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なぜPDCAは回らない?中小企業のための効果的な実践法を解説

2024.02.27

「全社目標が社員一人ひとりの目標や行動計画に落とし込みができず目標が達成できない……」「PDCAを回しているつもりでも、会社が毎年同じような目標を立てて社員に押し付けているようになってしまっている……」そんな企業もあるのではないでしょうか。

今回、会社の目標としてのPDCAをうまく回していくためのポイントを解説します。

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PDCAとは

PDCAというと、多くの経営者の方は「そんなの知っているよ!」といいます。しかしその「知っているよ!」といった経営者の9割以上は「知っているが使えていない」というのが、経営コンサルタントとして現場で仕事をしている率直な感想です。

PDCAとは、

Plan:計画
Do:実行
Check:検証
Action:行動

という流れになります。多くの会社は新しい期になると事業計画を立て、売上目標を立てます(計画のPにあたります)。

仮に50億円の売上目標を立てたとして、結果が48億円だった場合はいかがでしょうか。

これは、あと少しでしたが目標は未達です。そしてまた翌期に「今期こそ頑張ろう!」と50億円という目標を立て、社員たちを鼓舞しようと躍起になっているのです。これでは何年たっても50億円以上の目標を達成することはできません。

本来、PDCAとは一周回すごとに螺旋階段のように上の段階へ上がっていくべきものですが、上記のような目標の立て方だとなかなか成長することはできません。

その理由は、何回計画を立てても、何年経営をしていても、ずっと計画(P)→実行(D)を繰り返しているだけになっており、いつまでたっても検証(C)に進んでいかないからです。

PDCAの最も重要な点は、実は計画どおりに結果を出すことではありません。「いかに検証(C)を濃く実施するか?」ということです。もし、計画や目標どおりにいかなかったとしても、それがなぜうまくいかなかったのかをしっかりと検証することが大切になります。

PDCAが回らない理由

「願望止まり」な計画はNG

では、なぜ多くの会社が計画(P)→実行(D)を繰り返すような学校の校庭トラック状態になっているのでしょうか。

理由は一つです。それは「計画(P)の立て方が間違っている」からです。よくお話する簡単な例として「ダイエット」を挙げます。

当たり前ですが「痩せたいんだよね!」といっている人はいつまでたっても痩せません。まずは何キロ痩せたいのかを具体的に決めなければなりません。たとえば、3キロ痩せようと決めたとします。そしたら、次は「いつまでに3キロ痩せるのか」を決める必要があります。それは、半年なのか、1年なのかその達成期間によって行うべき行動が決まってくるからです。

仮に半年で3キロ痩せようと決めたとしても、決めただけで自動的に体重が落ちていくことはありません。ぼんやりと「半年くらいで3キロ痩せたいな」という願望止まりで計画からは程遠い状態です。

目標の具体的な数値と期限が決まったら、それらを実現するために「行動計画」を立てる必要があります。半年間の行動計画では、「何から手をつけようか」という状態になってしまい行動は変わりません。まず半年間をさらに3か月ごとに区分して、さらにそれを1か月、1週間と区分して、最後には「今日という日に何をすべきか」を決める必要があります。

仮に毎日30分ウォーキングをしようと決めたとして、どれくらいのスピードで、どれくらいの心拍数をキープしながら行えばよいのでしょうか? ここまで決めてまず1週間継続しなければなりません。そして、1週間たったら、痩せるどころか体重が微増していたとなったらどうでしょうか? もしかしたら食事の変更や、カロリーや糖質をモニタリングする必要があるのかもしれません。

行動指標をつくることが、価値ある検証(C)を可能にする

実は半年で3キロ痩せたいという目標の裏にはこれだけの決めておくべき行動指標があるのです。これを筆者はKPIといっています。KPIはKey Performance Indicatorの略称で、日本語では重要業績評価指標といいます。

多くの会社は売上目標だけを掲げていたり、行動期限も四半期ごとになっていたりと、KPIが歯抜けのものになっていることが多いです。「自社の計画は本当に使いこなせる計画になっているか?」という点が非常に重要で、それが最も大事な検証(C)を行うときの肝になってくるのです。

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中小企業でPDCAをうまく回していくためのポイント

スモールステップで進める

いつまでに、誰が、何を行動するのかでKPIを立てたとして、多くの企業がつまずいているのがKPIの設定方法です。ここでいつも私がお話するのが有名な「公文式」の学習方法です。

5歳の子が小学校高学年の算数問題が解けてしまうように、年齢に関係なく習熟度でどんどん先のカリキュラムに進めることが特徴です。さらに驚くことは「授業」という先生が解き方などをまとめて教える場がないということです。なぜ、子どもたちは自分自身でプリントを進めていけるのか、それが「スモールステップ」という仕組みなのです。

スモールステップとは、初めから高い目標を設定するのではなく、目標を細分化し小さな目標の達成を積み重ねながら最終的な目標に近付いていくことを指します。

まずは鉛筆を持ち、迷路をやりながら鉛筆を使う練習をします。その後、数字が1~10までできるようになったら、それがワンセットで100までは進みません。計算という概念にいくまでに実は膨大なプリントのバリエーションがあるのです。ここがポイントで、取り組むプリントのステップをとても細かく設定しています。

子ども心に「前のプリントに似ているから、こうやったらあっているかな?」と考えて解けてしまうくらいの難易度の差なのです。1+1、1+2、1+3……をひたすらやったら、次のプリントは5+1、4+1、3+1……と大人からしたら「簡単すぎる!」と思うくらいです。毎日プリントをやらせる学習環境さえ親がしっかり確保し、見守ってあげれば、子どもたちは膨大なプリントをこなしながら、なんとなく次……なんとなく次……という形で習熟度を上げていけるのが公文式です。

実は企業のKPIもこのような形が理想的です。

企業がKPIを立てるときに意識したいこと

月100万円の売上目標をたてた社員がいるとします。しかし、目標数字だけを掲げていても、営業会議で上司に「未達だ!」と叱責されるだけになってしまい、次に生かすための振り返りや改善ができずに終わってしまいます。では、KPIを設定するときに「100万円の売上を達成するために飛び込み100件を毎月実施する」と決めたとするといかがでしょうか。それでもおそらく達成することは難しいでしょう。

KPIを設定するときには、以下の例のように細かく区切って考えることが有効です。

例)飛び込み→名刺交換→リピート訪問→アポイント商品説明→商談→見積もり→受注

業種によって異なりますが、取り組まなければならない業務は上記のように細かくステップが分かれています。これらがすべてKPIになっていくのです。

ただ、ここまで話すと「そんなに細かく決めてもどうせそのとおりに行かないから」という営業マンがでてきます。

冒頭でお伝えしたように、計画を立てることは、計画を達成するためではありません。達成できなかったときに、「どこのステップでつまずいているか」「どこの行動がボトルネックになっているか」を検証(C)するためにあるのです。売上目標100万円未達の営業マンが5人いたら、5人それぞれがどこでつまずいているのかは異なるのです。

PDCAを仕組み化していくために

PDCAの意義と、KPIを設定することの重要性についてお話してきましたが、最後に企業としてPDCAを仕組み化していく方法についてお伝えします。公文式の例のときに「親は子どもがプリントに取り組む環境を整えるだけでよい」といったように、企業はPDCAを毎週、毎月、毎日など定期的に確認できる場を設定するだけでよいのです。

日報、週報、毎月の営業会議など、それぞれでPDCAやKPIをモニタリングして明日、来週、来月の行動(A)を変化させる場をつくっていきます。

うまく業務が遂行できていない人は、「なぜできていないのか」「その業務の停滞や生産性の低下を招いている工程、箇所はいったいどんなところにあるのだろうか」ということについて、上司が一緒になって検証する時間を取ってみてください。

PDCAは多くの経営者が知っている「つもり」になっている手法です。シンプルでわかりやすい一方で、使いこなせていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。ぜひ、自社の計画とPDCAについて、今までに持っている前提の知識や思い込みをゼロにし、見直してみてください。

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*Mameraman, polkadot_photo, mojo cp / shutterstock