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従業員満足度 CS ワークライフバランス

【離職防止】組織の“運用プロセス”を工夫して『従業員満足度』を向上する

“従業員満足(ES)”とは、Employee Satisfactionの略称で、仕事や職場環境について従業員の満足度をあらわす指標です。“健康経営”や“ワークライフバランス”が叫ばれる昨今の潮流に乗り、ESはますます重要視されています。

しかし、ESの重要性は理解しつつも、ES向上のために具体的にどのような施策をすればいいか分からないという声も聞かれます。

今回は、“仕事満足度”と“制度満足度”の2つの観点について、実際の事例・ケーススタディを紹介しながら、具体的なES向上施策について解説します。

仕事満足度の重要性

仕事満足度とは、現在の仕事において従業員がどれくらい充足しているのかを表した指標です。目の前の仕事に対する満足度なので、どの企業でも重要視する指標です。

仕事満足度を考える際に、注意が必要なのは新人・若手社員です。

中途入社者であれば、実際の業務経験を通じて「この仕事は自分に向いている・向いていない」が判断できるので、そこまで仕事ギャップについて心配する必要はありません。

しかし、未就業者である新入社員~若手社員は、学生時代に想像していた仕事と現実の仕事のギャップが生じやすいゾーンなのです。

仕事満足度が上がる場合:業務プロセスに工夫改善がある

仕事そのものの適性は、本人が職業を選択している以上、ある程度セルフスクリーニングがなされています。

例えば、Holland(1976)の研究によると、サービス業に従事する労働者は、もともと社交的で積極的な人格が多いとされています。

つまり、自ら望んでその仕事に就いている可能性が高いため、よほど不向きな職種に挑戦していない限り、仕事不適応はおきません。

ESを考えるにあたり注視したいポイントは、仕事そのものではなく“業務プロセス”でしょう。

たとえば“営業職”という職種であったとしても、業務プロセスは各社各様です。従業員の声を聞き入れ、売上目標に到達するため従業員にとって納得感があるプロセスを構築している会社は、仕事満足度が上がりやすいです。

仕事満足度が下がる場合:同じやり方を踏襲する

従業員は仕事を通じて、職場の風土や今後の働き方などさまざまなものを見ています。

今現在の仕事にはそこそこ満足していたとしても「もっと効率の良いやり方があるのに」や「みんなで知恵を出し合う風土が欲しい」など、“進め方”に関する不満があるとします。

そのような不満に目をつぶり「とにかくこれまでと同じやり方でやれ!」と従来型のプロセスを押し付けると、結果的に従業員の仕事満足度は低下します。

とくに若手層であればあるほど、自分と仕事との適性が分からないため、上司や職場メンバーの仕事を進めるプロセスが仕事満足度に与える影響が大きくなります。

仕事満足度向上に関する事例

仕事満足度の改善のために業務プロセスを見直した施策をご紹介します。

~とある化粧品メーカーの販売チームのケース~

名の通った化粧品メーカーの販売チーム。採用募集に自ら手を挙げて接客・販売の職種に就いた従業員が大半だ。

そのおかげで就任直後は生き生きと働いている。しかし数か月経過すると販売エリア全体的に活気がなくなり、従業員の遅刻が多くなっていた。

販売チームの課長が「職場改善アンケート」を行ったところ、目標設定の問題が発見された。

「単月のノルマがあり、月末にお客様のニーズと異なる商品を勧めるのが苦痛」などが代表的な声で、目標があることそのものではなく、目標の担わせ方に問題があったようだ。

接客業の従業員は顧客のことを誰よりも理解している自負があるため、あくまでお客様の状況に合わせて商品の提案をしたい、という思いがあったのだ。

その声を受けて、この企業では単月ではなく中長期的な目標を定めるように業務プロセスの変更を行った。

制度満足度の重要性

従業員である以上、処遇などの制度・条件は気になるのが当然でしょう。

しかし、処遇や条件面などのスペック条件は、満足度向上には寄与しにくい“衛生要因”といわれています。これはアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した二要因理論の動機づけ・衛生理論です。

つまり、衛生要因である制度・条件面をどれほどリッチにしたとしても、やる気の源にはならないのです。

従って、制度満足度のポイントとしては満足度を“上げよう”とするのではなく“下がる要因を取り除く”ことになります。

制度満足度が上がる場合:制度運用に工夫がある

制度は会社全体で決まっていることがほとんどで、部署単位で手が打ちにくいと思われるかもしれません。

しかし、同じ制度や条件にも関わらず、組織によって雰囲気や活気に差があることもあります。満足度が高い組織は“制度の運用面”に工夫がある場合が多いです。

具体的には“賃金の決め方”や“どうすれば昇格できるのか”など制度の運用プロセスについて透明性を確保する工夫が効果的です。

制度運用の開示を行っている部門は、たとえ同じ制度・条件であっても従業員の納得が得られやすいのです。

制度満足度が下がる場合:制度を押し付ける

制度や条件に対して従業員の不満があっても、現場管理職が「制度は変えられないからしょうがない」というスタンスでいると、制度満足度は低下しやすいです。

従業員側も制度は変えにくいと分かっていて不満を表明しているため、不満を無視あるいは蓋をするようなスタンスは、さらなる不満の種になりかねません。

こうなると、僅かでも賃金の良い競合他社へ従業員が転職をしてしまう状況にもつながってしまいます。

制度満足度向上に関する事例

制度の透明性を確保し、制度満足度を向上させた施策のケースをご紹介します。

【事例】

~とある急成長ベンチャー企業のケース~

急成長中のA社は毎期毎期、厳しい売上げ目標とそれに付随する超過勤務が発生していた。従業員からは「なんでこんなにノルマが厳しいのか?」と不満の声が聞かれた。

営業部門の課長は、これまで期初に目標数値をメンバーに下ろしているだけだった。

しかしある時から、目標がどのように決まって自分たちに下りてくるかというプロセスを、数値と合わせてメンバーに説明するようにした。

もちろん全てのプロセスは開示できないが、「役員から下りてきた目標を、まず部長会議で横並びチェックするんだ」と、できる範囲で説明した。そのうえで、課長なりの「だから今期はこの目標額を担う必要がある」という見解を述べた。

相変わらずメンバーの労働時間は変わらないものの、これまでは「何でこんなに忙しいんだ!」と不満のみしか言ってこなかったメンバーが「ここを工夫したら、もう少し生産性が上がるのでは!?」と、アイデアを出すようになったそうだ。

まとめ

仕事満足度や制度満足度は、現場を担っている管理職にとっては諦めがちな項目です。もちろん、ハードそのものを一部署で変えるのは難しいでしょうが、だからこそ今回ご紹介したようなプロセスというソフトが重要になります。

同じ仕事・同じ制度なのに、生き生きしている部署と疲弊している部署がある場合、現場の指揮官に注目してみてはいかがでしょうか。活気がある部署では、不満足要因を取り除く工夫が何らかなされていることでしょう。

施策そのものはちょっとした工夫かもしれません。しかし、現場の従業員は、現場の指揮官が“何とか改善しようとあがく姿勢”に、気持ちが満たされているのかもしれませんよ。

*kikuo / PIXTA(ピクスタ)