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女性 拒否 嫌悪感 セクハラ

ちゃん付けはセクハラ?問題になりやすい「セクハラ発言一覧」と今すぐ取り組むべき対策

「セクハラは社会的に許されない」という認識は、会社の経営者や労働者の間でもかなり広がっていると思います。ですが、世代間のギャップや「これくらい大丈夫だろう」という認識の甘さから、職場でセクハラを引き起こしてしまうケースは多々あります。トラブル防止のためには、セクハラのボーダーラインについてしっかりと認識することが重要です。

目次

改めて確認したい「セクハラの定義」

まずは、どんな行為がセクハラに当たるのか、定義を確認しましょう。セクハラとは、他者を不快にさせる「性的な言動」および「性的な行動」のことです。

「性的な言動」とは、性的な関心や欲求に基づくものをいい、性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動や、性的指向や性自認に関する偏見に基づく言動も含まれます。

【参考】女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律/厚生労働省

セクハラとみなされる法的基準は?

セクハラを防止するのは、まずセクハラに関する事業主の方針の明確化と、周知・啓発が必要です。職場におけるセクハラの内容を明確にして、「うちの会社はセクハラを許さない」という方針を労働者に伝えます。

そのうえで、就業規則や文書などで、セクハラを行ったものに対して厳正に対処することを定めます。ハラスメント相談窓口の設置も義務付けられています。

セクハラをしてしまった労働者に対しては、状況を総合的に判断しながら指導をしていきます。例えば、軽微なセクハラがあったのであれば、口頭注意や始末書。注意しても何度もセクハラを繰り返す場合は、「戒告」「減給」「出勤停止」「懲戒解雇」というふうに懲戒の段階を上げていくことが考えられます。

会社には労働者を指導する義務がありますから、「どういった言動がセクハラに当たるのか」「どうしてその言動をしてはいけないのか」ということを根気よく教える必要があります。被害者、加害者の双方の声を聞きながら、職場環境を良くしていくことが大切です。

セクハラにあたるかどうかの判定は、「性的な言動があるか」「それが相手の意に反しているものか」「職場で行われたものか」ということが考慮されます。また、「労働条件について不利益を受けるか、就業環境を悪化させるか」ということも判断材料となります。

(1)「職場」において行われたものか?

この場合の「職場」は、社内や就業場所に限定されません。例えば出張先や営業車内、顧客の自宅、飲み会の席も、職務との関連性が強い場合は「職場」とみなされることがあります。

(2)労働者の意に反しているものであるか?

「意に反する」ということは、相手の望まない言動で不快に感じるもののことを言います。

例えば事務所で二人きりになったときに、女性社員の肩を叩いたり揉んだり、髪を触った行為が過去に不法行為と判断されています。(横浜セクハラ事件 東京高裁 1997年 11 月)

(3)労働条件について不利益を受けるか、就業環境を悪化させるか

例えば、上長の性的な言動をとがめたことから給与や賞与が下げられた、降格させられた、といった状況はセクハラに該当するでしょう。

セクハラの種類とは

職場におけるセクハラには大きく分けて2つあります。「対価型セクシャルハラスメント」と「環境型セクシャルハラスメント」です。

対価型セクシャルハラスメント

労働者が性的な言動を拒否したことにより、解雇・降格・減給、労働契約の更新拒否など、客観的に見て不利益な処遇を受けることです。

環境型セクシャルハラスメント

性的な言動により労働者の就業環境が悪化したため、能力の発揮に重大な悪影響が生じることです。労働者の意に反する身体接触によって強い精神的苦痛を被る場合は、一回でも就業環境が害されたと判断されることがあります。

【参考】雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために/厚生労働省

セクハラが横行している会社からは人が離れていく

セクハラのある会社は、さまざまなリスクをはらんでいます。もしセクハラを放置した場合、会社も使用者責任あるいは安全配慮義務違反を問われるおそれがあるでしょう。裁判になって損害賠償請求が行われた場合には、経済的な損失だけでなく風評も大きな問題になります。

「あの会社はセクハラが横行している」という情報が世間に流れたら、人材募集を出しても求職者から避けられることになりますし、取引先に対する印象も悪くなってしまいます。

すでにいる人材に対する悪影響も甚大です。被害者はもちろん、他の労働者も「セクハラに対して会社は何もしてくれない」と失望し、モチベーションが下がったり、離職したりするかもしれません。貴重な人材に定着してもらうためにも、セクハラの芽は摘まなければならないのです。

【こちらの記事も】人材流出が止まらない!社員が次々と辞めていく中小企業の3つの特徴と改善策

「かわいいね」とほめるのもNG?よくあるセクハラ発言一覧

労働者の胸や腰をさわるなどの身体的な接触をともなう言動は、誰が見てもセクハラという判断がしやすいものです。一方で「セクハラだと感じる発言」は個人差が大きく、ボーダーラインがあいまいです。具体的にどういう発言が問題になりやすいのか、10個の例をご紹介します。

いずれも、男性から女性に対しての発言だけではなく、反対のケースもありえます。相手の性的指向や性自認に関わらず、同性同士でもセクハラになりえることを想定してください。

①「デートしよう」「おごってあげるから食事に行こう」と執拗に誘う

社内の人間関係を円滑にするためには、食事をともにするのは有効な手段です。しかし、相手が性的な意図を感じるとセクハラになってしまいます。とくに遅い時間帯だったり、個室だったりすると「下心があるのでは?」と疑われることもあるでしょう。他意はない場合でも、特定の人を何度も誘わないように気をつけてください。

②「初体験はいつ?」「ちゃんと子作りしてる?」等性経験に関することに触れる

「初体験はいつ?」「夜の生活はどうなの?」といった質問を気軽にする人がいますが、相手にとっては不快感が高まりやすい発言です。見落としがちなのが同性同士でもNGだということ。例えば男性の上司が男性の部下に対して「お前は童貞だからな」と人前でからかうようなケースもセクハラにあたります。

③「彼氏・彼女いるの?」「結婚しないの?」等プライベートを根掘り葉掘り聞く

「結婚しないの?」「子どもはまだなの?」といった質問は、デリケートな部分に触れるので気軽に答えたくない人もいます。見落としがちですが、女性から男性に対して「恋人はいるの?」等とプライベートの人付き合いや人間関係について触れるのも、相手が嫌がればセクハラになります。基本的にプライベートに立ち入らないようにしましょう。

④「あの人は二股をかけている」「淫乱」「ゲイだ」など性的なうわさ話を広げる

社内外で性的なうわさ話を広げられると、被害者は職場に居づらくなったり仕事が手につかなくなってしまったりします。また「あいつはゲイだ」というような本人の了解を得ずに性的指向や性同一性等を勝手に暴露するのはアウティングと呼ばれる行為で、パワハラにも該当します。

⑤「かわいいね」「スタイルがいいね」「セクシーだね」など容姿をほめる

容姿をほめているときにも、性的なニュアンスが伝わると相手を不快にさせてしまいます。「いいにおいがするね」「色気がある」「胸が大きい」といった言葉も、本人は好意を示しているつもりでも、相手は「セクハラだ」「バカにされている」と感じるかもしれません。「スカートが短いね」等、服装に言及することも職務上必要がある場合を除いて避けたほうがいいでしょう。

⑥「女のくせになまいきだ」「男のくせに意気地がない」と差別する

「女のくせに」「男のくせに」という言葉は、一昔前は当たり前に使われていたかもしれません。しかし現代では、性別や年齢を強調するような発言はセクハラにあたります。同様に女性であるという理由だけでお茶くみや掃除、飲み会でお酌をさせる行為も、セクハラまたはジェンダーハラスメントだとみなされます。

⑦「イライラしてるけど、生理中?」「更年期障害?」

体調不良の女性を見かけると「生理?(笑)」「更年期?」などとからかう人がいますが、これはセクハラにあたります。中高齢の男性社員に散見されますが、本人は冗談を言っているつもりでも、相手は屈辱感や怒りを覚え、職場の空気も悪くなります。

⑧「○○ちゃん付け」「○○くん付け」で呼ぶ

こちらもセクハラの認識に世代間のギャップがあるかもしれません。昔は女性社員に“ちゃん付け”をしたり、男性社員へ“くん付け”をしたりすることは一般的でした。しかし現代では“ちゃん付け”“くん付け”は差別的なニュアンスがあるとされ、男女関わらず“さん付け”するのが当たり前になっています。

⑨飲み会で「俺の酒が飲めないの?」「お酒減ってないよ?」と飲酒を強要する

飲み会で性的な意図を持って、飲みたくないお酒を飲ませることはセクハラです。酔わせて抵抗できないのをいいことに、タクシーでホテルに連れ込むなどの重度のセクハラや犯罪につながるおそれがあるので絶対にやめさせましょう。性的な意図がない場合もアルハラ、パワハラになります。

⑩宴会で下ネタ、ひわいな話題で盛り上がる

会社関係の宴会でも、下世話な話題で盛り上がることがあります。その場では笑ってすごしていても、内心は不快で「居心地が悪い」と感じている人もいるかもしれません。アルコールが入ったとしても、仕事が絡む場では下世話な話はやめましょう。

以上が、職場でよくあるセクハラ発言です。大きく分けると「性的な話題」や「プライベートな話題」「男女差別がイメージされる発言」がNGだということがわかります。こういった発言は「このくらい大丈夫だろう」という勝手な憶測で行われていることが多く、本人に罪悪感や問題意識はほとんどありません。長く勤務している間に世間の常識が変わってきたということもあるでしょう。

セクハラがあったかどうかの判断は、基本的に「受け手が不快に感じるか否か」という主観に委ねられます。相手が不快に感じるかどうかは、お互いの信頼関係や性格、生い立ちなどが関係するため、個人差があります。一人ひとりが「君子危うきに近寄らず」の精神で、グレーゾーンには踏み込まないという意識を持つことが大切です。

【こちらの記事も】社員のセクハラが発覚したら…会社の責任は?過去事例・対応の注意点【弁護士が解説】

社員の意識改善のために企業が取り組むべきこと

職場におけるセクハラ対策として、男女雇用機会均等法では以下のことを義務づけています。

①事業主および労働者の責務

事業主の責務として、職場におけるセクハラ問題について労働者の言動に注意を払うこと、研修その他必要な配慮をすることが義務づけられています。労働者の責務としては、ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力することが定められています。

②事業主の相談等をした労働者に対する不利益取り扱いの禁止

事業主は、労働者が職場におけるハラスメントについて相談したことにより、解雇その他の不利益な取り扱いをすることが法律上禁止されています。

③自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合の協力対応

セクハラに関しては、社外の人間が行為者の場合でも、自社の労働者を守るための措置を行わなければなりません。また、自社の社員が他社の労働者にセクハラを行った場合は、他社が実施する雇用管理上の措置に協力するよう努めなければいけません。

また、義務ではありませんが「セクハラやマタハラなどの相談窓口と一体化して、総合的に相談に応じる体制を整備することが望ましい」とされています。

セクハラの多くは世代間のギャップや男女の認識の違いから生まれています。「こんなことが問題になるなんて知らなかった」と悪気なくセクハラをしてしまっている労働者も少なくないでしょう。セクハラが大ごとになれば被害者はもちろんのこと、加害者も周囲の人も傷つきます。だからこそ、会社はセクハラ被害者も加害者も生まない仕組みづくりをして、労働者を守る必要があるのです。

まずはセクハラに関する勉強会や研修の機会を設けて、「どういう言動がセクハラになるのか」という判断基準を明確にしましょう。それを全員の共通認識とすることが、セクハラ対策の第一歩です。

【参考】
『男女雇用機会均等法関係資料』 / 厚生労働省
『「職場におけるセクシュアルハラスメント」の種類は』/ 厚生労働省
『性的マイノリティに関する企業の取り組み事例のご案内』/ 厚生労働省

*Graphs、Rhetorica、keyphoto / PIXTA(ピクスタ)

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