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こだわるだけで売れ行きが変わる!? 商品ネーミングのコツ【基本編】

こだわるだけで売れ行きが変わる!? 商品ネーミングのコツ【基本編】

新型コロナウイルス感染症の蔓延により、人々の消費行動は大きく変化しました。外出自粛の影響で、従来のように店舗に足を運んで商品を選ぶ購買スタイルはもはやメジャーではなくなりつつあります。

一方、通販に代表される国内のEC市場は拡大し、ここ5年間で1.5倍に急拡大をしています。“店舗で見て触って”購買しにくい昨今、商品ネーミングの重要性はますます高まっています。通販などではパッと目に入る画面の時点で、こだわりがないネーミングでは消費者は振り向いてくれません。しかし見方を変えれば、知名度がない企業のニッチな商品であっても、消費者の気持ちをくすぐるようなネーミングがつけられれば、思わぬヒットにつながる可能性もあるのです。

マーケティングの中でも奥深いネーミングの世界ですが、売れている商品には一定のセオリーが存在します。今回は、ネーミング開発を行う際に重要なポイントをご紹介します。

今こそ知るべきネーミングの重要性

かつての商品の選択肢が少なかった時代は、「良い品質の商品を開発すれば売れる」時代でした。

しかし、今では市場には膨大な数の商品があふれてかえっています。

総務省の『「情報流通インデックス研究会」報告書』によると、2001年から2009年の8年間で消費者が接する情報流通量はインターネットを中心に約2倍となっています。一方で、消費情報量の伸びはほぼ横ばいでした。つまり世の中に溢れる情報のうち、約半分は消費者に認識されることなく自然淘汰されるのです。

ネーミングが主に効いてくるのがこの消費者の認知・関心領域です。逆に考えると、良いネーミングを考案すれば、競合他社より2倍の見込み顧客を獲得できるといえます。

当然、見込み顧客の間口を広げることは、売上げにも大きく関係します。伊藤園の『お~いお茶®』や、ネピアの『鼻セレブ®』は成功事例として有名です。

今は商品の品質以前に、ネーミングの時点で顧客のハートをつかまないと、売上げに結び付かない時代といえるのです。

良いネーミングの共通点

世の中のヒット商品のネーミングにはある共通点があります。ここでは、とりわけ重要で、すぐに取り入れやすい共通点を抽出してみました。

1:キャッチーで印象に残りやすい

情報の大半が淘汰される現代では、ネーミングは顧客が「お!?」と興味を惹かれるキャッチーさが求められます。

日清食品の『カレーメシ®』は、販売時は『カップカレーライス』でしたが、一般的な名称過ぎてあまり話題になりませんでした。しかし商品ネーミングを『カレーメシ®』に変更したことで、顧客の興味関心をくすぐり、大ヒットにつながりました。

ひと目で覚えることができて印象に残りやすいネーミングならば、話題性も高くなって口コミによる拡散効果も期待できます。

2:商品特性が分かりやすい

『名は体をあらわす』という言葉に代表されるように、商品の自己紹介であるネーミングは、端的に商品特性をあらわす分かりやすさが必要です。

最もアピールしたいポイントや商品特徴をひと言で表現したネーミングならば、名前を露出するだけで商品の理解促進やPRにもつながり、広告としての役割も果たします。

3:オリジナリティがある

競争が激しく、商品性能だけで差別化が難しいジャンルにおいては、ネーミングのオリジナリティが重要になります。

似たような複数の商品が陳列棚に並んでいる状況で、ひと目で自社商品と識別してもらう個性が必要になるからです。

競合商品名と識別するだけでなく、商品や企業ブランドの個性を表現することで、消費者の記憶に強く作用させることもできます。

4:語感が良い

ネーミングではついつい見た目(文字)だけを重視してしまいますが、“耳に残る”語感の良さも必要です。

YouTubeなどの動画を流し見しているときに、すっと差し込まれたCMで商品名が聞こえて「何の商品だろう?」と興味を持つケースも多いかと思います。

アイスの『ガリガリ君®』は、語感訴求で成功している好事例です。ガリガリと食べるというアイスの特徴と、が行が持つ“硬さ”“力強さ”の印象音が商品と一致しています。

ネーミングする際のポイント・発想法・注意点

自社で商品ネーミングを行うときに、参考になる発想プロセスをご紹介します。

商品特性を抽出する

商品をあたかも人物と見立てながら、商品が持つ特性をとにかく洗い出します。この際、“〇〇素材を使用”という性能上の特徴よりも、その特徴が顧客にもたらす“感情”に着目するといいでしょう。

〇〇素材を使った商品を使うことで“安らぐ“爽やか”など、形容詞で列挙していくと顧客が享受できるメリットで表現できるようになります。

なるべく数多く挙げるためにも『KJ法』(付箋などのメモにアイデアを一つずつ書き込んで行き、位置を移動させながら、全体を俯瞰したり整理したりするアイデア発想法、『発想法 改定 – 想像性開発のために(中公新書)』参照)などを使うのがおすすめです。

言葉遊びをする

キャッチコピーの世界では、“足し算””引き算”“掛け算”など言葉を整える手法があります。

『熱さまシート®』は「熱さまし」+「シート」の足し算です。また『サラドレ』は「サラダドレッシング」を切り取ったのが語源です。

抽出したキーワードは、複数を組み合わせて造語にする、キーワードを短縮してみる、ほかの言語に変換するなど言葉遊びをしてください。このプロセスでネーミングの精査が進みます。

商標登録をチェックする

名前ができたら、それが法的に使用可能かをチェックする必要があります。

大前提として、商品名は商標登録されていないものを選ばなければいけません。商標登録されているものは商標権が発生しているため、登録者以外が同一の名前を使用するのは法違反となります。登録に気付かず使用してしまうと、商標登録済みの企業や個人から差し止められるなどトラブルになってしまう恐れがあります。

商標登録のチェックは『特許情報プラットフォーム』で検索をかければ、既に登録がされているかがわかります。項目で商標のカテゴリーを選ぶ、商標を選び該当ワードがあるかを確認してください。

また、自社が商品をリリースしたあとも他社の模倣を防ぐためにも商標登録を申請するとよいでしょう。

【参考リンク】特許情報プラットフォーム

 

商品名は“名前”としての単純な機能だけではなく、その商品や企業のブランドやビジョンなどを感じさせるという大切な機能も持っています。

デジタル商品の販売において、10年間で総額100億円以上を売り上げてきた実業家エベン・ペーガンは著書『あなたの知識・経験・情熱をデジタル商品にしてオンラインで売り出す方法』の中でこのように言っています。

「考え抜かれたネーミングはあなたの商品の知覚価値を大きく増大させる。名前がなければ、どこにでもある1つのアイデアに過ぎない。良い名前は、商品の価値を10倍にも100倍にも高める。いい名前が思いつかないなら、いくらでも時間をかけて考えるべきだ。」

新商品の場合はもちろんのこと、既存商品のネーミングにも「このネーミングは商品価値を何倍高めてくれているのだろうか?」という観点で目を向けてみてはいかがでしょうか。

【参考】
内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)(2020) – 経済産業省
「情報流通インデックス研究会」報告書(2009) – 総務省
※ 川喜田 二郎(2017)『発想法 改版 – 創造性開発のために』 (中公新書)

* adam121 / PIXTA(ピクスタ)