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従業員シェア

休業中の従業員に活躍の場を!中小企業が注目したい「出向による従業員シェア」の手順と注意点

2021.10.27

コロナ禍では、一時的に需要が低下する業種が見られ、多くの企業では休業措置を講じています。しかし、休業期間が長引くにつれ、従業員の就労意欲の低下やスキルアップ機会の喪失等が懸念されています。

そこで、コロナ禍で需要が低下している業種から、反対に需要が増加している業種へ一時的に人材を供給する“従業員シェア”の一つとして“出向”に注目が集まっています。

また、大企業のものだと考えられがちな“出向”ですが、そのメリットは幅広く、中小企業の経営者の方にもぜひ知っておいてほしい経営の選択肢の一つでもあります。

今回は、コロナ禍、そしてコロナ禍の後も活用すべき“出向”の手順と注意点について解説いたします。最後にマッチング支援や助成金の情報も掲載していますので参考にしてください。

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「出向」のメリットとは

まず、出向のメリットについてご紹介します。冒頭でコロナ禍によって注目を集めているとお伝えしましたが、出向はもともと以下のようなメリットがあるとされています。

(1)経営状況の悪化時の雇用を維持(出向元)
(2)関係企業間での人材交流(双方)
(3)他社での職務経験と通じたスキルアップ、キャリア開発(出向元)
(4)中高年齢者のポストの確保(出向元)
(5)即戦力の獲得(出向先)

特に、(4)の点は、今後より重要となってきます。

社内人員の高年齢化が進む中小企業では、若手人材が活躍ポストを用意できず、かといって中高年齢者を異動させるポストもないという問題があります。こうした状況でも出向という方法をとることで、社外も含めたポストを用意することが可能となります。

このように、コロナ禍が収まった以降も、メリットがある“出向”については、今後も経営の一つの選択肢として把握しておくとよいでしょう。次の項目から、出向の仕組みや進める際の手順について説明していきます。

「出向」の仕組み

“出向”とは、労働者が自己の雇用先の企業に在籍したまま、他の企業の従業員(ないし役員)となって相当長期間にわたって当該企業の業務に従事することを言います(『労働法』より)。“在籍出向”といわれる場合もあります。

図1:出向のイメージ

出向は、グループ会社・関連会社間での経営・技術指導、従業員のスキルアップ、雇用調整等の目的で行われることが多いですが、コロナ禍では、需要が減少する業種から需要が増加する業種への一時的な従業員シェアの一類型として行われることも多くなっています。

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出向による従業員シェアの4つのSTEP

出向が有効となるには、①出向を命ずることができる場合であること、②当該出向命令が権利の濫用でないこと、が必要になります(労働契約法第14条)。

具体的なSTEPを見ていきましょう。

STEP1:出向命令の根拠規定の確認(出向元・従業員の関係)

出向は、兼業・副業とは異なり、企業の“出向命令”によって行われますので、出向を命ずることができる場合である必要があります(要件①)。

この点については、出向命令を行うことについて、対象の従業員から個別に合意を得ることができれば要件を満たします。

しかし、こうした個別の合意がなくとも、最高裁判例等では、就業規則で「業務上の必要がある場合には、出向を命じる場合がある」旨を定めることに加えて、出向期間、出向中の従業員の地位、賃金、退職金、手当等の処遇に関して、出向従業員の利益に配慮した定めを置いた出向規程や労働協約がある場合には、出向を命じることが可能とされています。

中小企業では、詳細な出向規程等を定めていることはそう多くないと思いますが、この機会に自社の就業規則等を確認してみるとよいでしょう。

STEP2:出向契約の締結(出向先・出向元との関係)

次に“出向先と出向元”との関係で、出向契約を締結する必要があります。

出向契約では、以下のような内容を定めておきましょう。

(1)出向期間
(2)職務内容、職位、勤務場所
(3)就業時間、休憩時間
(4)休日、休暇
(5)出向負担金、通勤手当、時間外手当、その他手当の負担
(6)出張旅費
(7)社会保険・労働保険
(8)福利厚生の取扱い
(9)勤務状況の報告
(10)人事考課
(11)守秘義務
(12)損害の賠償
(13)途中解約
(14)その他(特記事項)

この出向契約の定めは、後述する出向中の労働関係法令の適用の在り方にも影響してきます。

STEP3:出向中の労働条件の明示(出向先・従業員の関係)

厚生労働省は、出向先と従業員との関係において雇用契約が成立するとしているため、通常の採用の場面と同様に労働条件の明示が必要であるとしています(労働基準法15条1項)。

もっとも、この場合、出向先が直接明示するのではなく、出向元が出向先に代わって出向中の労働条件を明示してもよいとされており、実際は出向元が明示する方が便宜的でしょう。

STEP4:出向命令・復帰命令(出向元・従業員の関係)

上記のようなステップを経て、実際に出向命令を行うこととなります。

従業員シェアとして“一時的に”出向をさせる場合には、自社の需要が回復した場合には、またその従業員に戻ってきてもらう必要があります。

この場合の復帰命令については、出向している従業員はもともと出向元で働くこととなっているため、復帰にあたり個別に合意を得る必要はないとされています。

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出向命令が権利の濫用となる場合には無効

さて、上記のように出向を命じることができる場合であっても、具体的な事情に照らして出向命令が“権利の濫用”となる場合には、その出向命令は無効とされます(要件②)。

どのような場合に権利の濫用となるかはケースバイケースとなりますが、以下のような場合が無効とされやすいので注意しましょう。

(1)ある従業員を退職に追い込む目的等の不当な目的で行われる場合
(2)出向により賃金等の労働条件が低下する場合
(3)介護や病気の治療等、私生活に著しい不利益が生じる場合

出向の3つの注意点

出向を行う場合のSTEPは上記のとおりですが、出向は2社間で雇用関係が成立することから、以下の点に注意しましょう。

注意点1:労働関係法令の適用関係

出向中の労働関係法令がどのように適用されるかは、出向契約において、出向元・出向先とでどのように権限を割り振るかによって変わってきます。

一般的には、以下のように整理されることが多いです。

注意点2:労働保険・社会保険の適用関係

出向中の労働者に対する労働保険・社会保険の適用関係は、以下のとおりです。

賃金の支払等により複雑となりますので、実際に出向をする場合には、社労士等の専門家に確認するとよいでしょう。

注意点3:「労働者供給事業」とならないように

また、見落としがちな点として、出向については“労働者供給事業”との関係に注意する必要があります。

供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることを“労働者供給”といい、職業安定法は、労働者供給を業として行う“労働者供給事業”を原則禁止としています(職業安定法第44条)。

図2:労働者供給のイメージ

前出の出向の図(図1)と見比べるとわかるように、出向と労働者供給は、形の上では同じです。したがって、出向を“業として”行う場合には、労働者供給事業として職業安定法44条違反となります。

ただし、厚生労働省は、出向は以下を目的としていることから、“業として”に当たらないとしています。

(1)関係会社における雇用機会の確保
(2)経営指導、技術指導の実施
(3)職業能力開発
(4)企業グループ内の人事交流

コロナ禍における雇用維持を目的とした出向は、(1)に準ずるものとして職業安定法違反にはなりません。

反対にいえば、当初から出向させる目的で雇い入れて出向させるような場合には、コロナ禍の雇用維持の目的の範疇を超えるとして違法になりますので注意しましょう。

出向のマッチング支援、助成金の活用

出向については、産業雇用安定センターで出向のマッチング支援等を行っていますので、こうした支援機関を活用してみましょう。

公益財団法人産業雇用安定センター

また、出向については、コロナ禍で一時的な縮小を余儀なくされた企業が出向により雇用を維持する場合、雇用安定助成金による助成金もありますので、こうした助成金も活用していきましょう。

産業雇用安定助成金

「休業」から出向による「従業員シェア」で従業員のスキルアップを

出向は、グループ会社や関係会社がある一定規模の企業では行われているものの、そうではない中小企業ではあまりなじみがないものと思われます。

コロナ禍においては休業措置をとる企業が多いですが、雇用調整だけではなく従業員のスキルアップとしての効果もある出向による従業員シェアも積極的に活用していきましょう。

【参考】
『労働法』 / 菅野和夫(有斐閣)
在籍型出向“基本がわかる”ハンドブック』 / 厚生労働省

* asaya / PIXTA(ピクスタ)