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わかっちゃう! 知的財産用語 No.129
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こんにちは! わかっちゃう弁理士 西川幸慶です。
☆ 本日の知的財産用語
[
先使用権(せんしようけん)]
先使用による通常実施権のことです。
そして、「先使用による通常実施権」とは、
他人の
特許権に係る発明が
特許出願される以前から、同じ発明を使った事
業、又は事業の準備をしていた者に対して、所定の条件のもとで与えられる
無償の実施権のことです。
(1)
特許権は独占権であり、
特許を受けた発明(
特許発明)については、
原則として
特許権者、又は
特許権者から許諾を受けた実施権者しか実施
(製造,販売等)することができません。
(例外もありますが、話しが複雑になるので詳述は省きます。)
特許法では、先願主義(「早く出願した人の勝ち」という考え方)の下、
発明を最初に出願した者に対して
特許権を与えます。
そうすると、その発明が
特許になれば、その出願前から自らその発明を考
えて実施している者も、
特許権者の許諾無しでは事業を継続できなくなって
しまいます。
しかしながら、独自に発明を完成させて、他人の
特許出願前から事業やそ
の準備をしている者が、その後に出願された他人の
特許権によって事業の継
続ができなくというのは不合理であり、産業政策上も好ましくありません。
そこで、
特許法では両者の公平を考慮して、出願前から発明を使用してい
る者に対して所定条件下で
先使用権を認めて、その発明を使った事業の継続
できるようにしています。
(2)
先使用権が認められるための条件
実際には色々な要件を具体的に検討しなくてはならず判断が難しいのです
が、基本的なことだけ説明します。
[ (A) 使用している発明について ]
「
特許出願に係る発明の内容を知らないで自らした発明」
又は
「
特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得
した発明」
であること必要があります。
つまり、他人の
特許出願に係る発明とは別に発明したことが求められます。
ですから、
特許出願人の発明を知って、その出願前に使用をはじめたよう
な場合は該当しません。
[ (B) 使用について]
特許出願された際に、日本国内において、その発明を使った「事業」また
は「事業の準備」をしていること。
外国だけで事業をしていて、日本国内で事業やその準備をしていない場合
は、「日本国内」という条件を満たさないので
先使用権が認められません。
現実には「事業の準備」に該当するかどうかの判断は微妙であることも多
く、過去にも裁判で争われた例がいくつも有ります。
(3)
先使用権が認められると、
先使用権者は、実施又は準備している発明 及び事業の範囲内において、
その
特許発明を「無償」で実施することができます。
この「実施又は準備している発明の範囲内」 や 「事業の範囲内」 と
いうのも当事者間で考えている「範囲」に差が生じることがあり、過去にも
裁判で争われた例がいくつも有ります。
☆ ☆
[関連事項と経験談]
(1) 実用新案権や
意匠権についても、同様の
先使用権の制度があります。
商標権についての
先使用権もあるのですが、これは少し性質が異なります
ので、また別の機会に説明させていただく予定です。
(2)
先使用権を主張するのは、
特許権者から権利行使されたとき、具体的に
は「
差止請求」や「
損害賠償請求」を求める訴訟や、その前段階としての
警告があったときが殆どです。
抗弁(原告の主張に対する反論)として
先使用権の存在を主張して認めら
れれば、「差止」や「
損害賠償」を回避できるからです。
(3)
先使用権を主張する場合は、「先使用」の事実を証明する必要がありま
すが、立証するのは、実際にはなかなか難しいです。
先使用を立証するための証拠としては、「研究開発ノート」,「技術成果
報告書」,「事業計画書」,「
設計図」,「仕様書」,「見積書」,「納品
書」,「カタログ」,「サンプル」,「製品」等がありますが、これら一連
の資料を、日付がわかる状態で保管しておくことが大切です。
ひとつの資料だけでは認められにくいので、開発中,発明の完成,実施の
準備,実施という一連の流れがわかる複数の証拠が有ることが望ましいので
す。
(4)
特許庁から
「
先使用権制度の円滑な活用に向けて
― 戦略的なノウハウ管理のために」
http://tinyurl.com/gvxf9
という、よくまとまった書籍が出ています。(出版社:商事法務)
制度の詳しい説明と共に、書類作成の手引きや参考となる事例や判決例も
掲載されていますので、実務者は手元に置いておいて損はないと思います。
(5) 最近では先使用を立証するための証拠として公証制度を利用した手法等
も用いられているようです。
詳しいことは
特許庁のホームページか、上記の書籍
「
先使用権制度の円滑な活用に向けて」
http://tinyurl.com/gvxf9 を参
照されるとよいと思います。
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【 最近買った本 】
私が最近買った本の中から、皆さんが興味あるかもしれないと思う本を
紹介しています。
(1) 「地ブランド 日本を救う地域ブランド論」
http://tinyurl.com/jqrr4
(地域を活性化させる地域ブランドの考え方について、わかりやすく説明。)
(2) 「仏の教え ビーイング・ピース」
http://tinyurl.com/jhnue
(ベトナム出身の僧侶が全て繋がりや平和について語っています。)
(3) 「自分をもっと深く掘れ!」(新渡戸稲造)
http://tinyurl.com/z6vjt
(古い本ですが、「今でも」というより「今こそ」読みたい本です。)
(4) 「D・カーネギーの自分を磨く本」
http://tinyurl.com/kort3
(あのカーネギーが語る成功者達のエピソード。色々得るものがありました)
(5) 「あとからくる君たちへ伝えたいこと」(鍵山秀三郎)
http://tinyurl.com/fyz9s
(10台の青少年に向けたメッセージですが、大人にもお勧め。もっと早く
読みたかった。)
* リンク先は通販書店のアマゾンさんのサイトです。詳細や書評は そち
らをご覧下さい。そちらで購入もできます。
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「わかっちゃう! 知的財産用語」
発行 西川
特許事務所 (
http://www.jpat.net/ )
兵庫県西宮市東山台3丁目9-17
電話 0797-61-1841、 FAX 0797-61-1821
発行人 弁理士 西川 幸慶
pat@jpat.net
ご意見、ご感想 お待ちしてます。
感想メールをいただくと嬉しくて やる気が出るので、よろしくお願い
します。(「読んでるよ」の一言だけでも たいへん勇気づけられます。)
* このメールに返信いただけば、西川に届きます。
☆「メール相談」
http://www.jpat.net/sodan.htm は「有料」ですが、
出願等のご依頼に伴うご相談は「無料」で承っております。
☆ 恥ずかしながら・・
私の日記
http://plaza.rakuten.co.jp/pinnote/
(書き込みも歓迎)
☆ ☆
掲載された記事の内容を許可なく転載することを禁じます。
但し、署名を含めて全文転載でしたら転載,転送していただいて結構です。
(C) 2006 Nishikawa Yukiyoshi
『まぐまぐ』 を 使ってお届けしています。
本マガジンの解除は
http://www.mag2.com/m/0000098536.htm から
お願いします。
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[編集後記]
1年程前に あるCDを衝動買いしました。
ジャケットの写真と説明を見て何となく良さそうなので買ってしまったので
す。
でも、聴いてみると あまり感心しませんでした。
数回聴いたのですが、
「つまらない。買って損した。」
と思って、CDを保管している「引き出し」の奥にしまい込んでいました。
先日、掃除をしていてそのCDを見つけました。
「あー、こんなCDも持っていたな~。勿体ないので久しぶりに聞いてみ
ようかな」
と思って聞くと、凄く良いのです。気に入ったので 最近は 毎日 聞いて
います。
どうしてなのでしょうね?
まさか、引き出しの中で「熟成」されたわけではないでしょうし、1年間
で音楽の好みが大きく変わってしまったのでしょうか? 不思議な感じが
します。
「昔はビールが嫌いで、今は大好き!」
という経験は有りますが、味覚だけでなく 他の好みも日々変化しているの
かもしれないですね。
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わかっちゃう! 知的財産用語 No.129
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こんにちは! わかっちゃう弁理士 西川幸慶です。
☆ 本日の知的財産用語
[先使用権(せんしようけん)]
先使用による通常実施権のことです。
そして、「先使用による通常実施権」とは、
他人の特許権に係る発明が特許出願される以前から、同じ発明を使った事
業、又は事業の準備をしていた者に対して、所定の条件のもとで与えられる
無償の実施権のことです。
(1) 特許権は独占権であり、特許を受けた発明(特許発明)については、
原則として特許権者、又は特許権者から許諾を受けた実施権者しか実施
(製造,販売等)することができません。
(例外もありますが、話しが複雑になるので詳述は省きます。)
特許法では、先願主義(「早く出願した人の勝ち」という考え方)の下、
発明を最初に出願した者に対して特許権を与えます。
そうすると、その発明が特許になれば、その出願前から自らその発明を考
えて実施している者も、特許権者の許諾無しでは事業を継続できなくなって
しまいます。
しかしながら、独自に発明を完成させて、他人の特許出願前から事業やそ
の準備をしている者が、その後に出願された他人の特許権によって事業の継
続ができなくというのは不合理であり、産業政策上も好ましくありません。
そこで、特許法では両者の公平を考慮して、出願前から発明を使用してい
る者に対して所定条件下で先使用権を認めて、その発明を使った事業の継続
できるようにしています。
(2)先使用権が認められるための条件
実際には色々な要件を具体的に検討しなくてはならず判断が難しいのです
が、基本的なことだけ説明します。
[ (A) 使用している発明について ]
「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らした発明」
又は
「特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得
した発明」
であること必要があります。
つまり、他人の特許出願に係る発明とは別に発明したことが求められます。
ですから、特許出願人の発明を知って、その出願前に使用をはじめたよう
な場合は該当しません。
[ (B) 使用について]
特許出願された際に、日本国内において、その発明を使った「事業」また
は「事業の準備」をしていること。
外国だけで事業をしていて、日本国内で事業やその準備をしていない場合
は、「日本国内」という条件を満たさないので先使用権が認められません。
現実には「事業の準備」に該当するかどうかの判断は微妙であることも多
く、過去にも裁判で争われた例がいくつも有ります。
(3) 先使用権が認められると、
先使用権者は、実施又は準備している発明 及び事業の範囲内において、
その特許発明を「無償」で実施することができます。
この「実施又は準備している発明の範囲内」 や 「事業の範囲内」 と
いうのも当事者間で考えている「範囲」に差が生じることがあり、過去にも
裁判で争われた例がいくつも有ります。
☆ ☆
[関連事項と経験談]
(1) 実用新案権や意匠権についても、同様の先使用権の制度があります。
商標権についての先使用権もあるのですが、これは少し性質が異なります
ので、また別の機会に説明させていただく予定です。
(2) 先使用権を主張するのは、特許権者から権利行使されたとき、具体的に
は「差止請求」や「損害賠償請求」を求める訴訟や、その前段階としての
警告があったときが殆どです。
抗弁(原告の主張に対する反論)として先使用権の存在を主張して認めら
れれば、「差止」や「損害賠償」を回避できるからです。
(3) 先使用権を主張する場合は、「先使用」の事実を証明する必要がありま
すが、立証するのは、実際にはなかなか難しいです。
先使用を立証するための証拠としては、「研究開発ノート」,「技術成果
報告書」,「事業計画書」,「設計図」,「仕様書」,「見積書」,「納品
書」,「カタログ」,「サンプル」,「製品」等がありますが、これら一連
の資料を、日付がわかる状態で保管しておくことが大切です。
ひとつの資料だけでは認められにくいので、開発中,発明の完成,実施の
準備,実施という一連の流れがわかる複数の証拠が有ることが望ましいので
す。
(4)特許庁から
「先使用権制度の円滑な活用に向けて
― 戦略的なノウハウ管理のために」
http://tinyurl.com/gvxf9
という、よくまとまった書籍が出ています。(出版社:商事法務)
制度の詳しい説明と共に、書類作成の手引きや参考となる事例や判決例も
掲載されていますので、実務者は手元に置いておいて損はないと思います。
(5) 最近では先使用を立証するための証拠として公証制度を利用した手法等
も用いられているようです。
詳しいことは特許庁のホームページか、上記の書籍
「先使用権制度の円滑な活用に向けて」
http://tinyurl.com/gvxf9 を参
照されるとよいと思います。
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【 最近買った本 】
私が最近買った本の中から、皆さんが興味あるかもしれないと思う本を
紹介しています。
(1) 「地ブランド 日本を救う地域ブランド論」
http://tinyurl.com/jqrr4
(地域を活性化させる地域ブランドの考え方について、わかりやすく説明。)
(2) 「仏の教え ビーイング・ピース」
http://tinyurl.com/jhnue
(ベトナム出身の僧侶が全て繋がりや平和について語っています。)
(3) 「自分をもっと深く掘れ!」(新渡戸稲造)
http://tinyurl.com/z6vjt
(古い本ですが、「今でも」というより「今こそ」読みたい本です。)
(4) 「D・カーネギーの自分を磨く本」
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(あのカーネギーが語る成功者達のエピソード。色々得るものがありました)
(5) 「あとからくる君たちへ伝えたいこと」(鍵山秀三郎)
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「わかっちゃう! 知的財産用語」
発行 西川特許事務所 (
http://www.jpat.net/ )
兵庫県西宮市東山台3丁目9-17
電話 0797-61-1841、 FAX 0797-61-1821
発行人 弁理士 西川 幸慶
pat@jpat.net
ご意見、ご感想 お待ちしてます。
感想メールをいただくと嬉しくて やる気が出るので、よろしくお願い
します。(「読んでるよ」の一言だけでも たいへん勇気づけられます。)
* このメールに返信いただけば、西川に届きます。
☆「メール相談」
http://www.jpat.net/sodan.htm は「有料」ですが、
出願等のご依頼に伴うご相談は「無料」で承っております。
☆ 恥ずかしながら・・
私の日記
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掲載された記事の内容を許可なく転載することを禁じます。
但し、署名を含めて全文転載でしたら転載,転送していただいて結構です。
(C) 2006 Nishikawa Yukiyoshi
『まぐまぐ』 を 使ってお届けしています。
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お願いします。
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[編集後記]
1年程前に あるCDを衝動買いしました。
ジャケットの写真と説明を見て何となく良さそうなので買ってしまったので
す。
でも、聴いてみると あまり感心しませんでした。
数回聴いたのですが、
「つまらない。買って損した。」
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先日、掃除をしていてそのCDを見つけました。
「あー、こんなCDも持っていたな~。勿体ないので久しぶりに聞いてみ
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と思って聞くと、凄く良いのです。気に入ったので 最近は 毎日 聞いて
います。
どうしてなのでしょうね?
まさか、引き出しの中で「熟成」されたわけではないでしょうし、1年間
で音楽の好みが大きく変わってしまったのでしょうか? 不思議な感じが
します。
「昔はビールが嫌いで、今は大好き!」
という経験は有りますが、味覚だけでなく 他の好みも日々変化しているの
かもしれないですね。