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テレワーク 生産性 ワークライフバランス

テレワークで残業が減り個人の時間が増える!企業にもメリットがある理由

2021.03.27

テレワークの導入、躊躇していたり迷ったりしていませんか?

今回は、そんなテレワークと生産性の関係の整理をしてみたいと思います。ちなみに、労働生産性は“付加価値÷労働投入量”で示すことができますが、テレワークの効果に関しては、労働生産性のみならず、少し広義の“生産性”に寄与すると考えたほうがしっくりきます。

そもそもテレワークの定義って?

前回の記事でも紹介したとおり、新型コロナウイルス蔓延抑止対策の一環として官民が一体となり推し進めたテレワークは、これまでと比較すると急激なスピードで普及が進みました。その結果、これまで生産性向上に寄与するとされてきたテレワークは、「逆に生産性が低下した」という言葉もよく耳にするようになってきました。

まずは、厚生労働省の『テレワーク総合ポータルサイト』から、テレワークの定義を再確認します。同サイトによると、テレワークは下記のように定義されています。

『テレワークとは「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のこと。“Tel(離れて)”と“Work(仕事)”を組み合わせた造語です。要するに本拠地のオフィスから離れた場所で、ICTをつかって仕事をすることです。

働く場所で分けると、自宅で働く在宅勤務、移動中や出先で働くモバイル勤務、 本拠地以外の施設で働くサテライトオフィス勤務などがあります。

引用:テレワーク総合ポータル

代名詞のように使われたこともあり、在宅勤務=テレワークのような誤解を招いてしまっている面もありますが、実は、在宅勤務はテレワークとされている中の働き方のひとつだということを改めて確認できます。

テレワークにはどんな効果がある?

さて、同『テレワークポータルサイト』によると、テレワークの効果は、主に以下の5つとされています。

(1)業務生産性向上
(2)新規雇用離職防止
(3)社員のワークライフバランス向上
(4)コスト削減
(5)事業継続性確保

この中で、従業員の生産性に直接関わってくるのは、(1)と(3)になります。

新たな時間を業務に充てられる

まずは、(1)の業務生産性(≓労働生産性)から触れていきます。

労働生産性の向上において、テレワークの効果は“付加価値÷労働投入量”の式の分母や分子に働きかけて効果を増大させるという形式をとりません。ではどんな形式なのでしょうか? キーワードは“時間”です。

そう、テレワークが産み出すのは“時間”なのです。訪問などの移動時間が浮きます。そしてその効果は、産み出した時間で新たな“付加価値÷労働投入量”を、もとの生産的な仕事に、まるまる追加するイメージになります。

少し分かりにくいかと思いますので、一日の仕事時間を模したイメージ図で説明していきます。

客先訪問がある営業マンの場合

テレワークによって生み出される時間(仕事編)

出典: 筆者作成

※図の中のブロックは、「一枠が1時間」という意味ではなく、あくまで仕事のかたまりを示しています。

上段が“従来型の働き方”、下段が“テレワーク”とします。そして、モデル職種として“客先訪問がある営業マン”としました。

図の中にブルーで示している部分が、生産性のある仕事ができる時間です。従来型の働き方(コロナ禍以前は当たり前だった働き方ですが)では、顧客先に往訪したり自社に来訪してもらったりして、外部とのうち合わせを行っていました。

このときいずれかの移動時間が発生している訳ですが、この時間は付加価値を生み出す仕事には使えていなかった時間(グレー部分)になります。これを例えばビデオ会議(Web会議)に置き換えることによって、移動の必要は無くなり、生産性に寄与する時間にまるまるあてることが可能となります。

この“これまで存在していなかった時間(○が付いている部分)”で、先に述べたもう一つの“付加価値÷労働投入量”による生産性が生み出せるというわけです。更に、“従来の働き方”で、どうしても残業が発生してしまっていた場合、○の時間を“従来残業で補っていた仕事”を充てる事が理論上は可能となります。

生産性に寄与しない時間が減るわけですから、経営者から見ると、同じ雇用時間でアウトプットが増えるという事になります。これが仕事の生産性、つまり業務生産性≓労働生産性が向上するロジックです。

「逆に生産性が低下した」という声は、例えば企画職など、場所をともにしているコミュニケーションのほうが産み出すアウトプットが高い仕事をしている方々からあがっているのだと思います。とはいえ、産み出される時間の効果も絶大だと思いますので、バランスを考えてのテレワークの導入が今後の課題といえます。

通勤時間がなくなりワークライフバランスの向上に

さて、次に少し広義の生産性に関連する、“(3)社員のワークライフバランスの向上”について考えてみます。

私たちは、仕事だけをして生きているわけではありませんので、私人として時間と仕事をしている仕事人としての時間を分けて考える必要があります。そんなわけで、今度は仕事以外の時間をみていきます。

テレワークによって生み出される時間(個人編)

出典: 筆者作成

ここではモデルケースとして、在宅勤務で完全に通勤がなくなった場合をみてみます。個人が所有している時間は、○で示した部分になります。

そして“通勤”と入っている部分ですが、ここは振る舞いや場所が制限されてしまうため個人としての時間でもなく、またこの時間の賃金を受け取れるわけでもありませんので、仕事人の時間でもありません。在宅勤務に切り替えることで、通勤に充てていた時間がまるまる自分の時間になります。

ドアツードアで片道1時間かかる通勤だったとすると、1日で2時間、1週間で10時間、これを単純に52週換算すると520時間で、自由になる空白の時間として、まるまる20日以上が生まれてしまう計算です。

この時間は個人のものですから、資格の勉強などの自己学習や副業などをする事でその人個人の労働生産性を上げることにつかったり、また家族とのふれあいの時間や趣味の時間を増やしてこころの余裕を増やすことに充てたりすることができるようになります。

そして、これが(3)のワークライフバランスの向上に繋がってゆきます。よく“通勤時間の削減が生産性の向上に繋がる”と表現されることがありますが、ここでいっている「通勤時間の削減で向上する生産性」は個人の生産性のほうという事になります。また、企業からみると、通勤費の削減や、従業員満足度の向上により、結果的に(2)で挙げられている“離職の防止”に繋がるなどのメリットもあります。

まとめ

コロナ禍に背中を押されたテレワークの普及ですが、後退することはないと思われます。通勤時間や営業訪問加え、出張などの“目的指向”かつ“莫大な時間を要していた”移動などは、最適化されていくでしょう。

バランスをとって、自社のニーズに最適化すれば、テレワークは企業にも個人にもメリットがしっかり還元されます。企業は、ひるまずに取り入れるべき施策にしっかりとりくんでゆく時だと思います。

【参考】
テレワーク総合ポータルサイト – 厚生労働省 
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース) – 厚生労働省
IT導入補助金2021 交付規程 通常枠(A・B類型)版(暫定版)、IT導入補助金2021 交付規程・公募要領 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型) – 一般社団法人 サービスデザイン推進協議会

*jessie / PIXTA(ピクスタ)