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経営者必読!知っておくべき「65歳超雇用推進助成金」社労士が詳しく解説

経営者必読!知っておくべき「65歳超雇用推進助成金」社労士が詳しく解説

2021.07.06

少子高齢化の流れが進み超高齢化社会を迎える中、切実な問題として各企業の前に立ちはだかっている労働人口の減少。このような状況に対応するため、国では法改正により定年年齢の延長や継続雇用の推奨などの施策を打ち出し、高齢者を各企業で雇用することを推奨しています。

健康寿命が延びるにつれ、働く意欲を持ち続けている高齢者の数も増加しているといわれており、知識や経験の豊富な高齢者を雇うことは企業にとってもさまざまなメリットをもたらします。

そして、このような中で注目されているのが『65歳超雇用推進助成金』という助成制度です。今回は、この制度の概要や受給の要件、気になる支給金額などについて順を追って解説します。この機会に助成制度を活用し、新たな戦力となり得る高齢者の雇用を検討してみてはいかがでしょうか。

65歳超雇用推進助成金とは

『65歳超雇用推進助成金』とは、働く意欲をもつ高齢者を積極的に活用するための対応をした企業が受けることのできる助成制度です。

高齢者が年齢にかかわらず勤続意欲と能力を持ち続ける限り働くことができる社会として政府が打ち出す“生涯現役社会”。この社会を実現するための施策として、『65歳超雇用推進助成金』では施策の内容別に次の3コースが設定されています。

(1)65歳超継続雇用促進コース:65歳以上への定年引上げ
(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース:高年齢者の雇用管理制度の整備等
(3)高年齢者無期雇用転換コース:高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換

要件や助成額が異なるので、それぞれの企業に合った助成金を選択することができます。

次の項目では、(1)の『65歳超継続雇用促進コース』について、詳しい内容を見ていきましょう。

詳細の要件をチェック!「65歳超継続雇用促進コース」とは

『65歳超継続雇用促進コース』は、65歳以上の労働者が希望した場合に継続して働くことができる制度を導入した企業が受けられる助成制度です。

制度の概要

次の施策のうちいずれか1つを導入した場合に助成を行うコースです。

・65歳以上への定年年齢の引き上げ
・定年制度の廃止
・66歳以上で希望した者全員が対象の継続雇用制度の導入
・65歳以上の希望する者が定年後に他社で継続して雇用される制度の導入

支給金額

支給金額は、導入した制度の内容に応じて下記の通り設定されています。定年の設定が高年齢になるほど高額になる点に特徴があります。

■65歳以上への定年年齢の引き上げまたは定年制度の廃止

引上げた定年年齢 65歳 66~69歳 70歳以上または定年制度廃止
5歳未満 5歳以上
対象被保険者数 10人未満 25万円 30万円 85万円 120万円
10人以上 30万円 35万円 105万円

160万円

 ■66歳以上で希望した者全員が対象の継続雇用制度の導入

継続雇用制度の導入年齢

66~69歳 70歳以上
4歳未満 4歳以上
対象被保険者数 10人未満 15万円 40万円 80万円
10人以上 20万円 60万円

100万円

■65歳以上の希望する者が定年後に他社で継続して雇用される制度の導入

他社による継続雇用制度の導入年齢

66~69歳 70歳以上
4歳未満 4歳以上
支給額(上限額) 5万円 10万円 15万円

受給条件

『65歳超継続雇用促進コース』の助成対象に該当するためには、以下の要件を満たす必要があります。

・前述(「制度の概要」参照)の4つの制度を導入する際に経費を使ったこと(専門家やコンサルタントへ制度導入にあたり経費を支払うこと等)
・前述(「制度の概要」参照)の4つの制度を労働協約や就業規則で定めていること
・支給申請をする前までの間に高年齢者雇用安定法の定年に関する規程に違反していないこと
・支給申請をする前日の時点で、会社で1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が最低でも1人以上いること
・高齢者の雇用継続のための措置として、高年齢者雇用等推進者を選任する、または職業訓練や健康安全管理などの高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施していること(措置を実施した事実を証明する書類が必要になります)

ここで注意しなければいけないのは、「会社で1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者」がどのような者かを把握しておく必要があることです。

この60歳以上の社員は、期間の定めなしで雇用契約を交わしている社員のことです。したがって、定年を迎える時点で短期雇用者や日雇労働者、期間ごとの契約社員の者は含まれない点に注意しましょう。

また、1年以上継続して雇用する必要があることから、これまで有期契約を交わしていた社員を助成制度に対応するため直前に正社員化したとしても、要件に該当しないことになります。

結果次第で助成率に変化あり?「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」とは

次に(2)の『高年齢者評価制度等雇用管理改善コース』をご紹介します。これは高齢者の雇用を促進するために、賃金制度や人事制度、労働時間、健康管理など雇用管理に関する制度を整備した企業が受けることのできる助成制度です。

事前に『雇用管理整備計画』で具体的な措置に関する計画を策定し、実際に措置を実施した場合に受給できるもので、措置を実施したことで労働生産性をアップさせた場合には助成率がアップするという特徴があります。具体的な金額は、中小企業の場合は生産性要件を満たした場合は経費の75%、満たさなかった場合でも60%の支給を受けることが可能です。

支給の対象は専門家へ相談した場合やソフトウェアを導入した場合など、高齢者の雇用管理に関する制度を整備するためにかかった経費になります。

限度があるので要注意!「高年齢者無期雇用転換コース」とは

続いて(3)の『高年齢者無期雇用転換コース』です。これは50歳以上で、定年年齢に満たない有期契約労働者を、期間の定めのない無期契約での雇用に転換させた企業が受けることのできる助成制度です。

労働者一人あたり、中小企業が生産性要件を満たした場合に60万円、満たさなかった場合に48万円が支給されます。この助成制度には支給申請年度ごとに限度があり、支給申請年度内で一事業所あたり10人までならば受けることができます。

支給申請に関する注意点は?

雇用関係の助成制度は、申請までに期限が設けられているケースが非常に多く、「65歳超継続雇用促進コース」の場合は、定年年齢の引上げ等の制度を導入してから2ヶ月以内に申請をする必要があります。

したがって、制度を導入してから申請書類の準備や記入をしていたら、特に人材数に余裕のない中小企業の場合はあっという間に期限が過ぎてしまう可能性があるため、申請する前にスケジュールの洗い出しや書類の準備を済ませておく方法が有効です。

申請方法や必要書については、以下の厚生労働省のホームページを参考にすると良いでしょう。このサイトからは支給申請書のダウンロードもできますので、すぐに必要書類を揃えることが可能になります。(記事下【参考】よりご覧いただけます)

申請先は、企業を管轄する都道府県の支部高齢・障害者業務課になります。提出先の住所もあらかじめ調べておきましょう。郵送による申請も可能ですが、支給申請の期間内に書類が到着するように送る必要があります。消印日が申請期間内でも、到着が期間を過ぎてしまった場合は受給ができないので注意しなければなりません。

 

『65歳超雇用推進助成金』は、企業が負担なく高齢者を雇用するための体制を整えることのできる、非常にメリットの多い制度です。その反面、支給要件や支給期限、労働に関する法律を遵守しているかどうか等のルールも複数設けられているため、日頃の適正な雇用管理や事前の準備が非常に重要になります。厚生労働省が展開するホームページを参考にした上で、計画的に支給申請をする方法が有効です。

【参考】
65歳超雇用助成金 / 厚生労働省

* mits / PIXTA(ピクスタ)