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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 中小企業のハラスメント対策、具体的に何をすればいい?
パワハラ防止法

中小企業のハラスメント対策、具体的に何をすればいい?

2022.06.07

以前より問題視されている企業におけるパワーハラスメント、通称パワハラですが、法改正で今年度より各企業に向けてパワハラを防止するための措置の実施が義務化されたことをご存知でしょうか? 今回は、法改正を受けてハラスメント防止のために企業が実施すべき対策の内容や実施手順について、順を追って紹介していきます。対応すべき項目は多岐にわたりますが、中小企業としても下記に挙げる内容は最低限対応しておくべきでしょう。

※最終更新:2022年6月

パワーハラスメントとは

まず初めに、企業が対策をとらなければならない“パワハラ”の内容についておさらいしましょう。パワハラとは、職場内で行われる他者への嫌がらせやいじめの総称で、次の3種類の要素を全て満たす言動をいいます。

①上下関係などの優越的な関係を背景とした行為
②業務上で必要な範囲、かつ業務上で相当な範囲を超えた行為
③社員の就業環境が阻害される行為

具体的には、暴力行為などの身体的なものから、人格否定発言や仲間外れ、限度を超えた量の仕事を与える行為、逆に嫌がらせのため仕事を与えない行為、長期にわたる激しい叱責など、仕事上必要とはいえない内容が該当します。

【こちらの記事も】どこからがパワハラ?判断のきわどい裁判例3選【弁護士が解説】

ハラスメント防止のために企業が実施すべきこと

パワハラ行為を防ぎ、社員が安心して働くことができる環境づくりのため、2020年に労働施策総合推進法が改正され、企業に対して“パワーハラスメント防止措置”を求める運びとなりました。

2022年3月までは大企業にのみ義務化されおり、中小企業は努力義務とされていました。今年度から中小企業の事業主に対してもパワハラ防止措置が義務づけられることとなり、各企業へは早急な対応が求められています。

それでは、ハラスメント防止のために企業が実施すべき措置の内容を見ていきましょう。

①会社方針の周知・啓発

社内でパワハラの内容や禁止する旨を明確にし、就業規則や社内研修などを通じて社員へ周知・啓発をすること

②相談窓口や対応フローの整備

パワハラ相談窓口の設置や内容に応じた社内体制の整備を行い、社員へ周知すること

③パワハラ事後の迅速・適切な対応

パワハラが発生した際の事実関係の確認や被害者への速やかな配慮、行為者への措置、再発防止措置などを迅速かつ適切に対応すること

④その他講じるべき措置

被害者・行為者・相談者などのプライバシー保護措置や相談を理由とした不当解雇や不利益取扱いの禁止などを遵守し、社員へその内容を周知すること

【こちらの記事も】制度整備や社内周知はどう進める?中小企業が知るべきパワハラ予防策

パワハラ防止措置の実施ガイドライン

次はこの措置内容を会社内でどのように進めていけばよいかを解説します。

①パワハラへの理解を深める

職場でのパワハラを防ぐためには、まずは経営者、社員がともにパワハラとみなされる行為を正しく理解するところから始まります。パワハラの定義を知らずに過ごした場合、パワハラそのものは悪いことであると理解をしていても、それと知らずに相手を傷つけてしまう者が出てくる可能性があるためです。

厚生労働省で定義づけられているパワハラの内容をもとにし、リーフレットを作成・配布、社内で研修やセミナーを実施しましょう。これらの内容をもとに、自身の行為がパワハラではないかを改めて社員一人ひとりに考えてもらいましょう。

【社内研修資料に役立つ】職場におけるハラスメントの防止のために / 厚生労働省

②就業規則への規定・周知

パワハラの防止策として、就業規則でパワハラに関する規程を作成し、周知させる方法も忘れてはなりません。具体的には、社内で起こりうるパワハラ行為の内容を定義づけた上で、パワハラが発生した場合に会社側が取るべき対応策や行為者へ下す懲戒内容、相談窓口の設置などについて盛り込みます。

盛り込む内容が多い場合は、本則への条文追加という方法ではなく、セクハラ規定やマタハラ規定など、他のハラスメントと合わせて「ハラスメント規程」を新たに導入する方法を取ると、より内容を整理しながら規定をすることができるでしょう。

【こちらの記事も】就業規則の変更、トラブルを避けるにはどうすればいい?

③ハラスメント対策室の設置

パワハラに関する相談受付や実際にハラスメントが起こってしまった後に対応する窓口として、社内に「ハラスメント対策室」を設置する方法が効果的です。

パワハラ相談窓口については、どんな些細なことでも気軽に相談できるような体制を整えましょう。相談者のプライバシー遵守や社内での不利益がないこともあわせて周知させる必要があります。

また、実際にパワハラが発生した後の体制についても整備する必要があります。具体的な流れは主に以下の通りになるため、手順に沿ってマニュアルを整備し、迅速な対応が取れるよう心がけましょう。

①パワハラ発生
②発生内容の事実・状況確認
③程度の確認や行為者への懲戒・相談者や被害者へのフォロー
④再発を防止するための対策実施

【もっと詳しく】パワハラ相談があったら…企業がとるべき対応の流れを弁護士が解説【Q&A付】

研修やセミナーを実施する場合

先ほど述べた通り、パワハラ防止のための社内研修やセミナーの実施が、社員が自身の行為を顧みるきっかけになったり、具体的なパワハラ行為が想像できることでパワハラが起こらない社内体制づくりへとつながったりするメリットがあります。

パワハラ防止措置が中小企業へ義務づけられた流れを受け、社内研修に携わる外部機関などが社内研修やセミナープログラムを多々打ち出しています。これらの機関におけるプログラムを実施することでより質の高いハラスメント防止策を取ることも可能ですが、厚生労働省のホームページで無料ダウンロードできる社内研修資料を利用する方法も有効です。

研修やセミナーを実施する際のポイントは、一般社員だけではなく経営陣・管理職など上の立場に立つ者へも徹底して行うことです。パワハラは、上下関係により互いが対等に言い合えないような環境下で発生するケースが非常に多くみられます。重要職の者が取るべき対応や、仕事上で指示を下す際に強要と受け取られないようなコツを学ぶためにも、社内研修やセミナーの実施は効果が期待できます。

【参考】
社内研修資料「職場でのハラスメントの防止に向けて」 / 厚生労働省
管理職向け「職場のハラスメント対策セミナー」 / 厚生労働省

まとめ

中小企業で行うべきハラスメント対策についてご理解いただけたでしょうか。依然として不透明な経済情勢や新型コロナウイルス感染症の影響により、社員同士のコミュニケーション不足や精神に支障をきたす社員が増加するケースがみられます。このような中ではパワハラが発生しやすくなり、国が法律により厳しく取り締まる一因がここにあります。昨今では、パワハラを原因とした精神障害による労災認定の基準も明らかになり、パワハラを防ぐための対策は企業にとって必須かつ急務とされています。まずは社内体制の洗い出しや職場環境の見直しを行ってみることから始めてみましょう。

【こちらの記事も】【パワハラ事例集】そのやり方、パワハラかも!? パワハラの定義・具体例・対策

*freeangle、mits、tabiphoto、CORA / PIXTA(ピクスタ)