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会社トラブル

契約前に確認したい3つの条項とは?実際にあった中小企業の詐欺事例と対策

2021.08.24

業者と契約をする際、内容をしっかりチェックしていますか? よく分からないからとさらっとしか読んでいない方や、なかには全く目を通していない方もいるかもしれません。

実は中小企業を狙った詐欺案件は、契約書に書いてある内容が論点になることが多いです。内容をよく理解しないまま契約をするということは、詐欺まがいの業者のターゲットにされかねません。

本記事では、中小企業を狙った詐欺まがい商法の事例を紹介するとともに、その対策についてご説明します。

中小企業の詐欺商法の特徴は?消費者詐欺との違い

中小企業への詐欺的な取引は近年増えているように思われます。消費者と違い、中小企業の取引は法律上で裁くことが難しいことも一因でしょう。

消費者への詐欺は、例えばオレオレ詐欺に代表されるように、詐欺罪として刑事罰が適用されるようなものが中心です。法律的には明らかに違法なもので、裁判をすれば勝てることは間違ありません(現実に詐欺師から取り戻すのは難しいですが……)。さらに消費者の場合は、消費者保護法などもあるので、内容が不当な契約は無効とされています。このように、消費者は強く保護されています。

【関連記事】中小企業がターゲットに…実際にあった契約がらみの「詐欺まがい商法」と対処法【弁護士が解説】

一方、中小企業向け“詐欺”は、多くのケースの場合、相当不当で怪しい契約ではあるが、厳密に法的な意味では詐欺といえないのです。それだけに、法的対応がかなり難しくなりがちです。

まずは、筆者の事務所がこれまで実際に対応したケースを中心に、中小企業をターゲットにした詐欺商法を紹介しましょう。

ケース1:ホームページのSEO対策に関する契約

世間には、「貴社のホームページの検索順位を上げます」といった、SEO対策の会社が多数存在します。それらのすべてが詐欺であるわけではありませんが、なかには怪しい会社も存在するようです。

例えば、誰も検索に使用しないようなキーワードで検索順位を上げ、それを“成果”として、“契約”する業者は多数存在します。当然、集客が見込めないキーワードでホームページの検索順位が上がったとしても、依頼した会社にとってはメリットはほとんどありません。また、SEO対策として高額な費用を請求しておいて、実際には何をしているのか全く分からないような悪質な会社も存在します。

ホームページやSEOのことをよく理解できていないまま、このようなSEO対策会社と契約してしまい、後から解約しようとしてもなかなかできないことが多いです。

ケース2:開業直後のコンサルティング契約

前述したSEO対策も、一種のコンサルティングといえますが、特に開業直後の企業に、長期間・解約不可のコンサルティング契約を持ち掛ける手口もよくあります。開業したての何も分からない状況では、コンサルタントが助けてくれるのは心強く、助言が非常に役立つことも。しかし問題は、その契約がその後長期間にわたり解約もできないという点です。あるいは、解約の場合は多額の違約金が必要となることもあります。

開業してしばらくすれば、段々と業界のことも分かってくるため、特にコンサルタントに助けてもらう必要もなくなるでしょう。それなのに、特に役に立たないコンサルタントに、いつまでも対価を支払わないといけないという契約だけが残ることになります。

これは、会社にとっては大変な負担です。しかし、このようなコンサルティング契約は、法律上は有効とされる可能性が高いです。

ケース3:解約が事実上できない契約

長期間の契約ではなく、“お試し契約”ということで、最初は非常に安い金額、場合によっては無料でサービスを提供しておきながら、事実上解約を認めないで、その後長期にわたり代金を請求し続けるといった手口もあります。

解約について、非常に複雑な手続きやフォーマットを決めておいて、それらが完全に満たされていないと解約を認めず、そのまま一定期間が過ぎると、事実上長期間の契約が始まるという内容です。

このような手口はかなり悪質なため、法的にも解約が認められるとされる事案もあるでしょう。その一方、契約書の中でそのような複雑な解約手続き等について定められていた場合には、“契約は守るべきである”という原則が適用され、企業側が支払う必要があるとされてしまう可能性もあるのです。

ケース4:人材紹介契約

人材紹介業などでも、「詐欺ではないか?」と言いたくなるような紛争が生じることがあります。よくあるのが、人材紹介業の会社を通して入社した人が、すぐに辞めてしまうような場合です。もちろん、極めて短期間に従業員の都合で辞めたような場合には、人材紹介会社に返金する旨の規定は存在します。

しかし、会社と話し合いの末、従業員本人が会社になじめないといった理由で、結果的に短期間で退職したような場合には、紹介料の返金が認められるかは実は怪しいところなのです。そして、すぐに辞めるような人を、それと知りながら紹介するような人材紹介会社が存在することも事実です。人材紹介にかかる費用は一般的に高額ですが、このような場合は、法的には争うことがかなり難しい事案となります。

詐欺商法への対策

まずは事前に契約書を確認!

以上見てきたように、消費者ではなく、中小企業が対象となると、“詐欺”としか思えない契約でも、有効とされる可能性は十分にあります。つまり、契約した後に、争うのはかなり難しいのです。

そこで、このような詐欺まがい商法に対抗するには、最初の段階で契約書の内容をよくチェックすることが大切になります。特に、契約する際には、次のような条項には十分な注意しましょう。

(1)契約の期間が長期にわたり設定されており、解約ができない規定となっている場合
(2)解約ができるとしても、手続きやフォーマットが予め定められており、事実上解約が困難と思われる場合
(3)委託契約で、成果として何が補償されているのか、少なくともどれだけの作業をするのかなどが明確に定められていない場合

以上のような契約条項があった場合、少なくともメールなどの証拠の残る形で、相手方に内容の確認を求めましょう。また、不当だと思えば内容の変更を求めるなどの対応が必要です。

契約をしてしまったら…

仮に契約してしまった場合には、法的には事後に争うのは簡単ではないとはいえ、そのまま泣き寝入りをする必要はありません。違法かどうかは怪しくても、不当であることが間違いない契約の場合、事実上争うことは可能です。

相手方としても、裁判までして代金を取るのは、費用対効果という点では望ましくないでしょう。そこで、話し合いの結果、ある程度の金銭支払いで終わらせることは十分に可能です。当事務所でも、上記の各事案で、そのようにして解決したことは多数あります。

不当な内容と感じたときは、まずは相手の会社に疑問をぶつけてみましょう。まともな業者であれば、それで解決することもあります。そして、相手が真摯な対応をしない場合には、弁護士等専門家に相談しましょう。(消費者契約なら、消費者センターへの苦情申し立てなどができますが、企業間取引ではそういうわけにいかないので、弁護士など専門家への相談が必要となります。)

 

「詐欺をするなら、成功している者(をターゲット)にしろ!」という説があります。成功者は、チャンスを逃さないで、リスクを取ってトライしてきたから成功したともいえます。それだけに、マイナスよりもプラス方向に目が行くので、少々怪しくてもトライするため、詐欺にかかりやすいといいます。さらに、騙されたと分かっても、それを取り戻すよりも、新しいビジネスに向かうので、詐欺として問題にされる恐れも小さいということからです。

しかしながら、まだ成功もしていない、起業したばかりの会社がターゲットになるケースもあります。まずは、詐欺にあわないように、本項で書いたことを参考にして、怪しい契約書は締結しないようにしましょう。そして、何かあった場合には、弁護士など専門家に相談することが大切です。

* tkc-taka / PIXTA(ピクスタ)