登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 【ハラスメント12種類】発生する理由や特徴、企業がとるべき対応策を専門家が解説
ハラスメント 被害者

【ハラスメント12種類】発生する理由や特徴、企業がとるべき対応策を専門家が解説

2022.07.10

ハラスメントを「会社における大人のいじめ」と称する人もいます。ハラスメントは放置してしまうと会社が法的な責任を負うことになることや、被害を受けた従業員からの損害賠償請求を受けるおそれがあるだけでなく、周囲の従業員のメンタルにも悪影響を及ぼすため、経営への悪影響は軽視できるものではありません。しかしながら、ハラスメントが会社の成長にも悪影響を及ぼしていることはあまり浸透していません。

今回は、会社で起こりうるさまざまなハラスメントの種類と企業がとるべき対策について解説していきます。無意識的なハラスメントを防ぐため理解を深めていきましょう。

ハラスメントのリスク

2020年6月1日に、「労働施策総合推進法」、通称「パワハラ防止法」が施行されました。ひと昔前に比べればハラスメント問題が個の問題ではなく、会社全体が取り組むべき経営課題であると捉えられるようになり、対策を行わなければならないという意識が高まっています。しかし、ハラスメントが会社の売上や利益など、会社の成長にも大きな悪影響を及ぼしている認識はあまり浸透していません。

被害者本人や周囲の従業員は、モチベーションの低下により生産性が低下します。また、被害者がメンタルヘルス不調によって休職や退職をするだけでなく、被害者が所属していた部署やチームにおいても連鎖退職が発生してしまい、会社の将来を担うはずであった優秀な従業員が退職してしまうおそれもあります。さらには、残された従業員が退職者の穴を補填するために過重労働に陥り、社内の労働環境の悪化、健康障害の増加に繋がるおそれも考えられます。このようにハラスメントが及ぼす悪影響は広範囲に波及するのです。

【参考】「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」/ 厚生労働省

【もっと詳しく】【パワハラ防止法】中小企業も義務化!パワハラが企業に与えるデメリットと法令の概要を弁護士が解説

ハラスメントが発生する原因

数多くの悪影響を起こすにもかかわらずハラスメントが発生してしまう理由には、“やってはいけないことを知らない場合”と“自身の言動がハラスメントに該当していることに気が付かない場合”があります。ハラスメントは意識的に行われる場合もありますが、無意識に行ってしまっている場合もあるのです。

職場で発生するハラスメントは、センシティブな問題が多く、周囲の従業員から加害者や加害者の上司などへの進言がしづらい場合が多いです。そのため加害者はその行為が客観的にみてハラスメントに該当する言動であることを自覚する機会がないという状態になります。

また、該当する行為には白黒明確な線引きがないため、人によって認識に差が生じがちです。「これくらいなら大丈夫」という思い込みなどが、無自覚なハラスメントを生み出しているのです。

会社で起こる可能性があるハラスメントの種類

毎日同じ職場、同じメンバーで働く関係では、意識しないうちに多種多様なハラスメント問題が発生しがちです。会社で起こりうるハラスメントの種類を知り、ハラスメントに該当する言動を知ることで、行為を未然に防ぐことができるという考えのもと、以下で12種類のハラスメントをご紹介します。

①パワーハラスメント

最も代表的なハラスメントの一つで、職場での上下関係や権力を利用した嫌がらせ行為を指します。上司から部下、先輩から後輩に対して行われる場合の多く、指導との線引きが難しいため、ハラスメント行為に該当するかは個別事案ごとに客観的な判断が必要です。

【もっと詳しく】そのやり方、パワハラかも!? パワハラの定義・具体例・対策【パワハラ事例集】

②セクシャルハラスメント

性的な言動によって不利益を被ったり、就業環境が害されたりするハラスメントを指します。性別や年齢、プライベートや容姿について不必要な発言をしたり、身体に触れたりする行為が含まれ、男性から女性に対して行われることの多いとされますが、女性から男性、また同性同士で行われる場合もあります。

【もっと詳しく】ちゃん付けはセクハラ?問題になりやすい「セクハラ発言一覧」と今すぐ取り組むべき対策

③マタニティハラスメント

妊娠や出産、子育てを理由とした嫌がらせや不利益な取り扱いを指します。妊娠・出産したことに心無い発言をされたり、育児休業などの制度を利用したことを理由として同僚や上司等から嫌がらせなどを受けたりすることのほか、不妊治療に対する否定的な言動も含みます。

④モラルハラスメント

暴力など物理的にではなく精神的な攻撃のことで、陰湿ないやがらせ行為等を指します。職権は関係なく、実行不可能な仕事の依頼をしたり、事あるごとに相手を否定したりするなど外部から見えづらい嫌がらせ行為です。加害者に自覚がないことが多く、物理的な証拠が残りにくいのが特徴です。

【もっと詳しく】放置は危険!経営者が知るべき職場のモラハラがもたらすリスクとは

⑤アルコールハラスメント

飲酒に関連した嫌がらせ行為や迷惑行為を指します。飲酒の強要や酔ったうえでの迷惑行為、飲めない人への配慮を欠くことも該当します。

⑥スメルハラスメント

においによって周囲を不快にさせる行為を指します。一般的に口臭や体臭を指しますが、強すぎる香水や柔軟剤のにおいもスメルハラスメントに該当する場合もあります。加害者には不快にさせているという自覚がなく、またデリケートな問題であるため対応が難しいのが特徴です。

⑦ロジカルハラスメント

正論を突きつけ相手を追い詰める行為を指します。セクハラやパワハラと同じように相手が心理的に圧迫されて仕事に支障が生じやすいためハラスメントの一種と捉えられています。感情面への配慮を忘れ、心理的に追い詰めてしまう行為ですが、加害者側は正しいことを言っている場合が多いため、業務の線引きが難しいです。

⑧リモートハラスメント

リモート環境を利用したハラスメントを指します。特定の者をWEB会議に参加させなかったり、常にカメラをONにすることを強要したり、業務上必要のないやりとりを行うなどの行為が該当します。リモートでの管理に慣れていないことや、公私混同になりがちなリモートワークの特性など、さまざまな原因があります。

⑨テクノロジーハラスメント

パソコンやスマートフォンなど、ハイテクノロジー技術に詳しい人やITスキルの高い人が、そうでない人に対していじめや嫌がらせを行うこと。わざと専門用語を使って指示を出し、相手を困惑させる行為もその一部です。

⑩ジェンダーハラスメント

男らしさや女らしさを強要するハラスメントを指します。「男なのに酒も飲めないのか」、「クライアントへのお茶出しは女の仕事」などといった発言や、性別による偏見を原因とした不公平な評価、採用や昇進機会の損失などが該当します。

⑪エイジハラスメント

年齢に対する嫌がらせを行う言動を指します。中高年で役職の地位に就かない従業員に対して「その歳で平社員なんだ」、女性に対して「そろそろ結婚して落ち着いたら?」など、年齢による相手を不快にする言葉が該当します。

⑫ハラスメントハラスメント

ハラスメントと過剰に主張する嫌がらせを指します。上司が部下に対して日常の業務指導をしたつもりが逆に「パワハラだ」と攻撃された、露出度の高い服を着てきた女性社員に注意したら「セクハラされた」と相談窓口に訴えられた、などのケースが事例としてよく挙げられます。

【もっと詳しく】部下からの逆パワハラはなぜ起こる?中小企業経営者が知るべき定義と対策とは

法律で規制されているハラスメント

12種類もの多種多様なハラスメントをご紹介しました。そのうち労働関連法で会社に対策措置を講ずるよう求めているのは、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントの3つに限られています。それぞれは、以下の法律に定められています。

パワーハラスメント:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(「労働施策総合推進法」

セクシャルハラスメント:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(「男女雇用機会均等法」

マタニティハラスメント:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律と育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(「男女雇用機会均等法」「育児介護休業法」

これらの法律は、労働基準法のように最低基準を定め、刑事罰をもって会社に法律を守らせるものではなく、ハラスメントはどういうものかをざっくりと定義した上で、会社にハラスメントのない職場環境を作り、以下の3つを行うよう求めています。

①ハラスメントを行ってはならないという会社の方針を明らかにし、それを周知・啓発する
②ハラスメントに関する相談や苦情に適切に対応するための体制を整える
③ハラスメント問題が発生したら、速やかに適切に対応する

これらの防止措置がなされていない場合には、都道府県労働局が会社に対して報告を求め、助言や指導、勧告を行うことで是正を図ります。また、会社が都道府県労働局の指導等に誠実に対応せず悪質だと判断された場合には、企業名が公表され会社の社会的な評価が失墜する結果となります。

被害者である従業員が第三者の力を借りて解決を図ろうとするケースもあります。具体的には、都道府県労働局による個別労働紛争解決制度を利用し、会社との解決を図る方法。また、加害者である従業員との解決を図ろうとする場合には、裁判をすることになります。裁判で、加害者である従業員の言動が不法行為である、会社に使用者責任があると判断された場合は、慰謝料や被害者が働けなくなった期間の賃金に相当する金額を支払わなくてはならない場合もあります。上記で紹介した、ハラスメントのない職場環境作りのための3つの措置は、会社の責任として必ず行う必要があります。

企業が実施すべきハラスメント対策

ハラスメント対策の法整備や社会の潮流から、ハラスメント問題を重要な経営課題と捉え、社内で定期的にハラスメント研修を実施する会社が増えています。ハラスメントのない職場作りのためには、従業員が正しい認識を持ち、ハラスメントの発生を未然に防ぐことが重要です。ハラスメントとはなにかを理解し、どのような言動がハラスメントに該当するのかといった法的な知識や、ハラスメントを防止するための心構えを身につけることを目的に研修を実施しましょう。研修方法は、講義形式による研修はもちろんですが、ケーススタディやロールプレイといったグループワークによって学習を進める方法もあります。会社や業種によってハラスメントにあたるか否かの明確な区別が付けづらいこともあるため、より理解を深める機会になるかもしれません。

【もっと詳しく】中小企業のハラスメント対策、具体的に何をすればいい?

最後に

最後に、ハラスメント対策は、会社ごとに独自の取り組みもさまざまです。厚生労働省の運営するポータルサイト「あかるい職場応援団」には、職場におけるパワーハラスメント事例や動画、研修情報などが掲載されており、非常に役立ちます。また、ダウンロードコーナーには職場内での啓発に役立つリーフレット、研修用資料、マニュアルなどが多数掲載されているので、是非一度参考にしてください。

 

今回は、会社で発生するハラスメントのリスクと原因、種類、対策方法について説明しました。会社全体で長期的な視点をもって、継続的にハラスメント対策を行っていくことが重要です。

【こちらの記事も】スグやめる理由は…?若手社員の離職率が高い会社が行うべき3つのこと

【参考】
『職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)』/ 厚生労働省
『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)』/ e-Gov
『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)』/ e-Gov
『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)』/ e-Gov
『個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)』 / 厚生労働省
『あかるい職場応援団』/ 厚生労働省

*Mills、Blue flash、beauty-box、天空のジュピター / PIXTA(ピクスタ)