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株式会社ファミワン代表石川勇介さま

女性だけじゃない!中小企業の人材確保に「妊活支援サービス」が注目される理由

妊活に関わるすべての方を対象とした妊活コンシェルジュサービス『ファミワン』。

サービスの対象は“妊活を考えている人”、“すでに妊活中の人”、“病院を探している人”、そして、“不妊治療をもうやめようかと思っている人”など多岐にわたります。

不妊症看護認定看護師、培養士、臨床心理士などさまざまな専門家にサポートを受けることができ、福利厚生として会社に導入もしているとのこと。

ベンチャー企業のコミクス社やインターグ社への導入や、東京都杉並区や群馬県邑楽町での委託事業の新規開始など拡大を続けていますが、“中小企業”においてこのような妊活支援はどのようなメリットがあるのでしょう? 今回はこのサービスを運営している『株式会社ファミワン』の代表の石川勇介さんにお話を伺いました。

ファミワン代表石川勇介さま

今回のインタビューはオンラインで行いました

石川勇介(いしかわ・ゆうすけ)。株式会社ファミワン代表取締役。自身の妊活経験をきっかけに会社を設立。妊活に前向きに取り組める社会をつくるため日々奮闘している。起業前は国内最大級の医師向け情報提供企業のエムスリーにて、新規事業「AskDoctors評価・開発支援サービス」等の企画、営業、運用まですべてを担当。2児の父。

妊活コンシェルジュ「ファミワン」を作ったきっかけは?

——石川さん自身がこのサービスを作ったきっかけを教えてください。

「私自身が妊活に直面して、知らないことだらけだと感じたことがきっかけです。夫婦でも話し合っても答えが出ないことが出てきて、誰に何を聞けばいいのかがわからない。検索して出てきた専門家の意見も人によって言ってることが違ったりする。もっと妊活している人にとって使いやすくて、自分たちの味方になってくれるサービスが世の中には必要だと強く感じました」

——男性である代表の石川さん自身が表に出ていくことで、どのような反応がありますか?

「妊活中や妊娠中は、どうしても男性よりも、女性に負担がかかることが多いです。なので、女性が代表だと自分の経験で語れることも多くあると思います。しかし、企業との打ち合わせの場などで妊活支援についてお話させていただく際は、むしろ男性の方が圧倒的に多いです。同席している妊活・不妊治療の専門家の話や当事者の女性の話を、私が男性目線でかみ砕くことによって、より伝わりやすくなるという面はあるように感じています」

——不妊の相談というと不妊治療病院でもできますが、どのように違うのでしょうか?

「気軽に質問できる相手が少ないと感じている方が多いのが課題の一つですので、LINEなどを活用して看護師や心理士からサポートをうけることができるというのは、大きな差だと考えています。また、セカンドオピニオンを受けたい等、直接かかりつけのお医者さんには聞きづらいことなどを気軽に聞けるのがありがたいとの声が多いですね」

中小企業こそ妊娠や出産で社員が離れない対策を

——企業への妊活支援をしているとのことですが、中小企業では他の福利厚生に比べ優先順位が低くなってしまう場合もあると思います。中小企業も妊活支援をしたほうがよいのでしょうか?

「中小企業にこそ妊活支援を導入していただきたいです。というのも、大企業は中小企業に比べてお金もあれば人材も豊富です。お互いがカバーし合うことで、妊活によって人材不足になるダメージも比較的回避しやすいです。ところが中小企業では社員数も少なく、ひとりにかかってくる仕事や責任のウェイトが大きいので、会社全体での協力がより大切になってきます。

まずは、みんなでこの妊活という1つの課題について理解し合うことが大切だと思います。大企業であれば社内に相談窓口を設けることもありますが、中小企業であれば外部のサービスとうまく頼ってもらうことが重要です。“ファミワン”は会社の社員であるお客さまと直接やりとりはしますが、個人の相談内容や誰が実際に“ファミワン”を使っているかなど、個人情報は一切会社側には共有しません。そして、セミナーや研修をおこなうことで、会社の風土もしっかりよい方向に変えていきます。

また、他にも更年期障害や月経、夫婦間の悩み、男性の不妊症にも対応しています。デリケートな問題なので、飲みの場で部下からポロッと妊活の悩みをこぼされたりしても、どのように対応すればいいかわからないといったお悩みもあります。ファミワンでは幅広く様々な相談にも応えています」

——サービスを受けた方は、どのような点で喜ばれていますか?

「まず、“ちゃんと自分の話を聞いてくれる人がいた”、“自分も見捨てられてないんだと感じた”という声をいただくことが多いです。あとは会社側が産休、育休に対しての準備がしやすくなったとかですね。

また、人間関係の面におけるメリットがあったという声も。各当事者がきちんと知識を得ることで、妊活をしている人を傷付けるような言葉などへのストッパーにもなっています。例えば、よく言いがちな“わかるよ”という共感の声かけが、実はよくない場合もあったり……。

セミナーなどでは役職や年齢層、性別やその場の雰囲気によって伝え方を変えて、すべての人に理解していただけるよう対応しています。事前に要望をいただいたことに対して重点的に説明したり、その企業の人事制度や勤務形態に合わせた構成にかえることもあります。ワークショップ形式やグループディスカッション形式、クイズ形式、そして、人事の方にも壇上で協力いただいて実際に相談をうけている様子をデモンストレーションするような形式での開催もあります。いわゆる“センセイ”による一方的な講演会よりも、柔軟に対応できるのが”ファミワン”の強みです」

おじさん世代もきちんとした知識を得れば理解できる

——いわゆる”おじさん世代”の方が妊活を理解するのは難しい印象もあります。

「よく、おじさん上司がデリカシーがないと言われますが、彼らは単純に知識がないだけなんです。悪気はない。

そもそも彼らの時代には“妊活”という言葉がないですからね。妊娠どころか結婚したら寿退社が当たり前。妊娠したら女性は仕事を辞めて専業主婦になるのが当たり前。女性の社会進出なんてまだまだの時代に結婚した世代の人もいるわけです。

そこで僕たちがその方々に向けて説明することではじめて理解してもらえる。きちんと話せばわかるんです。本当の意味の”分からず屋”みたいな方は実はそんなにいらっしゃらない。

若い世代こそ、上司には説明しても理解してもらえないと最初から決めつけてしまっている人もいます。“悩んでいることを理解してもらえない!”と上司に感情をぶつけてしまうと、お互い感情論に発展してしまいますが、うまく私たちが間に入ることによって緩衝材になる。これが外部サービスのよい点ですね」

——なるほど。そもそも、どうして妊活していることを会社に言いたくない人が多いのでしょう。

「大きく3つに分かれます。まず、不妊の方に関しては自分のことを自然に妊娠できないので”欠陥がある”と思ってしまっていることが多い。その次に、プライベートなことで恥ずかしいし、相談することではなく自分で解決すべきことだと思っている方も。あとは、言ってもどうせ無駄だと思っている方もいるようです。その中には、勇気をだして一度相談したものの、傷つく言葉や態度、対応をされてしまい、もう二度と相談しないと思ってしまう方もいます」

妊活支援がある会社が選ばれる時代に

——これから先、就活や転職の会社選びの条件で妊活支援が入ってきそうですね。

「そうですね。海外はすでにその動きが活発になってきています。A社、B社、どちらも同じような条件なら妊活支援のある会社にしようと。いますぐ子どもが欲しいと思っている人じゃなくても、将来的なことを踏まえて、妊活支援をしている会社に入りたいという声は増えています。

体外受精の費用を補助していたり、育休や産休も比較的とりやすい“子育てしやすい”を売りに出している会社は増えてきています。ただ、その前の段階である、妊活の啓発から支援している会社はまだ少ないです。未来の妊活を考えることが、すでに妊活なんです。会社でセミナーを受けたお客さまからいただいた声に、”会社がきちんと妊活を応援してくれていることがわかって嬉しかった”という声もありました。

また、妊活のアドバイスでは”規則正しい生活と十分な休養をとり、ストレスをなくすほうが良い”とよく言われています。しかし、世の中にはいろんな職種の方がいて、”自分の仕事ではなかなかその実現はできない”などの悩みもあります。このような個々で異なる悩みについて柔軟に対応できることも、利用された方からはとても喜ばれています。

あと、いわゆる”2人目不妊”だと”1人いるからいいじゃないか”という空気にもなりがちなので、そこをファミワンがしっかりとした悩みとして受け止めることもできるんです」

「妊活」における職場環境の理想とは?

——導入するにあたって会社側は休暇制度など、整備しておく必要はありますか?

「あるに越したことはないと思いますが、全くなくてもいいです。不妊治療費用に対する会社からの補助金なども出ればもちろん経済的には助かりますが、それよりも治療によって体調が悪い時に休みやすい雰囲気だとか、協力し合える環境があることの方が重要なのです」

——まだあまり一般的ではない妊活支援は中小企業がすぐ導入するには壁もあると思います。すでに導入されている会社はどのようなところが決め手になったんでしょうか。

「導入しない理由は、あげようと思えばいくつでも出てくると思うんです。ですが、育休や産休が当たり前になってきているこの時代を考えると、5年後、10年後はきっと妊活支援が今よりももっと当たり前になっているはずです。

いつか導入する日が来るのなら、今やらない理由がない。早くから導入して人材流出を防ぐ、そして、信頼できる会社としてブランディングを強化していき採用やCSRにつなげていく、という理由で導入していただいくことが多いです」

——妊活体験を社内で語れるような空気感がつくることができればよいですね。これからこのサービスを運営していく上での目標などはありますか?

「妊活に関して相談したいと思ったら、経験者の先輩に気軽にアドバイスを求めたり、世代や性別を超えて情報共有ができるなど、自然な流れで受け入れる風土になるといいなと思っています。

サービスとしては、パートナーもまだいない方が自分の未来の妊活ために使ってもいいですし、妊活にまつわる相談を受けた側がどう対応すべきかアドバイスを受けるために使っても問題ありません。妊活を”妊娠するための活動”ではなく、”妊娠と向き合う活動”へ意味合いを変えていけたらと考えています。

会社側からしても、せっかく入社してくれた社員なのだから、退社することなく一緒に働けることを願ってるはずですので。妊活のような見えにくく相談しにくいと思われている悩みであっても、お互い様の気持ちでみんなで支え合って幸せになりたいですね」

 

妊活コンシェルジュサービス『ファミワン』を運営している『株式会社ファミワン』の代表の石川勇介さんに会社における妊活支援についてお話を伺いました。

リソースが限られる中小企業だからこそ、妊活支援をはじめとした従業員をサポートできるサービスを導入し“選ばれる企業”への発展を目指すことは、経営者として向き合うべき課題ではないでしょうか。

*kotoru / PIXTA(ピクスタ)