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【改正高年齢者雇用安定法】中小企業担当者が知っておくべき70歳まで定年引上げの影響

【改正高年齢者雇用安定法】中小企業担当者が知っておくべき70歳まで定年引上げの影響

2021.05.21

近年、日本では少子高齢化が急速に進展しています。労働力人口の減少を跳ね返し、経済と社会を発展させるためには、全員参加の社会実現が求められています。

15~64歳人口は、1997年の8,697万人をピークに減少を続けており、2017年には、7,604万人と20年間で1,000万人程度減少し、2040年には、5,978万人まで減少すると予想されます。そこで求められているのが、高齢者の活躍支援です。

65歳以上の社員も2017年1月1日から雇用保険の加入要件を満たせば、雇用保険が適用(加入)されるようになりました。また、2020年4月1日からは雇用保険の免除規定が撤廃され、労使とも雇用保険料を納めなればなりません。ちなみに上限年齢はありません。80歳でも100歳でも、働いている限りは雇用保険の納付は必要となります。

【こちらの記事も】2021年改正「雇用に関わる法律と助成金制度」のまとめ

改正高年齢者雇用安定法について

令和3年4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行されました。主なポイントは『65歳までの雇用確保(義務)+70歳までの就業確保(努力義務)』で、70歳までの就労確保措置を講じることが「努力義務」となったことに伴い、再就職援助措置などが追加されています。

“義務”“配慮義務”や“努力義務”については下記の関連記事を参考にしてみてください。

義務や配慮義務とはどう違う?労働法における「努力義務」とは?

高年齢者就業確保措置について

定年を70歳未満に定めている企業や65歳までの継続雇用としている企業は、次の1~5の高年齢者就業確保措置を講じるよう努める必要があるとされています。

1.70歳までの定年引上げ
2.定年制の廃止
3.70歳までの継続雇用制度の導入
4.70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5.70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
5-1.事業主が自ら実施する社会貢献事業
5-2.事業主が委託、出資等する団体が(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

3から5に関しては、事業主が講じる措置について対象者を限定する基準を設けることが可能ですが、その場合過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。

4と5に関しては、過半数労働組合等の同意を得た上で、措置(創業者支援措置)を導入する必要があるとされています。組み合わせて導入する場合、原則、3の“70歳までの継続雇用制度”を導入して、個々の労働者の希望を聞いた上で業務委託契約を締結する場合、過半数労働組合等との同意を得る必要はないとされています。

定年及び継続雇用制度を70歳まで引き上げるメリット

65歳以上の高齢者の中には、若年層をはるかにしのぐ成果を上げている社員がたくさんおり、多様で豊富な経験のある人材層と言えます。その高齢者を活用するための仕組みが、“70歳までの定年引上げ”もしくは“70歳までの継続雇用制度の引き上げ”の導入です。

企業のメリットは、下記の3点が挙げられます。

1.70歳までの雇用延長が可能になることで、社員のキャリア形成意識の向上
2.65歳以上で優秀な人材の採用が可能
3.人事制度の変更が求められるため、年功型からの脱却を計ることが可能

定年及び継続雇用制度を70歳まで引き上げるデメリット

厚生労働省の調査では、66歳以上の社員が働ける制度のある企業の割合は、全体の33.4%であり、まだまだこれからの取組みとの統計結果があります。

高齢者は、加齢により労働能力が後退し、柔軟性に欠けると考える経営者も多いと言えます。また、運動の能力の低下により労災リスクが増加することも予想されます。現在の定年制度から変更することで、人件費が増加することへの懸念も拭えないでしょう。

65歳超雇用推進助成金 令和3年4月以降コースのご案内

主な受給要件は、就業規則等を次の1から4のいずれかに該当する新しい制度を実施し、就業規則を労働基準監督署へ届出することです。

1.旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ
2.定年の定めの廃止
3.旧定年年齢及び継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入
4.他社による継続雇用制度の導入(他の事業主が引き続いて雇用する制度)

就業規則の定年引上げ等を実施する場合は、社会保険労務士などの専門家等に経費を支出したことが必要になります。支給額例として、2パターンをご案内いたします。
・対象被保険者 10人未満  70歳以上の定年引上げ 120万円支給
・対象被保険者 10人未満  70歳以上継続雇用制度の導入 80万円支給

最後に、中小企業担当者が考えるべきこと

65歳未満の在職老齢厚生年金の基準額28万円が47万円に引き上げることが令和3年4月に改正予定です。この改正は、年金受給者がより柔軟な雇用形態で働くことが可能とした改正です。

企業担当者は、下記の点を検討の上、より高齢者の知識・能力を発揮していただき、活躍の場を再設計することをお薦めいたします。

高齢者の社員が活躍できる業務環境づくり

加齢による運動能力の低下や仕事へのこだわりによる弊害が起こることに対して、安全教育やOJTによる職場教育の実施が必要になります。熟練した高齢者の社員が、若手社員を巻き込んで品質マニュアルなどの作成を推進している企業もあります。

保険や年金を含めたライフプランの検討

雇用保険の加入、厚生年金の加入および在職老齢年金について検討し、70歳まで雇用のライフプランを高齢者に提示することが必要です。

人事制度の再検討

現状の人事制度で良いのか再検討する必要があります。賃金制度は、年功序列型賃金制度の上、定年後再雇用で、賃金を変更するという形態で良いか再考する必要があります。ジョブ型雇用を段階的に導入することも一案です。

70歳までの雇用義務は国の政策課題であり、企業担当者も前向きに取り組むことが必要です。積極的に取り組みして実施する企業には、助成金制度もありますのでご活用を検討下さい。

【参考】
雇用政策研究会報告書 2019年7月 雇用政策研究所
高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果を公表します|厚生労働省
65歳超雇用推進助成金 令和3年4月以降申請分|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

*mits / PIXTA(ピクスタ)