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机に突っ伏している女性

有望な社員が燃え尽き症候群に!? 企業側に求められる理想的な対処法を解説

2024.06.24

ある日、優秀で将来を期待していた社員から、突然「辞めます」と言われて、驚いた経験はありませんか? もしかしたら、それは燃え尽き症候群かもしれません。この問題を放っておくと、組織全体の士気の低下や離職率の増加、労務リスクにつながるでしょう。この記事では、燃え尽き症候群(バーンアウト)の予防について理解を深め、健康的な労働環境を築くために企業側ができることを解説します。

燃え尽き症候群(バーンアウト)とは

燃え尽き症候群(バーンアウト)は、心理学的には「極度の身体的疲労と感情の枯渇を示す症候群」と定義され、「仕事を通じて心身ともに消耗した状態(情緒的消耗感)」「クライアントに対する無情な対応(脱人格化)」「仕事に対する達成感の低下(個人的達成感の低下)」という、3つの要素があるとされています。バーンアウト研究の第一人者の書籍によると、“仕事に対する「期待」と「現実」のギャップに引きずり込まれること”と定義されており、中には思い当たる人もいるかもしれません。

教職・医療職・介護職など、いわゆる“対人援助職”に従事する人の燃え尽き症候群については社会課題にもなっています。営利企業においても、特にお客様やクライアントに向き合う仕事では、先方のニーズを最優先にして応えようと頑張り続けた結果、燃え尽き症候群に至る場合もあるでしょう。
【参考】Maslach, C., Jackson, S. E., & Leiter, M. P. (1997). Maslach burnout inventory. Scarecrow Education.
【参考】ジョナサン・マレシック著、 吉嶺英美訳(2023)『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか : バーンアウト文化を終わらせるためにできること』/青土社

【こちらもおすすめ】過剰なクライアントファーストが組織を苦しめる…影響と運用方法を解説

燃え尽き症候群の徴候や症状のサイン

燃え尽き(バーンアウト)の測定方法はいくつかありますが、よく見られる徴候としては以下のようなものがあります。

  • 「こんな仕事、もうやめたい」と思うことがある
  • 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある
  • 体も気持ちも疲れはてたと思うことがある
  • 自分の仕事がつまらなく思えて仕方ないことがある
  • 今の仕事は、自分にとってあまり意味がないと思うことがある

このような徴候が見られる場合は、有給休暇をとるなどして仕事から離れる時間を意識的にとる必要があります。
【参考】久保真人. (2007). バーンアウト (燃え尽き症候群). 日本労働研究雑誌558, 54-64.

燃え尽き症候群になりやすい人の特徴

理想主義的傾向が強い人や、仕事において心理的欲求が満たされることを求める人が、燃え尽き症候群になりやすいといわれています。理想とする状態に到達したい人、あるいは仕事によって自分の存在価値を証明しようとする人は、ついつい頑張りすぎてしまうのです。

もともとは理想追求のため、あるいは誰かに喜んでもらうために就いた仕事でも、「忙しすぎて思い描いていた仕事ができない」「逆に相手からネガティブな感情をぶつけられた」などの出来事が積み重なり、燃え尽きに至ってしまうこともあります。

また、「周りから『仕事ができない』と思われるのではないか」という不安が強い人も注意が必要です。なかなか周囲に相談できず仕事を抱え込んでしまう、ということがあります。このような場合には、業務量を把握している直属の上司が相談にのり、サポートしたり仕事を引き取ったりする必要があるかもしれません。

燃え尽き症候群が起こりやすい企業の特徴

燃え尽き症候群には、業務負荷・コントロール度・報酬・コミュニティ・公平感・価値が影響するといわれています。ここから、燃え尽き症候群が起こりやすい企業の特徴が見えてくるでしょう。
【参考】久保真人. (2007). バーンアウト (燃え尽き症候群). 日本労働研究雑誌558, 54-64.
【参考】Maslach C, Schaufeli WB, Leiter MP. Job burnout. Annu Rev Psychol 2001; 52:397-422.

業務量・時間外労働が多い

仕事の負荷を示す客観的指標として、労働時間があります。働き過ぎは心身の消耗につながるうえに、忙しすぎて仕事の質が落ちてしまうようなことがあれば、理想の働き方がある人にとっては大きなストレスになるでしょう。また、時間外労働が月60時間を超えるようであれば、場合によっては労働災害の認定などの労務リスクや、レピュテーションリスクを抱える恐れもあります。

業務のコントロールがしにくく、報酬面でも報われない

業務量が多くても、自分で働き方をコントロールできる場合や、報酬面で報われる場合は、燃え尽きは起こりにくいものです。時間外に対応を求めていながら、残業代が支払われていないという事態はありませんか? 燃え尽き症候群のリスクを高めるだけでなく、労務リスクもあるので、働いてもらった分の報酬は支払いましょう。

最近はフレックス勤務や在宅勤務など、柔軟な働き方を求める人が増えているため、燃え尽き症候群予防のために制度設計で工夫する企業が増えるかもしれません。

仕事を優先にするべき、という文化がある

人生には仕事以外の大切なことがたくさんあります。家族との時間、趣味の時間、仕事以外の自己研鑽など、一人ひとりが自分の価値感に沿った生き方をしたいと望んでいるでしょう。それが叶えられない、あるいは仕事以外の大切なものが少なく仕事で価値を追い求めすぎると、燃え尽きにつながります。

「業務外の時間も必要があれば対応する」「仕事を優先させてプライベートを後回しにする」といったことが求められる環境では、燃え尽きのリスクは上がるでしょう。

燃え尽き症候群を予防するために企業ができることとは?

特に営利企業においては、ビジネス的成功・価値の創造・顧客へのサービスの提供が重視されますが、そのためには働く人が自分で自分の、あるいはお互いにケアできる環境が必要です。職場が仕事をするうえで最適な場所になるための「人員配置」「働きやすさの工夫」「社員同士が大変さを吐き出せる場所や時間の確保」を心がけましょう。

上司・上長との定期的な1on1は、行いやすい予防策の一つです。また、先に述べたように、労働時間に見合った適切な業務量にすること、不公平感の少ない評価・報酬制度であることも重要。長時間労働によるメンタル不調を発生しないようにすることは、燃え尽き予防のためだけでなく、企業にとってもコンプライアンス違反やレピュテーションリスクを防ぐ重要なポイントといえるでしょう。

燃え尽き症候群は正式な診断名ではありませんが、気分の落ち込みや睡眠障害、食欲の変化も伴うと、“適応障害”や“うつ病”といった診断名がつく可能性があります。その際、長時間労働が背景にあると、労働災害として認定されることもあるでしょう。

【こちらもおすすめ】社員のメンタル不調…見直すべき?社内制度策定のポイントを産業医が解説

燃え尽き症候群の予防・健康的な労働環境の構築に取り組む中小企業の事例

A社では、ハードな働き方から、30代40代の中核的な役割を担う社員の退職が相次ぎました。理由は「この働き方をずっと続けていく自信がない」というもの。すぐに転職ではなく、「仕事に疲れたのでしばらくゆっくりしたい」という社員もいました。

ついに人手が足りなくなり、採用を進めますが、なかなか適任の人材は採用できません。また、採用できてもすぐに戦力になるわけではなく、教育に半年以上かかってしまいます。売上は落ち、経営上の課題にもなりました。

そこで、一時的な売り上げの低下は仕方がないと腹をくくり、柔軟な働き方が叶う制度を設計。自社業務だけに偏らないよう、時短勤務や副業・ボランティアの制度を利用しやすくしました。また、休日に顧客から入る連絡に対応する当番を決め、当番以外の日は仕事関係の連絡に一切応じなくてもよいというルールに。A社では、離職防止と社員の定着を目的として、働きやすい環境を目指すようになったのです。

おわりに

今回は、燃え尽き症候群(バーンアウト)を起こしやすい職場環境の特徴と、対策などについて説明しました。燃え尽き予防のために、「これさえすればOK」という一つの回答はありません。自社の働く環境の中でリスクになる要因を検討し、実行できる予防策を考えましょう。職場の文化やルールを変えるのは簡単なことではありませんが、長期的に見れば離職率の低下・人手不足の緩和・企業イメージの向上などにつながるでしょう。

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