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リモートワークのための電子帳簿保存法【目指せ!経理のデジタル化 第3回】

テレワークのための電子帳簿保存法【目指せ!経理のデジタル化 第3回】

2020.12.17

「経理部にもテレワーク(リモートワーク)を!」と、意気込む前に押さえておいて欲しいことがあります。それは、帳簿書類の保存義務についてです。

今回は、“電子帳簿保存法”と具体的なデジタルでの帳簿の保存方法についてお伝えします。

1.電子帳簿保存法とは

会社は“取引を記録した帳簿”や“取引に関連して作成した書類”、“相手方から受け取った書類”を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間、保存しなければならないと法人税法で定められているのです。

“取引を記録した帳簿”には、総勘定元帳や仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。

“取引に関連して作成した書類”とは、たとえば、棚卸表や貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などが該当します。

“相手方から受け取った書類”とは、契約書、請求書、領収書、納品書、注文書、検収書、預かり証などが考えられます。

これら帳簿書類の保存方法は、紙による保存が原則のため、コンピュータで作成した帳簿書類についても、アウトプットした紙により保存する必要があります。

でも安心してください。経理関係の書類を電子で保存するための法律がちゃんと整備されていて、その要件を満たせば紙で保存する必要はなくなります。逆に、要件を満たすシステムを導入しなければ、ペーパーレス化は実現しないことになります。

そこで、テレワークを導入する前に、電子帳簿保存法を押さえておくことが肝心です。

2.デジタルによる帳簿書類の保存方法

電子による保存方法は、帳簿書類の種類によって、次の4つに分類されます。

(1)取引を記録した帳簿

最初に記録する段階から、一貫してコンピュータを使って作成した総勘定元帳などの帳簿は、一定の要件を満たせば、サーバ・DVD・CDなどの電子媒体に、記録した電子データのままで保存できます。

一定の要件とは、改ざんされていない事を証明するため電子データの訂正や削除・追加の履歴が確認できること、システムの操作マニュアルを備え付けておくこと、誰でも簡単に検索できる仕組みになっていることなどです。その他の詳しい要件は、国税庁QAを参考にしてください。

【国税庁QA 電子帳簿保存 問7】

電子データによる保存を行う場合には、「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」を、所轄の税務署に提出して承認を受ける必要あります。経理関係の書類を電子化しようとする日の3ヶ月前の日までに提出しなければならないので、早めに準備しなければなりません。

(2)取引に関連して作成した書類

コンピュータを使って作成した棚卸表や貸借対照表、損益計算書などの決算関係書類も、要件を満たせば電子データでの保存が可能です。要件は上記の「取引を記録した帳簿」とほぼ同じです。上記の国税庁QA問7をご確認ください。

(3)取引に関連して作成した書類や相手方から受け取った証憑類

取引の相手先から受け取った請求書や領収書、通帳などの国税関係書類や、自分で作成したこれらの書類の控えは、スキャンして保存することが可能です。ただし、棚卸表や貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類については、スキャナ保存は認められていないので、注意してください。

スキャンする機器はスマホやデジカメでもOKですが、解像度や階調などに一定の要件があります。またスキャンしたデータの真実性を確保するために、タイムスタンプを付すことが求められています。その他にも、真実性および可視化を確保するためにいくつかの要件があります。

【国税庁QAスキャナ保存 問12】

スキャナ保存をする場合は、国税関係者書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書を、スキャナ保存しようとする3ヶ月前の日までに、所轄の税務署に提出して、承認を受ける必要があります。

(4)電子取引を行った場合の取引情報

電子取引を行った場合、契約書や請求書などの取引情報に関する電子データは、下記のいずれかの要件を満たしたうえで、保存することが求められます。

①発行者側が、タイムスタンプを付した後、取引情報を送付する

②取引情報を受け取った後、遅滞なく受領者側がタイムスタンプを付与する

③取引情報の訂正や削除の履歴が確認できるシステムを使用する

④スキャナによる電子化保存規程やスキャナ保存に関する事務処理規程を定めて運用する

電子取引情報をデータ保存するためのその他の要件は、スキャナ保存の場合とほとんど同じです。

【国税庁QA 電子取引 問9】

電子取引にかかる取引データの保存は義務とされており、税務署長の承認は不要です。電子保存のための要件に従っていない場合は、紙で出力して保存することになります。

3.使いやすくなった電子帳簿保存法

ハードルが高いイメージの強かった電子帳簿保存法ですが、令和2年に改正され、特にスキャナ保存は使いやすくなっています。

たとえば、クレジットカードや交通系のICカードの明細のように、会社が勝手にデータを改ざんできないシステムになっている場合は、タイムスタンプの付与が不要になりました。また発行者側が、電子請求書などの取引データにタイムスタンプを付与して送ってきた場合、受け取った側はそのまま保存すればよいことになりました。

リモートワークのためには、大量の紙保存といかにサヨナラできるかが、ポイントです。せっかくデジタル化に成功したと思っても、法律の要件を満たしていなければ、意味がありません。そのためにも、電子帳簿保存法をきちんと理解しておくことが大切です。

【各種申請書】
国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書
国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書

*CORA / PIXTA(ピクスタ)