシャーになってしまうのでご注意ください。
見極めをする
場が暖まってきたら、”応募動機”や”職歴”などの本題のやり取りをしてください。
やり取りは単発の質問を数多くして一問一答になるのではなく、1つの話題を掘り下げるイメージを持つとよいでしょう。
例えば“過去の仕事”を取り上げる場合、これまでの仕事を順番に聞くのではなく、「今までで一番、自分らしさが生きたと思う仕事は何ですか?」など、応募者らしさが出るような投げかけをしてください。
また返答があった際も、そこで話を終わらせるのではなく「それは自ら手を挙げたの?」「やってみて見通しと違ったことは?」など、ワンエピソードを中心としながら、角度を変えた質問を重ねていってください。
このような深掘り質問で人物理解をし、応募者が自社にマッチするかを見極めていきます。
動機付けする
前述の“見極め”で、応募者に好感をもった場合、なるべく残りの時間は本人への動機付けに使う意識に切り替えてください。要は”口説く”時間です。
その際“現在の仕事で満たされていない”ことは、必ず引き出すようにしてください。
現職のネガティブな発言は控えようとする応募者が多いので、「〇〇さんの求めているものが、当社で応えられるかを知りたいので」という、相手の立場に立った質問方法をすると良いでしょう。
残念ながら見送り判断をした場合も、その後の時間も丁寧にやり取りをすることを心がけてください。
面接時間を早めて終了させたり、適当な態度で面接したりしてしまうと、SNSなどで会社の悪評が立つ事態にもなりかねません。
面接後に注意すべきポイント
面接が終わったら、極力速やかに合否連絡をするようにしてください。今回は、合格を伝える際のポイントについて2点解説します
合格・内定通知は直接伝える
合格・内定の連絡は、電話・対面(オンライン含む)で直接行うことを推奨します。応募者は複数社を掛け持ちしていることが多いです。合格通知は、自社への志望度を上げてもらう象徴的な場面です。メール併用でもいいので、応募者への情熱を直接伝えることを意識してください。
さらに「どこが良かったか」や「こんな活躍を期待したい」と、応募者を深く理解したうえでの結論という点が伝わるようにするとよいでしょう。
実務面のフォローも忘れない
合格を出したあとに、現会社をスムーズに退職できないことも中途採用ではよくあります。
合格の連絡をしてホッとしてしばらく連絡を放置していたら、「上司から強烈に引き留められて」など、手遅れに陥るケースもしばしば見受けられます。
「いつ頃会社に伝える予定か」や「有休消化はどうするか」など、些細な部分まで踏み込んで応募者をフォローするようにしてください。
応募者の現在の会社同様に、自社についても気になっている点はないかをきちんと確認してください。
面接の際は「受かりたい」一心だった応募者だとしても、いざ合格すると細かい点が気になりだすものです。「面接では聞けなかったけど」という疑問は必ず湧いてくるはずなので、「何でも聞いて」というスタンスで、小さな疑問を解消してあげてください。
まとめ
面接をせずに転職先を決める応募者はほとんどいません。それだけに面接は、優秀な若手社員の採用に向けては最重要場面といえます。
「質問の仕方が分からない」「場がしらけてしまう」など、面接への苦手意識がある人もいるかと思います。そんな時でも、“あなたのことを知りたい”というスタンスは絶対に崩さないようにしてください。自分に興味を持たれている状態は、殆どの若手にとって嬉しいものです。
真摯に相手を知る意識を持ちながら、ぜひ新しい出会いを楽しんでください。
*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)