労働実務事例
[ 質問 ]
当社は、遅刻の回数に応じて月給から減額する仕組みを採っています。先日、本人から「遅刻分は、すでに引かれているのだから、二重のカットはおかしい」という抗議を受けました。他社でも普通に実施されている処分だと思いますが、どちらか一方のみに限定しないと、二重処分になり違法なのでしょうか。
【富山・C社】
[ お答え ]
遅刻の場合、賃金カットするのが一般的ですが、「遅刻・早退の時間については賃金債権が生じないものであるから、その分の減給は労基法第91条(減給の制裁)の制限を受けない」(昭63・3・14基発第150号)と解されています。働いていない部分に関しては、「ノーワークノーペイ」の原則に照らして、賃金を支払わなくても違法ではありません。時間対応の賃金カットは、賃金計算方法の問題で、制裁に該当しません。
一方、「遅刻に対応する時間を超える減給」は制裁とみなされます(前掲通達)。労基法第91条により、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定されています。
実際に労務の提供がなされ、受けるべき賃金が定まっているのに、その一部を支払わないのは、賃金の全額払いの原則に反します(労基法第24条)。ノーワークノーペイの原則を超えて減給しても罰せられないのは、制裁として実施するからです。
たとえば、就業規則中に30分単位において30分に満たない遅刻、早退の時間を常に切り上げる趣旨の規定をした場合には、それは労基法第91条の減給の制裁として取り扱わねばならないし、かつ就業規則中に制裁である旨を明らかにする方法が適当(昭26・2・10基収第4214号)と考えられます。
月給ではなく賞与の査定に反映させる手もありますが、賞与は、何時間・何日の労務を提供すれば、それに応じて賃金債権が確定するという性質のものではありません。「賞与とは、定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」(昭22・9・13基発第27号)をいいます。遅刻分も含め査定を実施し、賃金規定に従って計算した後、賞与額が確定します。勤務評価によって賞与の額を決定することは可能で、減給の制裁には該当しないと解されます。もちろん、減給の制裁として、賞与から一定額を差し引くことも可能です。この場合は、労基法第91条の制約を受け、賞与の総額の10分の1を超えてはならないことになります。
ご質問のケースでは、時間対応で賃金をカットし、さらに賞与をマイナス査定しても、二重処分には当たりません。
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