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TOP > 記事一覧 > 経営・財務 > ウクライナ・ロシア情勢によるマイナス影響は8割超え…経営者に求められる事業リスクマネジメントとは?
リスクマネジメント

ウクライナ・ロシア情勢によるマイナス影響は8割超え…経営者に求められる事業リスクマネジメントとは?

2022.05.31

ウクライナ・ロシア情勢が、今後どのように経営に影響を及ぼすか懸念している事業者も多いのではないでしょうか。実際に、株式会社東京商工リサーチが実施した調査(2022年4月1~11日にインターネットによるアンケート調査を実施、有効回答5,783社)によると、80%以上の企業が経営への影響を懸念しており、すでにマイナスの影響を受けているという回答も35%を超えています。

どのような事業を展開していてもリスクは常に存在しており、平時からどう対策を講じておくかは近年ますます重要な課題となっています。

今回はこのようなリスクへの対策として、経営者が知っておくべき”リスクマネジメント”の考え方や手順について紹介します。

※最終更新月:2022年5月

なぜリスクマネジメントをしておくことが重要なの?

リスクマネジメントの対象となるリスクは、”事業にマイナスの影響をもたらす可能性のある事象”のことをいいます。経済活動をしている事業者の中で、リスクが全くないということはありません。

直近では、円安の進行、物流の停滞、材料不足、材料費の高騰等、少し思い浮かべるだけでも多様なリスクを挙げることができます。事業者により想定されるリスクは様々で、たとえ同じ事業を行っていても所在地、従業員数、保有資産の状況等によっても異なることがあります。

リスクマネジメントとは、”リスクを組織的に適正かつ円滑に管理し、リスクの発現によって被る被害を最小限にすること”です。そのためにも、対策が重要になります。

代表的な事業リスクにはどういうものがあるの?

事業を運営する中でのリスクにはどのようなものがあるのでしょうか?

『2022年版中小企業白書』(中小企業庁)の中で紹介されている”事業の継続が困難になると想定しているリスク”についての調査では、以下のような回答が上位を占めています(※複数回答)。

・自然災害:69.3%
・感染症(インフルエンザ、新型ウイルス等):60.0%
・設備の故障:36.5%
・火災、爆発事故:32.0%
・取引先の倒産:31.9%
・情報セキュリティ上のリスク:30.2%
・取引先の被災:28.7%
・自社業務管理システムの不具合・故障:27.1%
・物流の混乱:25.0%
・情報漏えいやコンプライアンス違反の発生:24.5%

また、『2016年版中小企業白書』の中で示されているリスクの区分と具体例は以下のようになっており、事業活動を行う中でのリスクを認識するために参考になるでしょう。

事業機会に関連するリスク

・新事業分野への進出に係るリスク(新たな事業分野への進出の成否等)
・設備投資に係るリスク(投資規模の適否等)
・商品開発戦略に係るリスク(新機種開発の成否等)
・資金調達戦略に係るリスク(増資又は社債、借入等の成否や調達コスト等)

事業活動の遂行に関連するリスク

・モノ、環境等に関する災害リスク(地震、不適切な工場廃液処理等)
・情報システムに関するリスク(セキュリティの不具合による情報漏えい等)
・商品の品質に関するリスク(不良品の発生・流通等)
・コンプライアンスに関するリスク(法令違反等)
・財務報告に関するリスク(粉飾決算等)

【こちらの記事も】情報は財産からリスクに…?罰則が強化「2022年個人情報保護法改正」の要点まとめ

リスクマネジメントはどのように進めればいいの?

リスクマネジメントの実施手順は以下のようになります。

手順その1:リスクの特定

自社にとってのリスクを可能な限り洗い出します。些細だと思えるようなリスクであっても漏らさずにすべて洗い出すことが重要です。いずれもその発現により重大な損害を被る場合があるからです。

経営者だけでなく、幹部社員等を交えてブレインストーミングを行うことや、上記で紹介したリスクの分類や具体例もリスクの特定をする際の参考になるでしょう。

手順その2:リスクの分析・評価

洗い出したリスクの中で、どのリスクに対策を講じるのか評価及び検討を行います。具体的には、”起こりやすさ”と”影響の大きさ”の2軸でマトリックス表を作成するとよいでしょう。

以下のように4象限に分けてリスクを分析・評価していきます。
①「起こりやすさ:高」×「影響の大きさ:大」
②「起こりやすさ:低」×「影響の大きさ:大」
③「起こりやすさ:高」×「影響の大きさ:小」
④「起こりやすさ:低」×「影響の大きさ:小」

そして、”影響の大きさ”を優先にし①→②→③→④の順番に着手していきます(※ただし、状況により②・③の順番が異なる場合がある)。

手順その3:リスクへの対応

リスクの発生を防ぐ対策、またリスクが発現してしまった場合への対応策について検討します。どのように対策を講じるかは会社により異なりますが、以下のような方法があります。(※『2016年版中小企業白書』(中小企業庁)から引用)

リスクコントロール

・回避:リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策。リスクの放棄を伴う。
・損失防止:損失発生を未然に防止するための対策。予防措置を講じて発生頻度を減じる。
・損失削減:事故が発生した際の損失の拡大を防止・軽減し、損失規模を押さえるための対策。
・分離分散:リスクの源泉を一ヵ所に集中させず、分離、分散させる対策。

リスクファイナンシング

・移転:保険、契約等により損失発生時に第三者から損失の補填を受ける方法。
・保有:リスク潜在を意識しながら対策を講じず、損失発生時に自己負担する方法。

手順その4:リスク及びリスク対策の見直し

実施した対策に対してモニタリングを行い、その有効性を検証し必要に応じ対策の改善を図っていきます。毎年、半年、毎月など対策にあわせて検証する時期をあらかじめ設定しておきましょう。また、対策を実施するリスクそのものも、環境の変化によって見直しを検討する必要性が出てくる場合があります。あわせて見直し時期を決めておきましょう。

以上の手順に従ってリスクの特定や対策を講じた上で、モニタリング及び改善を継続的に図っていくことが適切なリスクマネジメントといえるでしょう。

 

今回は経営者に求められるリスクマネジメントについて紹介しました。近年ますますリスク対策の必要性が高まっています。具体的にどのようにリスクマネジメントを行うか参考にしていただければ幸いです。

【こちらの記事も】中小企業を陥れる!隠れた3つの「資金繰り」リスクとは?

【参考】
ロシアのウクライナ侵攻に関するアンケート調査 非鉄金属製造は全社が「経営にマイナス」 / 東京商工リサーチ
2022年版中小企業白書 / 中小企業庁
2016年版中小企業白書 / 中小企業庁

*ほんかお、artswai 、metamorworks / PIXTA(ピクスタ)