
結果につながりやすい提案書とは?基本的な構成や書き方を解説
提案書は、課題に対してアイデアや解決策を効果的に伝えるための重要なツールです。しかし、多くの人が提案書の作成に苦労しています。本記事では、印象に残る提案書の書き方や、避けるべきミスについて詳しく解説します。これらのポイントを押さえることで、提案が採用される確率を大きく高めることができるでしょう。
提案書とは

出典: 経営ノウハウの泉
提案書とは、顧客や自社の課題に対して、問題解決や価値提供を目的とした資料のことです。顧客のニーズや課題を的確に捉え、それに対する具体的な解決策を提案することで、ビジネスチャンスを創出する役割を果たします。効果的な提案書は、顧客の信頼を獲得し、ビジネスの成功を後押しするでしょう。
提案書と企画書の違い
提案書と企画書は、目的や対象が異なります。提案書は主に、外部の顧客や取引先に向けて作成され、具体的な課題解決策や商品・サービスの提案を行います。一方、企画書は社内向けに作成され、新規事業や施策の計画を示すものです。提案書は顧客のニーズに応える具体的な内容が求められますが、企画書は会社の方針や戦略に沿った内容が重要です。また、提案書はより説得力のある表現や数値データが必要ですが、企画書は社内の共通認識を得るための情報が中心となります。このように、提案書は顧客向けの資料、企画書は社内向けの資料といえるでしょう。
提案書は課題解決を提案する資料
提案書は、単なる情報の羅列ではなく、顧客のニーズを深く理解し、解決策を提示することが求められます。効果的な提案書は、顧客の現状分析から始まり、課題の特定、解決策の提示、そして期待される成果まで、論理的に構成されています。顧客にとって価値ある未来を想像させることで、ビジネスチャンスを掴むことができるでしょう。
提案書の書き方5ステップ
提案書を作った経験がない場合、どこから作成すればよいかなかなか分かりにくいでしょう。ここからは、提案書作成についてステップごとに詳しく解説します。
1, 目的を明確にする
最初に、“提案書の目的”を明確にしておきましょう。多くの場合、提案書の目的は案件の受注だと思いますが、案件の受注にも以下のようにさまざまなケースがあります。
・新規の顧客から案件を受注したい
・すでに取引がある顧客の単価を上げたい
・クロスセルにつなげたい
目的によって提案書の書き方も変わってくるため、最終的な提案のゴールが何なのかは最初に明確化しておきましょう。
2, 相手のニーズや背景を理解する
提案書の目的が決まったら、その目的を果たすために顧客のニーズや背景を調査します。顧客の業界動向、競合他社の状況、過去の取引履歴などを事前にリサーチし、相手が抱える課題や目標を把握しましょう。直接ヒアリングを行い、相手の本音や隠れたニーズを引き出すことも効果的です。
これらの情報をもとに、相手の立場に立って考え、最適な提案内容を検討します。相手のニーズや背景を理解することで、的確な解決策を提示し、顧客満足度の高い提案書を作成することができます。
3, 簡潔に分かりやすく書く
提案書は簡潔さと分かりやすさが重要です。顧客が読むのにストレスを感じると心証が悪化し、機会損失につながる可能性があります。専門用語や難解な表現は避け、読み手の立場に立って平易な言葉で説明しましょう。
4, 図表やグラフを使って伝える
図表やグラフを効果的に活用することで、提案内容をより分かりやすく伝えることができます。複雑なデータや概念を視覚化することで、顧客の理解を深めることができます。たとえば、売上推移をグラフで示したり、プロセスをフローチャートで表現したりすることで、文章だけでは伝わりにくい情報も一目で把握しやすくなるでしょう。
5, データや実績を使って信頼性を高める
データや実績を活用することで、提案書の信頼性を大幅に高められます。具体的な数字や過去の成功事例を盛り込むことで、顧客に対して説得力のある提案を行うことができます。たとえば、類似のプロジェクトで達成した成果や、業界平均と比較した自社の優位性を示すデータなどが効果的です。
提案書を書く際の基本項目6つ
提案書を作成する際に押さえるべき基本項目を6つご紹介します。これらの要素を含めることで、顧客に対して説得力のある提案書を作成できます。以下の項目を順に見ていきましょう。
これらの項目を適切に組み込むことで、顧客のニーズに応える提案書を作成することができます。
1, 概要
提案書の概要は、提案全体の要点を簡潔にまとめた部分です。顧客が最初に目にする重要なセクションであり、提案の目的や主要なポイントを明確に伝える必要があります。ここでは、提案の背景、課題、解決策、期待される効果などを簡潔に説明します。
2, 課題の提示
課題の提示では、顧客が直面している問題や改善すべき点を明確に示します。ここでは、顧客のビジネスや業界に関する深い理解を示しつつ、具体的な数字やデータを用いて課題を説明することが重要です。たとえば、「売上が前年比10%減少している」や「顧客満足度が業界平均を下回っている」というような具体的な問題点を挙げます。
3, 提案内容
提案内容は、顧客の課題に対する具体的な解決策を示す部分です。ここでは、提供するサービスや製品の詳細、実施方法、期待される成果などを具体的に説明します。顧客のニーズに合わせてカスタマイズされた内容を提示し、なぜその提案が最適なのかを論理的に説明することが大切です。
4, メリットと効果
メリットと効果の記載は、顧客にとって最も注視している項目といえます。ここでは、提案内容が実現した場合に得られる具体的な利点や成果を明確に示します。数値化できるものは可能な限り数字で表現し、顧客にとってのメリットを分かりやすく説明します。
5, スケジュール
提案書におけるスケジュールの記載は、プロジェクトの実行可能性と信頼性を示す必要不可欠な要素です。具体的な日程や期間、マイルストーンを明確に示すことで、顧客に安心感を与えます。通常、ガントチャートなどの視覚的な表現を用いて、各フェーズの開始日と終了日、主要なイベントや成果物の納期を明示します。
6, 料金
料金セクションも、受注の可否に直結する非常に重要な部分です。料金が高額な場合は、購入を妨げる障壁となります。単に数字を並べるだけでなく、競合他社との比較や、費用対効果を示すことで、価格に見合ったベネフィットが得られることを合理的に説明しましょう。
印象がよい提案書の書き方7つ
顧客からの印象がよい提案書を書くポイントを、7つご紹介します。これらのポイントを押さえることで、顧客に響く魅力的な提案書を作成できるでしょう。
これらの要素を意識して提案書を作成することで、顧客の心に響く提案が可能になります。ここからは各項目について詳しく説明します。
1, 明確な目標が書かれている
印象のよい提案書の第一の特徴は、明確な目標が書かれていることです。顧客にとって、この提案書を読むと何が得られるのか、一目で分かるようにしましょう。具体的で測定可能な目標を設定し、それを達成するための方法を提示することで、顧客の興味を引き、提案内容の価値を理解してもらいやすくなります。
2, 顧客が共感できる課題が書かれている
印象のよい提案をするために、顧客が共感できる課題を設定しましょう。それには顧客に対して、丁寧なヒアリングとリサーチが必要です。顧客の抱える問題点や悩みを深く理解し、それを明確に資料に落とし込むことで、顧客の心に響く提案書となります。
3, 論理的な流れになっている
論理的な流れは、提案書の説得力を高めるでしょう。まず、現状の課題を明確に提示し、その課題に対する解決策を順序立てて説明します。次に、提案内容の具体的な実施方法や期待される効果を論理的に展開していきましょう。各セクション間のつながりを意識し、一貫性のある主張を展開することが大切です。
4, 具体的なデータがのっている
数値的なデータを提示することで、提案内容の信頼性と説得力が大幅に向上します。たとえば、「売上が向上する」という漠然とした表現ではなく、「過去の実績から平均20%の売上増加が見込まれる」といった具体的な数字を示すことが効果的です。
5, 具体的な行動計画が書かれている
行動計画が細かく書かれている提案書は、顧客に安心感を与えます。実現可能な手順やタイムラインを明確に示すことで、提案内容の解像度が高くなるからです。各段階での具体的なアクションや、達成すべきマイルストーンを明記することで、顧客は提案内容の進捗を容易に把握できます。
6, 費用対効果が明確に書かれている
費用対効果を明確に示すと、顧客の意思決定を後押ししやすくなります。具体的な数値や予測を用いて、投資に対するリターンを分かりやすく説明しましょう。類似事例や業界平均との比較を用いて、提案の優位性を強調することも有効です。費用対効果を明確に示すことで、顧客に提案の価値を理解してもらい、採用の可能性を高めることができます。
7, デザインが見やすい
提案書のデザインが見やすいことは、顧客の理解を促進し、好印象を与える重要な要素です。
・適切な余白を設けて読みやすさを確保する
・フォントの種類やサイズを統一する
・重要な情報を強調するために文字装飾を効果的に使用する
・図表やグラフを適切に配置する
・一貫したカラーパレットを使用して全体の統一感を出す
・ページ番号や見出しを適切に配置する
これらのデザイン要素を適切に組み合わせることで、顧客にとって読みやすく、印象に残る提案書を作成することができます。
印象が悪い提案書の書き方5つ
提案書は顧客の心を掴むための重要な文書ですが、逆効果になってしまう書き方もあります。ここでは、印象の悪い提案書の特徴を5つ紹介します。
ここからは各項目について詳しく解説します。
1, 顧客の課題をヒアリングできていない
十分なヒアリングや調査を行わずに提案書を作成してしまうと、顧客の真のニーズを捉えられず、的外れな内容になってしまいます。これは、提案を受ける側にとって「自分たちのことを理解していない」という印象を与え、信頼関係を損なう可能性があります。
2, 要点が分かりにくい
要点が分かりにくい提案書は、顧客の理解を妨げ、ビジネスチャンスを逃す原因となります。主な問題点は、情報の整理不足や論理的な構成の欠如です。たとえば、重要なポイントが散在していたり、冗長な説明が多すぎたりすると、読み手は核心を掴めません。顧客目線で考え、簡潔かつ明確な言葉で伝えることが重要です。
3, 行動計画がない
行動計画が欠如している提案書は、顧客に具体的な実行手順を示せないため、説得力に欠けます。顧客は提案内容をどのように実現するのか、明確なイメージを持てません。これにより、提案の実現可能性や効果に疑問を抱かせてしまいます。
4, コストと利益がはっきりしていない
コストと利益が明確でない提案書は、顧客の信頼を失う可能性が高くなります。具体的な数字や根拠が示されていないと、提案の実現可能性や効果に疑問が出てくるからです。また、投資に対するリターンが不明確だと、顧客は提案に魅力を感じません。
5, デザインが統一されていない
デザインの統一感がない提案書は、顧客に悪印象を与えかねません。フォントの種類やサイズ、色使い、レイアウトが一貫していないと、読みづらくなり内容の理解を妨げる可能性があります。また、統一感のないデザインは、提案内容を使い回されているような印象を与え、一貫性や信頼性に対する疑問を抱かせてしまいます。
提案書を書く際によくあるミス

出典: 経営ノウハウの泉
提案書を作成する際には、いくつかの落とし穴に注意が必要です。ここからは提案書によくあるミスについていくつか紹介します。
分かりにくい表現で書いてしまった
提案書を作成する際によくある失敗の一つが、分かりにくい表現を使ってしまうことです。専門用語や業界特有の言葉を多用したり、長文や複雑な文章構造を使ったりすると、読み手にとって理解が難しくなります。また、抽象的な表現や曖昧な言い回しも避けましょう。たとえば、「効果的な施策を実施します」という表現よりも、「売上を30%増加させる具体的な販促計画を実行します」のように、具体的で明確な表現を心がけてください。
情報を詰め込みすぎた
提案書に情報を詰め込みすぎると、かえって相手に伝わりにくくなってしまいます。重要なポイントが埋もれてしまい、読み手が何を理解すべきか分からなくなる恐れがあります。また、情報過多は読み手の集中力を低下させ、提案の本質を見失わせる可能性があります。顧客にとって本当に必要な情報に絞り、簡潔かつ明確に伝えることが大切です。
誤字や脱字だらけになってしまった
提案書における誤字や脱字は、顧客の信頼を損なう可能性があります。細心の注意を払って校正を行うことが不可欠ですが、一人だと限界があるかもしれません。ドラフトを書いた人とは異なる第三者にチェックしてもらうとよいでしょう。他にもMicrosoft Wordをはじめとした文章作成ソフトウェアの“読み上げ機能”を使って、音声で聞いてみるなどのチェック方法が効果的です。
デザインが垢抜けない
提案書は分かりやすいデザインで作成することが重要ですが、そのためには一定のセンスや方法論が求められます。そのため、デザインに慣れていない人が作成すると、素人感のあるデザインになってしまうことがあります。たとえば、以下のようなデザインが当てはまります。
・カラーに統一感がなく、カラフルすぎる
・文字装飾が派手すぎる
・段落の分け方、情報の区切り方が不自然
作成した提案書が当てはまっていないか、一度見直してみましょう。
提案書の書き方を理解してから作成しよう!
提案書は、ビジネスの成功に欠かせない書類です。その役割は、顧客のニーズに応え、課題解決を提案することで信頼を得てビジネスチャンスを創出することにあります。本記事では、提案書を効果的に作成するためのポイントを詳しく解説しました。
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