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弔慰金制度について

こんなに手続きが多いの?「社員の死亡時の手続き」全体像を社労士が解説

2022.05.16

皆さんの会社では、自社の社員が亡くなった場合、どのような手続きをすればよいのか整理していますか?

社員の死亡時は、公的手続きや社内の死亡弔尉金など必要な手続きは多岐にわり、なかには早め対応すべきものもあります。

突然の死亡の場合、遺族の方は落ち着いて対応できないこともあります。そんなとき、会社側が必要な手続きを案内して少しでも遺族の方をサポートしてあげたいものです。

そこで今回は、自社の社員が死亡した場合に必要な手続きの全体像を説明しましょう。

公的給付の一覧

死亡後の手続きは下記のようになります。主な手続きとなっています。手続き内容・手続期限・注意点の順で表記しているので、参考にしてみてください。

・年金受給の停止:14日以内(国民年金の場合)
・介護保険資格喪失届:14日以内
・住民票の抹消届:14日以内
・世帯主の変更届:14日以内(故人が世帯主であった場合)
・雇用保険受給資格者証の返還:1か月以内(故人が雇用保険の受給者の場合)
・所得税準確定申告:4か月以内(故人が自営業者または年収 2,000万円以上の給与所得の場合)
・相続税の申告:10か月以内(相続税がかかる場合のみ)
・国民年金の死亡一時金請求:2年以内
・埋葬料請求:葬儀から2年以内(健康保険加入者の場合)
・葬祭費請求:葬儀から2年以内(国民健康保険加入者の場合)
・高額医療費の申請:対象の医療費支払いから2年以内(70歳未満の方で医療費負担が高額の場合)
・遺族年金の請求:5年以内

公的給付の手続きについて

各公的な給付の手続きについて、簡単に解説していきます。

基本的には遺族が行う手続きですが、突然の死亡の場合、遺族の方は落ち着いて対応できないこともあります。会社として手続きを認識して、遺族の方をサポートしましょう。

(1)年金の受給停止と未支給分の請求

公的年金(厚生年金・国民年金)の支給は2か月ごとの後払いが基本です。受給日の関係で受け取っていない年金がある場合は未支給となり、遺族が請求して年金の受け取りを行います。その際、受給権者死亡届を同時に提出することになります。

たとえば、7月15日に亡くなられた場合、4、5月分は6月15日支給となり支給済みとなりますが、6、7月分は未支給の年金となり、請求することができます。請求期限は、厚生年金は10日以内で、国民年金は14日以内です。提出先は年金事務所になります。

(2)健康保険証、介護保険証や高齢者受給者証などの返却

協会けんぽの健康保険証は、会社へ返却してもらったうえで、会社で資格喪失届の手続きを行います。

家族も加入していた場合や、故人が世帯主であった場合は、世帯主を書き換えした保険証を発行してもらえます。介護保険証は、65歳以上もしくは40歳から64歳以下で要介護認定を受けている方に発行されます。

市町村や年齢区分などにより、介護保険料の過不足の精算をする必要があります。介護保険証を市町村の窓口で返却して確認してください。

(3)葬祭費・埋葬料の申請

故人が健康保険に加入している場合は、申請することで、埋葬料5万円が受給できます。申請する先は、けんぽ協会もしくは健保組合になります。国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している場合には、葬祭費3~7万円を受給できます。

また、業務災害や通勤災害によって、労働者が亡くなった場合、葬祭給付が受給できます。葬祭料として、315,000円+給付基礎日額の30日分(但し、この額が給付基礎日額の60日分に満たなかった場合は給付基礎日額の60日分)が受給できます。申請は、会社の所轄の労働基準監督署になります。

(4)高額療養費の払い戻し

故人が生前に高額の医療費を支払っていた場合、申請することで、自己負担額を超えた分が払い戻しされます。自己負担額は、年齢や所得によって異なります。

後期高年齢者医療保険制度や国民健康保険の場合は、市町村に、健康保険の場合、協会けんぽまたは健康保険組合に申請します。

(5)死亡一時金申請

故人が、国民年金を3年以上納めており、老齢基礎年金や障害基礎年金を受取らないまま亡くなった場合に、遺族は死亡一時金を受給できます。

受給額は、保険料を納付した月に応じて12~32万円となります。

(6)年金の受給

遺族の受給できる年金は、遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金の3つに分類できます。

遺族基礎年金:
自営業者などの国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格が25年以上あるものが死亡したとき、子のある配偶者もしくは、子が受給できます。

遺族厚生年金:
厚生年金保険の被保険者や被保険者であった方が亡くなった場合に、一定の遺族が受給できます。遺族基礎年金を受け取れる場合は、遺族厚生年金と併せて受給できます。受給順位は、次の通りです。

第1順位 配偶者または子
第2順位 父母
第3順位 孫
第4順位 祖父母

寡婦年金:
夫が年金を受け取ることなく死亡した場合に、生計維持関係のあった妻(内縁含む)が受給できます。寡婦年金は、60歳から65歳に達するまで受給できます。死亡一時金といずれかの受給になります。
遺族年金には、受給要件があり、受給できないケースもあります。専門家の社会保険労務士に相談することや年金事務所に相談することをおすすめします。

弔慰金制度について

弔慰金制度とは、会社が従業員やその家族の死亡に関して、弔意金を支給する制度です。公的な給付制度と違い、企業には支払い義務はないのですが、多くの企業で支給しています。

ポイントは、対象者はどのような範囲なのかです。正社員、契約社員、パートタイマ―社員など様々な雇用形態があります。どの範囲までが、支給範囲であるのかは、確認しておく必要があります。

従業員本人が死亡し、葬儀をする場合の死亡弔慰金は、5~20万円が相場とされています。業務外の死亡と業務上の死亡との状況に応じて支給する金額が異なり、勤続年数によって異なる規程もあります。

従業員の家族が死亡した場合の死亡弔意金は、3~5万円が相場とされています。喪主を務めるどうかで変わる規程や家族の範囲も企業ごとで変わります。過去に作成された規程で、家族死亡弔慰金の範囲が、公的給付の範囲を超えて、かなり広範囲になっているケースも見受けられます。

家族葬が増えきていることや会社の経費削減もふまえて見直してみるのもよいでしょう。

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* CORA、【IWJ】Image Works Japan、jessie / PIXTA(ピクスタ)