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隠れ残業・サービス残業は企業経営を蝕む!経営陣が見過ごせないリスクと対策

隠れ残業・サービス残業は企業経営を蝕む!経営陣が見過ごせないリスクと対策

2021.07.01

コロナ禍において、各企業の働き方は大きく変わりました。その中でも最たるものが“リモートワーク”といえるでしょう。

リモートワークは、政府が提唱する“働き方改革”における、働く時間や場所に柔軟性を持たせた勤務形態です。リモートワークを活用することで、密を避けた状況で社員を働かせることが実現しました。しかしその反面、経営者が社員の働く姿を直に見ることができないケースが増加するという問題も発生しています。また、社員側としても、生活の中で仕事とプライベートの区別がつけづらくなり、中には“隠れ残業”や“サービス残業”をする者がいるという話も入ってきています。

今回は、リモートワークの浸透で加速する可能性のある隠れ残業・サービス残業の実態や、それらを看過することで発生する経営リスクとデメリット、具体的な解決法について、順を追って説明をしていきましょう。

隠れ残業・サービス残業はなぜ起こる?

隠れ残業やサービス残業が発生し、それを企業側が見落とす原因はさまざまです。

残業=仕事熱心という社風

1990年代に「24時間働けますか」という歌詞フレーズが話題になったことからも分かるように、「働き方改革」以前の日本では身を粉にして働く社員が評価されてきました。

昨今では、長時間労働やサービス残業、過労死などが社会問題化したことで、適正な労働時間の管理や残業代の支払に関する規制が強化されてはいるものの、「こんなに短時間の業務で残業の申請をしたら、上司に嫌味を言われるのではないか」「このくらいの時間ならば残業代の申請は必要ないか」など、時間通りの残業の申請に関してためらいを持つ社員がいることも事実でしょう。

自己管理が難しい環境

在宅勤務をする場合、上司や同僚がいつ業務を開始したのかが分からないまま仕事を進めることもあるでしょう。逆に、自分が何時から何時まで仕事をしているのかを、自分以外の者は目視することができません。

また、オフィス以外の場所で勤務をする場合、社員は会社特有の“仕事をする雰囲気”を感じ取ることができないため、自己管理が非常に難しい状況に置かれてしまいます。そこで、本来ならば休憩時間であるはずの昼休憩時に片手で食事をとりながら作業をする、定時を過ぎても忘れていた業務に気づきパソコンへ向かう等のように、知らず知らずのうちに隠れ残業やサービス残業が発生するというリスクが生じるのです。

経営層が業務量を把握できていない

特に在宅勤務体制をとる場合、目に見えない場所で社員が仕事をすることになるため、経営者が各社員の仕事遂行能力や任せている業務量が適正かを判断しづらい状況に置かれてしまいます。また、不透明な経済情勢の中で管理職が利益を出そうと躍起になり、困難な経営目標を掲げてしまうことで、知らず知らずのうちに実態と乖離が生じてしまう可能性もあります。

「隠れ残業・サービス残業」が企業を蝕むリスク

隠れ残業やサービス残業を見過ごした場合、企業がこうむるリスクはどのようなものがあるのでしょうか?

人材獲得に影響を及ぼすレピュテーションリスク

レピュテーションリスクとは、会社に関する悪いうわさが立つことで受けるリスクのことです。隠れ残業やサービス残業が積み重なることで、社員には徐々にストレスが増えていきます。労働時間とそれに見合わない給料の乖離に社員が不満をこぼすようになると、それが他人へと広まり大きな噂へとつながる可能性があるのです。

特にプライベートの時間を重視する傾向が強い若年世代は、労働時間と残業に関する問題には非常にナーバスです。「あの会社は残業代を支払わない」という噂は企業の評判を落とし、優秀な人材が流出したり獲得できなかったりする危険性があります。

社員のモチベーション低下や退職者増

隠れ残業やサービス残業が当然のように横行する職場の場合、社員は「働いても評価されてもらえない」と感じるようになり、当然ながらモチベーションが低下していきます。

向上心や働く意欲が薄い社員同士で仕事を続けても、生産性が上がらず負の連鎖へ陥ることも。特に合理的な考え方を持つ社員の場合、今の会社に見切りをつけ、退職・転職を決意するまでにそれほどの時間はかからないはずです。組織崩壊へつながる前に、何らかの手を打つ必要があるでしょう。

法律違反による処罰や訴訟

残業時間の申請や残業代の支払が適正に行われていない会社は、当然ながら法律違反として扱われます。労働基準監督署の調査で状況が発覚した場合は、企業名公表や罰則が課せられる可能性もあります。さらに、残業代の未払いに不満を抱えた社員が労働時間を請求するため訴訟を起こす危険性もあるでしょう。

これらは、いずれも対外的なイメージ低下や訴訟のために取られる時間増、資金面のリスク等が生じる可能性があり、企業にとっての大きなダメージへとつながります。

どうすればいい?「隠れ残業・サービス残業」があった場合の対応策

隠れ残業やサービス残業が実際に起こってしまった場合は、まず残業時間を洗い出し、時間に応じた残業代を支払いましょう。

労働時間は、原則として1日あたり8時間、1週間あたり40時間が限度として法律で定められています。これは、休憩時間を除く上限時間である点に気をつけましょう。この時間を超えて働かせる場合は36協定の届け出と、適正な計算による残業代の支払が必要になります。

【もっと詳しく】2021年4月から新しくなった36協定届の対応ポイント

また、リモートワークを導入している企業の場合、変形労働時間制という制度を採用しているケースが多くみられます。

変形労働時間制とは、社員の労働時間を会社の業務内容に沿って柔軟性を持たせた配分をすることで、長時間労働対策をするための制度です。具体的には、期間内で労働時間の調整を行う 「1ヶ月単位の変形労働時間制」、「1年単位の変形労働時間制」、「1週間単位の非定型的変形労働時間制」、前もって決めた期間内で業務開始・終了時間を社員が自由に設定できる「フレックスタイム制」が挙げられます。

「隠れ残業・サービス残業」をなくすには

隠れ残業やサービス残業を防ぐためには、経営者、社員が一丸となり、組織全体で対応をしていく必要があります。

まず、業務の効率化を図るため、社員へ割り振っている業務内容を洗い出し、各社員が労働時間内で無理なく仕事をすることができるような配分を行います。

特にリモートワークで互いが離れた場所で作業をする場合は、報告や連絡事項等のコミュニケーションが密に取り合えるような体制を整え、仕事の見える化を実現させる必要があるでしょう。昨今ではさまざまな業務可視化ツールや仕事管理ツールが提供されていますので、上司・部下が安心して働くことができるよう導入する方法も有効です。

また、勤務形態や労働時間制度の見直しをした上で、変更が必要であれば社員とヒアリングの上でルール改定を行う方法や、労働時間に関する社内の相談窓口を設定する方法も有効になります。

 

タイムカードや勤怠報告システムによる管理だけでは防ぎきれない隠れ残業やサービス残業は、会社側が残業申請がしやすい雰囲気を作り出すだけでもかなり改善の効果があるはずです。社員が働いた分を賃金として還元するのは企業側の義務です。ストレスや疲労をため込む社員を減らすためにも、早急に対応を進めていくべきでしょう。

*【IWJ】Image Works Japan / PIXTA(ピクスタ)