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メンタルが弱い

「若者はメンタルが弱い」とぼやく前に。多様な人材が働きやすい組織をつくる方法

2022.12.06

最近、経営層や企業の人事部、管理職の方から、「若手に業務の指導をしたら、ハラスメントだと言われてしまった」「ミスを指摘したら、翌日から会社に来なくなってしまった」「採用後に、うつ病で通院中ということがわかった。どのような配慮が必要か?」という相談をよく受けます。このような相談者の方々からは、「最近の若者はメンタルが弱くなった」というご意見をお聞きすることもあるのですが、一概にはそうとは言えません。若者のメンタルが年々弱くなっているのではなく、メンタルヘルスの課題が顕在化し、さまざまなメンタルの在り方を受容する社会へと変化しているのです。

また、働き方への価値観や人生の優先順位によって、仕事に対する姿勢やモチベーションは変わってくるものです。異なる価値観や優先順位を持つ人を受けいれ、活躍してもらえる土台をつくるのが、経営者や先輩社員の役割です。いろいろな価値観をもつ従業員のニーズを知り、お互いに気持ちよく働ける風土をつくるためにできることについて考えてみましょう。

コミュニケーションの取り方の工夫をしよう

ハラスメントという言葉が一般的になり、むしろ「ハラスメントだと言われるのが怖くて指導ができない」という上司の方のお悩みも聞きます。ただ、ハラスメントと業務上の指導は分けて考えることが大事であり、これは指導される側の理解も必要です。2022年4月1日より中小企業にもハラスメント対策が義務付けられましたので、従業員向けにハラスメント研修などを行い、ハラスメントにまつわるコミュニケーション不全を防ぎましょう。

また、ハラスメントとは言えない言動であっても、強い口調で注意を受けたり、自分を否定されたりすると、フリーズしてしまって、話が入ってこなくなるという現象が起きる方もいらっしゃいます。できていないことを分かってもらい、改善につなげるための指導なのですから、どのように伝えたら相手が理解しやすいか、行動を変えられるかという視点が重要です。

よく言われるのが、“サンドイッチ話法“です。これは、「相手の良いところを伝える→本題→期待を伝える」というふうに、ネガティブなフィードバックをポジティブな言葉の間に挟んで伝える方法です。心理的な壁をつくらせず、期待の言葉で締めくくることで、「叱られた」という印象になるコミュニケーションを防ぎます。

【こちらの記事も】パワハラと言われそうで指導できない…まずはここから「中小企業向けハラスメント対策」4つ

メンタル不調の相談のハードルを下げよう

「いきなり会社に来ない、すぐに辞めたいと言う若者が増えている」という話を聞きますが、従業員側の話を聞いてみると、“いきなり”ではなく、徐々に会社での居心地が悪くなっていたり、メンタル不調が悪化していたりという場合がほとんどです。どのようにすれば、早めにメンタル不調に気づいて、手当てすることができるのでしょうか? そして、メンタルクリニックに通院中の従業員に対しては、どのような配慮が必要なのでしょうか?

昔に比べてメンタルクリニックへの受診への抵抗が減り、不眠・不安などの症状について通院している方も多くいらっしゃいます。これは、良い傾向だと思います。不調を感じるときに、早めに通院できると、長期の休職や離職を予防することができるからです。受診ができずにある程度症状が重くなってしまうと、良くなるまでに時間がかかる、良くなったあとも元のようには働けないということが起こります。

また、通院中であることについて、ご本人から申告があった場合には、産業保健師や産業医といった産業保健職に面談をしてもらうことをおすすめします。業務上の必要な配慮について、専門家の視点から意見をもらえるでしょう。「気軽に産業医面談を」というのは専属産業医がいない会社では難しいことが多いですが、そのような時に頼れるのが、産業保健師です。いわゆる保健室の先生のような立ち位置で、相談に乗ってもらうことができます。医療職には守秘義務がありますし、症状によっては医療機関の紹介なども可能ですので、安全配慮義務を遂行するためにもおすすめの方法です。

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人を支える「仕組み」をつくろう

多様な人材が働きやすい会社の風土をつくるには、現場の個人の努力にまかせるのではなく、仕組みとして取り入れることをおすすめします。

ツール①メンター制度

業務上の上長とは別に、年齢や状況が近い先輩社員がメンターとして相談に乗ります。業務の困りごと、人間関係の悩み、キャリアの悩みなどを雑談ベースで人事評価を気にせずに相談できる場をつくります。相談したことは、人事や上長には伝わらないという安心を確保することが大切です。

そうはいっても、社内のメンターの場合「人事に伝わるのでは」「キャリアに不利になるのでは」という心配は払しょくできませんので、場合によっては、社外のメンターを利用する場合もあります。社内の利害関係と関係がないところで相談できますし、キャリアについてさらに客観的な意見をもらえることがあるでしょう。

ツール②外部相談窓口の確保

社内メンターや産業保健職に相談するときに、「相談した内容が人事や上司に伝わるのでは」という不安を持つ方もいらっしゃいます。相談内容も相談したこと自体も、会社には伝わらない相談先として、外部相談窓口があります。ハラスメント対策の一つとして導入する会社が増えています。社外メンターとの違いは、専門的な視点からのアドバイスをもらえることです。

会社や産業医との連携が必要な場合は、通常の相談は会社に開示しないけれども、必要に応じて相談者の方の同意を得て産業医や人事と連携するというシステムになっている外部相談窓口もあります。ニーズに合わせて探してみましょう。

ツール③働く環境の工夫

光や音への過敏さがあったり、他の人が近くにいることが気になったりして、「広いオフィスで仕事をすると集中力が続かない、疲れてしまう」という方もいます。最近は、オンライン会議用のブースを社内に置く企業が増えていますが、オンライン会議用だけでなく、個室の作業スペースがあったり、執務スペースをフリーアドレスにして落ち着ける場所を選べるようにしたりするととても良いでしょう。スペース的に実現が難しい場合は、耳栓やイヤマフ、サングラスの着用をすることで楽に働ける方もいらっしゃいますので、合理的配慮として許可を出せるとよいのではないでしょうか。

【こちらの記事も】レイアウトを変えるだけ!コミュニケーション活発化を目指すオフィスづくりのポイント

まとめ

人材不足の世の中で、いろんな価値観を持つ人々が気持ちよく働けるように、会社が変わっていくことの重要性が増しています。会社が価値観を押し付けたり、ルールで縛ったりするのではなく、多様な価値観や働き方を認めることで、みんなが働きやすくなり、人材が定着し、ひいては業績アップにもつながります。誰にでも弱い面はあります。感じ方が自分と違う人がいるということを理解しようとする姿勢が大事です。

一人一人の従業員と真剣に向き合い、病気や障がいなどの事情があっても、柔軟に働ける組織にすることは、全ての従業員からの信頼を得ることにつながります。そのような働き方を実現するために、必要な専門家とつながり、サポートを受けることが大切です。多様な価値観や個性を生かして働いてもらえる、会社の風土づくりを目指しましょう。

【参考】「あかるい職場応援団」 / 厚生労働省
佐伯夕利子『教えないスキル~ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術~』小学館(小学館新書)、2021年.

*Blue flash、PanKR、Ushico、polkadot、Ran&Ran / PIXTA(ピクスタ)

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