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株主総会

開催しないと後になってリスクも!? 非公開会社が株主総会を開催する手順

2022.06.14

弁護士の筆者は「株主総会なんか開いたことありませんよ!」と、堂々と言う会社経営者の方に何人もお会いしたことがあります。会社法によれば会社は決算期から3か月以内に株主総会を開催して、議事録を残さないといけません。しかし現実には、総会の議事録が必要となるのは役員の登記のときくらいです。そのときには、司法書士の先生が「総会議事録」を用意してくれます。

そもそも株主総会などの規定は、多数の株主を有する大会社を念頭に規定されているものです。家族だけで株式を持っているような中小企業では、株主総会なんて面倒なことをする必要がないというのも、ある意味もっともなことかもしれません。しかし、本当に株主総会の非開催によるリスクはないのでしょうか?

会社訴訟は家庭裁判所で!?

日本には株主が身内だけで構成される会社が非常に多くあります。規模の小さな会社でも第3者が株主だと株主総会を実施することになりやすいですが、家族だけだとどうしても手を抜きがちです。

その一方で、家族経営の会社で紛争が起こり、裁判所で争われる事案も非常に多いのです。私が大学生の頃に教わった会社法の先生は、「日本の会社関係の訴訟は、家族問題を取り扱う家庭裁判所でやった方が良い」などと冗談交じりで言っていました。つまり、家族だからと言って油断はできない、争いが起きる可能性は十分にあるということです。

家族経営の会社に株主総会は必要?

家族間でも争いが生じることを鑑みると、やはり株主総会を行っておくべきでしょう。家族の仲が良いときは誰も問題としなかった株主総会開催手続き上の欠陥を、ひとたび仲がこじれると、大問題として提起してくる可能性があるからです。特に、相続によって親の株式を一部ずつ相続した兄弟間では争いが起こりやすいです。また、相続などで株主が変更されると、それまで事実上仕事を任されていた人に対して、新株主が手続き違反を理由に厳しい対応をしてくることもあります。

裁判で争われた事案

いずれのケースも株主総会を開催していれば、避けることができた事案です。

家族経営の会社のケース

会社経営をする長男は、株主総会を開催せずに自分で全てのことを決めていました。父である創業者が亡くなり、3人の子どもが株式を3分の1ずつ相続することになると、他の兄弟は株主総会を経ていないことを問題として、長男が受けた報酬を全て会社に返還するよう求めました。

非家族経営の会社のケース

20年以上一度も株主総会を開催せず、社長が総会決議を経ずに自分の報酬を決めていたケースです。当初は、株主と社長が友達だったので特に問題は生じませんでした。しかし、株主が亡くなり相続によって新株主になると、「株主総会を開かずに勝手に決めた報酬を返還しろ」と訴訟に発展したのです。

株主総会を開催する手順

株主総会の開催には、取締役会を開催して総会開催について決めたり、総会の開催通知を送ったりと、かなり複雑なルールがあります。これは、どうしても見落としてしまいがちですから、チェックリストなどを確認しながら、しっかりと対応することが望ましいといえます。

>>【株式会社を開催する手順】チェックリストはこちらから

その一方、これらの手続きはかなり面倒なことも確かです。最初から100点満点の総会を目指そうとすると、ハードルが高すぎて、かえって挫折することもあり得ます。株主が少数の場合は、途中の手続きを少々省略しても、全員の合意があったことが分かるような形にすれば問題は生じません。この辺はある程度は臨機応変に対応することも可能でしょう。

開催にあたって注意すべきこと

ただそうはいっても、株主総会として開催する以上は、注意すべき点は押さえておかないといけません。まず、後から問題提起をしてきそうな方に対しては必ず総会の席を確保するなど、最低限、開催と決議に賛成した、または反対する機会を与えたことを明確にする必要があります。

さらに、代表取締役の報酬の決定といった揉めそうな内容を決めるときは、利害の対立する人の了解を総会決議という形でしっかりと取っておくことが望ましいと言えます。招集通知などはなくても、株主全員で現実に話し合ったなら、そこで全員出席の株主総会が行われたということで“総会議事録”を作ってしまうのも現実的なやり方です。

最後に

小さな会社、特に家族経営の会社では、会社法の手続きを無視することの方が多いのが現実でしょう。しかし、ひとたび争いになったら、そのこと自体が大問題となります。家族経営だからと油断せずに、総会などの手続きを行うことも考える必要があるのです。

>>株主総会を開催する手順の詳細は?

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*uotaxx、buritora、マハロ / PIXTA(ピクスタ)