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副業・兼業解禁へ。企業がうまく活用していく方法・メリットとは

副業・兼業解禁へ。企業がうまく活用していく方法・メリットとは

2021.06.03

昨今、“副業・兼業解禁”という言葉をよく聞くようになりましたが、どのような印象をお持ちでしょうか。(以下、副業・兼業を副業と表現します)

中小企業にはあまり関係のない話と思われがちの“副業解禁”ですが、実は企業にも個人にもメリットがあります。もちろん、企業からみるとデメリットやリスクと捉えなければならない面もありますが、今回はそんな副業解禁に関して考察してみます。

副業解禁の背景とは?

2018年1月、厚生労働省は、企業におけるモデル就業規則を改定しました。その内容は、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定の削除が盛り込まれたもので、これによって、より本格的に副業の推進が叫ばれるようになりました。

これは、政府が2017年に会議決定した『働き方改革実行計画』の中の第5項、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」からの流れを汲んだ施策の一環です。

急激にすすむ少子高齢化により生産年齢人口の減少に歯止めがかからない事が確実となっている我が国では、様々な手段を尽くして国全体の様々な要素の生産性を向上させていく必要があります。

副業の推進により労働生産性を上げる狙い

内閣府『平成30年度版経済財政白書』の調査によると、人材の高スキル化が労働生産性の向上に寄与することが明らかになっていますが、ではどのようにしたら、手持ちのスキルを高度化や、新たなスキルの獲得が実現するのでしょうか。

副業の推進は従業員が新たなスキルを手に入れる機会となり得るという観点より、生産性を向上させる可能性があります。また、理論上は、本業の労働生産性を高めなければ副業をする余裕もないはずですので、本業と副業の生産性を高めるインセンティブ効果も期待できます。

そんな副業ですが、企業の目線から見た効果と課題はどのようなものが考えられるでしょうか。ここでは中小企業庁がまとめた資料を参考に確認してみます。

※特に中小企業が注目しておくべき箇所を赤字にしています

企業から見た副業のメリットは?

まずはメリットから見ていきます。

人材育成面では、①従業員が社内では得られない知識・スキルを獲得し、それを社内で活かすことで労働生産性が高まります。また、②社外でも通用する知識・スキルの習得・研鑽に努めるようになり、スキルの多角化・高度化が可能となる、などが考えられます。

そして、人的資源の面からもメリットがあります。副業人材を活用できるようになると、自社人材のみでは不足してしまっていた専門性の高いスキルなどが補完できるようになります。

さらに、同じ事を反対の面からみた観点ですが、新しい分野へと活躍の場を求めて転職をしてしまいかねない優秀な人材が、退職することなく会社に留まり、本業である会社で活躍し続ける可能性が高まります。

『パーソル研究所』の調べによると、意識の変化としては本業へのよい影響もみられることがわかりました。副業は、本業へのモチベーションや忠誠心の向上に繋がる傾向が見受けられます。

副業による本業への変化(%)
聴取方法:5件法「高まった~低下した」

企業から見た副業の課題は?

一方、企業にとっての課題はどの様なものが考えられるでしょうか。

まず思いつくのは、従業員の健康管理(長時間労働による従業員の心身への影響)と、それによる生産性の低下などの本業への支障かと思います。実際に、副業者の労働時間は、非副業者に比べて多くなりがちです。また、本業の秘密漏洩や競業避止などのモラルハザード的なリスクも考えられます。

通常はリスクや懸念は慎重に考えてしまい、どうしても二の足を踏んでしまいがちですが、企業の価値観としてどの程度までの過大やリスクを容認できるのかの見極めが必要になるかと思います。

なお、リスクに関しては、2020年9月改訂の『副業・兼業の促進に関するガイドライン』を理解し、またこれに基づいた2021年4月に再度改訂提示された「モデル就業規則」を参考に就業規則を定め直して、企業と従業員が意識統一を図ることで、一定程度の抑止へと繋げることもできます。

一週間あたりの総労働時間(%)

まずは条件付きでの副業解禁を目指そう

では、これらのメリットとデメリットを踏まえて、企業はどうあるべきなのでしょうか。結論からいうと、まずは“条件付き容認”という解禁形態を目指すのが良いかと思われます。

政府が推進し、世の中の流れのトレンドとしても副業が解禁・容認されて行く中では、副業全面禁止を掲げても、会社に隠れて副業をする従業員が出てしまいかねません。また、副業を容認することで得られる従業員の高スキル化やモチベーションアップなどのメリットが得られないばかりか、外部の副業社員の力を得て自社の経営資源とする機会も失ってしまいます。

それであれば、デメリットを抑えつつはじめてみるのが、はじめの一歩となりそうです。副業のリスクは全面解禁と条件付き容認の間で2倍以上の開きがあります。副業容認の条件を、就業規則の中で触れるようにしつつ、魅力的な副業容認ルールはどのようなのかを考えはじめてみてはいかがでしょうか。

副業後の変化 高まった割合(%)

限られた時間の中で新しい事にチャレンジしてゆくのは手間がかかります。しかし、時代の変化の兆しをいち早く捉え、フットワーク軽く対応してゆけるのも中小企業の強みといえます。

会社の強みとするための「副業解禁」。検討してみるのには、そろそろ良いタイミングではないでしょうか。

【参考】
モデル就業規則について – 厚生労働省
働き方改革実行計画 – 働き方改革実現会議
平成30年度版経済財政白書 – 内閣府
多様で柔軟な働き方 – 経済産業省
兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会 – 中小企業庁研究会
副業・兼業 – 厚生労働省
※ 労働条件等関係助成金(副業・兼業労働者の健康診断助成金) – 厚生労働省
副業の実態・意識調査 – パーソル総合研究所

* Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)