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定款 株式会社

株式会社設立の流れは?検討しておくべき事項を弁護士が解説

2022.07.12

ビジネスを始めるには、個人事業主として事業を開始することもできますが、事業が一定の規模に拡大した場合の税務上のメリットや対外的な信用力の観点から、株式会社を設立することが有効です。株式会社の設立には、定款の作成、認証の他に、資本構成や組織構成等、様々な事項を検討しておく必要があります。

そこで、今回は、株式会社の設立の手順とポイントについて解説します。

株式会社設立の流れ

株式会社設立の流れは大きく以下のとおりです。

STEP1:資本金額の検討
STEP2:資本構成(株主構成)の検討
STEP3:機関設計の検討
STEP4:原始定款の作成
STEP5:設立登記

以下で各STEPごとのポイントを解説していきます。

なお、厳密には、株式会社の設立方法として、“発起設立”か“募集設立”かを検討する必要があります。しかし実務上ほとんどの場合は、設立時に発行する株式の全てを発起人が引き受ける方法である“発起設立”がとられていますので、以下の解説も発起設立の場合を前提に解説していきます。

STEP1:資本金額の検討

株式会社を設立する場合、まず初めに資本金をいくらとするかを検討します。現行の会社法では、資本金は1円からでも設立することができますが、資本金は会社の対外的な信用力を示すものでもあるので、実際に事業を営む場合にはある程度の資本金で設立する必要があります。資本金をいくらとするかは、事業計画から必要な資金を逆算し、どの程度を資本金とし、どの程度を融資で賄うかを検討しましょう。また、許認可等が必要なビジネスを行う場合には、許認可等の要件の関係で、一定額以上の資本金が要求されることがあるので注意が必要です。

他方で、税務上の観点からは、資本金が1億円以下の場合、中小企業として法人税法上の特例の適用を受けることができ、さらに、1,000万円未満であれば、設立日が属する事業年度について消費税が免税されるというメリットがあります。

資本金額を決める際は、上記のような考慮要素を踏まえて検討しましょう。

【参考】『平成十七年法律第八十六号 会社法』/ e-Govポータル

STEP2:資本構成(株主構成)の検討

資本金の額が決まったら、次に発起人がそれぞれどの割合で出資をするか、すなわち、株主構成をどうするかを検討する必要があります。

大まかに言えば、①100%、②3分の2以上、③50%以上、④3分の1超でそれぞれ意味合いが異なります。

①株式を100%保有すれば、会社のあらゆる意思決定を1人ですることができ、さらに株主総会の招集手続等を経ることなく書面で決議を行うことができます。迅速な意思決定が可能となることがメリットです。また、②3分の2以上の株式を保有している場合は、会社法上、組織再編や重要な財産の譲渡等の重要な事項を決定するために必要な株主総会特別決議を得ることができるため、会社の支配権を確保しておきたい場合には、3分の2以上を保有しておく方が良いでしょう。これは逆に言えば、④3分の1超を保有することで、重要な意思決定を拒否することができるということを意味します。

STEP3:組織構成の検討

会社法では、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、監査等委員会、指名委員会等などの機関が用意されています。株主総会と取締役は最低限必要な機関ですが、その他の機関の設置については、定款によって任意に決めることができます(ただし、取締役会を設置した場合には監査役が必須であるなど、特定の組み合わせが必須となることもあります)。

ガバナンスの観点からは監査等委員会設置会社のような構成が考えられますが、上場会社のように大衆から資本を募らない中小企業においては、機動的な会社経営のため簡素な組織構成とすること多いです。基本的には、「株主総会+取締役」という最小限の機関設計か、「株主総会+取締役会+監査役」という機関設計にすることが多く見受けられます。どのような構成にするかは、以下のようなメリット、デメリットを考慮して検討しましょう。

“取締役会設置会社とした場合”には、以下のようなメリットがあります。

【メリット】

・一定の事項について株主総会決議が不要となる(利益相反の承認や株式分割等)
・株主提案権を行使できる株主を、原則として総株主の議決権の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主に限定することができる(取締役会非設置の場合、全株主が行使できる)。

【デメリット】

・最低3名の取締役と1名の監査役が必要となる
・3か月に1度は取締役会の開催が求められる
・非公開会社であっても株主総会の1週間前には招集通知を発送しなければならない

STEP4:原始定款の作成

発起人が作成する定款を“原始定款”と言います。原始定款には、発起人の署名または記名押印をし、公証役場で認証を得る必要があります。会社法上、定款に必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)として、以下の6つの事項が定められています。

①目的
②商号
③本店所在地
④設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
⑤発起人の氏名または名称及び住所
⑥発行可能株式総数

絶対的記載事項のポイントは、目的事項です。会社は定められた目的の範囲でしか権利能力を有しないこととされているため、自らが行おうとする事業目的を明記しましょう。特に、許認可を要するような事業を行う場合には、当該許認可を取得する前提として、特定の目的事項が記載されていることが必要である場合もありますので、よく確認しておきましょう。

また、会社法には、定款に必ず定めなければならないわけではないものの、一定の法的効果を得るためには定款に記載する必要がある事項(相対的記載事項)も定められています。相対的記載事項には様々ありますが、上記STEP3で検討した機関設計に従って機関に関する定めをする必要があります。また、中小企業においては、株式が見ず知らずの人へ譲渡されることを防ぐために、譲渡制限を付しておく必要がありますので、こうした事項についても定款に定めておきましょう。

【参考】『株式会社の設立手続(発起設立)について』 / 法務省

STEP5:設立登記

上記手続を全て行っただけでは、法的には株式会社はまだ設立できていません。会社法では、株式会社は、その本店の所在地において設立登記をすることで成立するとされていますので、上記の手続を経た後、法務局に登記申請を行うことで初めて、株式会社が設立されることとなります。

なお、登記申請にあたっては、資本金の払込の記録(発起人の銀行口座に定められた金額が振り込まれている記録)が必要になりますので、予め資本金の払い込みが必要になります。

【参考】
『商業・法人登記の申請書様式』/ 法務局
『記載例(取締役会設置会社の発起設立)』/ 法務局

会社設立に関する費用

上記の手続きの中で、実際に係る費用としては、以下の費用が挙げられます。

・定款収入印紙(電子定款の場合は不要)・・・4万円
・定款認証手数料・・・資本金の額等が100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、その他は5万円となります。
・定款の謄本手数料(登記申請時に必要となる定款謄本作成に必要)・・・概ね約2,000円程度(250円/ページ)
・登録免許税(登記申請の際に必要)・・・15万円or「資本金×0.7%」の高い方

以上を合計すると概ね約25万円程度は必要になると考えておきましょう。

その他事業を始めるにあたっての準備

登記が完了し、法的に株式会社が設立できたとしても、実際に事業を開始するには、法人の印鑑登録等の判子類の用意や、事業所の用意(必須ではないものの許認可等の関係で一定規模の事業所が求められることがあります)、従業員の雇用等も行う必要があります。こうした事実上、事業を開始するために必要な準備も忘れずに行いましょう。

専門家への相談

上記のとおり、株式会社を設立すること自体は、それほど難しいことではありませんが、どのような機関設計をすべきか、資本構成をどうすべきか等については法的観点を踏まえた検討も必要になります。また、許認可との関係で一定の制約があることもあります。こうした点に不安があれば弁護士、行政書士、司法書士等に相談しましょう。

「株式会社設立の実務チェックシート」を無料ダウンロード

【参考】
『平成十七年法律第八十六号 会社法』/ e-Govポータル
『株式会社の設立手続(発起設立)について』 / 法務省
『商業・法人登記の申請書様式』/ 法務局
『記載例(取締役会設置会社の発起設立)』/ 法務局

*CORA、sumito、kai、吉野秀宏 / PIXTA(ピクスタ)