労働実務事例
[ 質問 ]
フレックスタイム制では始業・終業の時刻を労働者が自由に決定できるわけですが、就業規則等に規定することによって、始業・終業時刻を繰上げ・繰下げることも可能と聞きました。定時からずれるという意味では似ていますが、その違いを教えてください。
山形・F社
[ お答え ]
労基法の労働時間の規制は「実労働時間」を対象としており、労働者の遅刻、早退などで現実に就労しなかった時間がある場合にはこれらを除いて通算し、法定労働時間(1週40時間、1日8時間)以内であれば時間外労働になりません。したがって、始業・終業時刻を繰上げ・繰下げても、結果的に法定労働時間を実労働時間が超えなければ割増賃金の支払いを要しません(昭29・12・1基発第6143号)。
労働者がこの繰上げ繰下げ措置に応ずる義務があるか否かは、就業規則などの定めによります。たとえば、「各日の始業・終業時刻および休憩時間は、職種(職場)ごとに勤務時間表で定める。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある」などという規定例が考えられます。
繰上げ・繰下げ制の出退勤時刻は、一律に決めたり、労働者ごとに決めることもできるでしょう。フレックス制とは異なり、会社により一方的に定められます。
始業・終業時刻が、定時から変更されるという点ではご質問にある「繰上げ・繰下げ」制度と「フレックスタイム制」は確かに似かよった点があります。
しかし、最も異なる点は、時間外労働時間の把握の仕方が異なるということです。
繰上げ・繰下げ、あるいは短時間勤務制などでは、1日・1週間の単位で、時間外労働時間が確定します。一方、フレックスタイム制は、1日・1週間の単位ではなく、1カ月以内の一定期間で、時間外労働時間が確定します。フレックスタイム制は、1カ月の期間内で残業時間の調整が可能ということになります。
なお、始業・終業時刻の繰上げまた繰下げ制度は、次世代育成支援対策推進法に基づいて策定・届出することとなっている「一般事業主行動計画」に規定することが可能です。次世代法第13条に規定されている次世代認定マークを受けるためには、規定の有無にかかわらず、始業・終業時間の繰上げ・繰下げなどを含めた「3歳から小学校に入学するまでの子を持つ従業員を対象とする所定労働時間短縮等の措置」(育介法第24条第1項第3号)を講じなければなりません(次世代法施行規則第4条)。
平成21年4月1日からは改正された次世代法が施行されており、平成23年4月1日以降は、101人以上規模の事業主に対して一般事業主行動計画の策定・届出が義務づけられます。
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