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育休

導入したはいいけれど…育休復帰後の社員を円滑に進めるために知っておきたい3つのこと

2022年の育児介護休業法の改正の動きを受けて、企業においても就業規則の改定や社内制度の整備等について話題に出ることが多くなりました。「まだ該当者はいないけれども、今後を想定して制度やルールを整えておきたい」「あと少しで産休に入る社員がいるので、改めて会社としての対応を確認せねば」「そもそも女性社員がいないのだけど、うちの会社でも考えて行かないといけないのかな」等々、相談の切り口はさまざまです。

他の記事でもご紹介している通り、「育休の分割取得」「産後パパ育休」をはじめとする法改正に伴い、各企業においても規程を整え、社員に対して周知を徹底する、といった取り組みが求められます。制度の導入で終わりではなく、次にすべきことがあります。それは「育児休業を取得した社員がスムーズに復帰し、その後のキャリアをしなやかに歩んでいく」ためのプログラムをしっかりと考えていくことです。本記事では、そのための要点をご紹介します。

育休取得~職場復帰プランを検討、組織のあり方を見直す

厚生労働省では、中小企業のための「育休復帰支援プラン策定マニュアル」を示しており、各企業における育休取得や職場復帰の支援を後押ししています。企業の事業モデル(サービス業、製造業等の業種の違い)や組織風土等によって、育休からの職場復帰の望ましい形は異なるかとは思いますが、そのために話し合い検討すること自体が組織のあり方や方向性を捉え直す良い機会になるはずです。このマニュアルを活かしながら社内で検討していくことをおすすめします。

マニュアルの冒頭には、「育休中のみならず妊娠期から職場復帰後の働き方についても配慮や支援を行なうことが大切」と記載されています。制度・ルールに基づいて配慮や支援をしていくことだけではなく、育休取得した当人や職場の管理職や他のメンバーも含めた社員全体が制度理解を深め、他人事ではなく関わり意識をもって捉えていく必要性もあると言えます。

要点1:育児休業制度について理解を深める

2022年4月の法改正においては、対象者が産休・育休に入る際に、必要な情報を会社が説明し周知することが義務付けられました。出産手当金や出産一時金、あるいは育休中の保険料免除といった社会保険(健康保険・厚生年金)上のこと、育児休業給付という雇用保険上のことなど、手続き自体は会社が行ないますが、必要書類の準備や申請・受給タイミングなど対象者本人が把握しておくべきことも多くあります。

また、2022年10月の法改正では、「産後パパ育休*」も導入されることとなりました。「うちの職場は今は男性ばかりだから育児休業制度は関係ない」と思っていても、実はこの新制度を利用して育休を取得しようと家族で話し合っている社員がいるかもしれません。人事担当者だけではなく、管理職とも制度理解を深め、いずれの社員も必要な情報にすぐアクセスできる状況を作っておきましょう。

*性別にかかわらず適応される制度

要点2:制度の対象者とのコミュニケーションをはかる

出産に際して対象者本人においては、定期的な通院やさまざまな準備がありますし、今は大丈夫でも体調不良で思うように動けない状況が出てくるかもしれません。制度対象者が産休・育休をとるという意向が固まった早いタイミングで、人事担当者(あるいは上長)と話す機会を設け、「育休復帰支援面談シート(マニュアル83ページ)」も活用しながら、制度利用に関しての具体的な方針を共有するようにしましょう。

コミュニケーションをとる機会は、「産休に入る前の期間」「出産前後(産休中)」「育休中」という三つのフェーズに分け、定期的に1on1形式で時間を設けるようにしましょう。時期によって状況や心境は変化します。また、体調が悪かったり精神的に余裕が無くなったりすると、誰しも前向きな思考をしづらくなるものです。対象者本人が“働くこと”に関する悩みや迷いを一人で抱え込むことがないよう、短い時間やちょっとしたメッセージでのやりとりでも良いと思います。

心理的安全性のもとで情報共有・意識共有できる窓口(担当)を定め、スムーズなコミュニケーションをとっていくと良いでしょう。休んでいる期間中も、社内ブログや社内報等で職場の状況を共有できるしくみをつくったり、無理のない範囲で社内イベントに顔を出せるよう声がけする、といった働きかけも重要です。

要点3:復帰支援プラグラムを組み立てる

「制度対象者本人」と「復帰する職場」両面から、復帰後の継続的なキャリア構築に向けたプログラムを考えていく必要があります。具体的には、「働き方(勤務時間・日数、出勤・在宅勤務など)」「教育・能力開発(業務に必要なスキルの再習得、デジタルツール等新たなスキルの習得など)」「情報共有(理念やビジョンの理解、休んでいる期間中に生じた組織体制の変化等の共有)」の3点について、本人の意向を踏まえ検討し、復帰する職場の状況を加味しながらプログラムを考えていきます。

このように組み立てられた育児休業復帰プログラムは、本人だけではなく、共に働く他のメンバーにも常に見える状態にしておくことが重要です。他の社員にとっては「いずれ自分が育児休業を取得した時にこういう過程をたどるんだな」とイメージがしやすくなりますし、復帰を迎える社員を受け入れる職場の理解も進みます。

 

育休に関わる職場復帰制度をうまく運用していくことは、他のライフイベント(家族の介護や自身の病気、家庭の事情など)に伴う働き方の変化が生じた場合にも応用することができます。コロナ禍で、リモートワークが進み個々の生活スタイルが変化したことは、職場と家庭との間にある境目をあいまいにし、改めて”どのような線を引き直すのか”を考えるきっかけになったとも言えます。今回のこのテーマに関わる社内の議論は、今後の職場環境づくりにも好影響を与えるはずです。

また、今回ご紹介した「育児休業復帰プログラム」を策定し支援措置を実施するにあたり、「両立支援等助成金(厚生労働省)」等の助成金を活用できる場合があります。法改正を経て整備すべき制度はしっかりと整え、“働きがい・働きやすさのある職場”として選ばれる企業を目指し組織運営に注力していきましょう。

*HIME&HINA、zak、maroke / PIXTA(ピクスタ)

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