登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 放置は危険!経営者が知るべき職場のモラハラがもたらすリスクとは【パワハラとの違いも】
モラハラとパワハラの違い

放置は危険!経営者が知るべき職場のモラハラがもたらすリスクとは【パワハラとの違いも】

2022.05.30

モラハラが「モラルハラスメント」の略だということは皆さんご存知ですよね。ただ、一般的には家庭生活の中で問題となる、モラル違反の行為を指すと思われているようです。夫が妻に向かって、「誰に食べさせてもらっていると思っているんだ!」「お前は本当にバカだな」なんて言うのが典型的なモラハラです。それでは、企業でのモラハラというのは、どういうものなのでしょうか?

企業におけるモラハラとは?

モラハラは倫理や道徳に反する、いじめやいやがらせのことです。職場においてモラルに反する行為を行えば、基本的にはモラハラとなるのだと認識した方が良いでしょう。

モラハラ行為
・容姿について悪く言ったりあてこすったりする
・ことさらに悪いうわさを流す
・周りに人がいるにも関わらず説教をする
・本人に聞こえるように、他人と本人の悪口を言う(家庭で、夫と姑が妻に聞こえるように悪口を言うのがモラハラなのと一緒です)
・正当な理由なく仕事を与えない

また、一度だけなら大して気にならないようなことでも、繰り返し行われれば立派なモラハラとなります。例えば、挨拶されたのに存在を無視して返さなかったり、話している最中にわざとらしくため息をついたりといった行為です。

一般的には、常識で判断すれば“やっていいこと”と“いけないこと”の違いは分かるはずです。しかしその常識がズレていたら……? 「こんなこともモラハラになるのだ」と認識しておくことは、社内への注意喚起のためにはもちろん、自分自身がモラハラを行わないよう注意するためにも重要です。

モラハラとパワハラの違い

モラハラと似たものに、パワハラがあります。パワハラには、「優越的な関係に基づいて行われる、業務の適正な範囲を超えた、身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること」という厚生労働省の定義があります。読んで分かる通り、パワハラとモラハラは重なる部分があります。

ただ、パワハラは上司と部下のように“優越的な関係”下で生じるものなのに対して、モラハラの場合は特にそのような要件は必要ありません。また、パワハラの場合は“肉体的苦痛”についても該当しますが、モラハラは精神的な苦痛から構成されます。2つのハラスメントの“違い”にこだわる必要はありませんが、それぞれの性質は理解しておいた方が良いでしょう。

モラハラを放置したら…企業に問われる法的リスク

セクハラやパワハラと同様、モラハラを放置すると安全配慮義務違反として、企業の責任が問われる可能性があります。つまり、モラハラを行った本人だけではなく、そのようなモラハラを放置していた企業も損害賠償義務を負うことになるのです。

【こちらの記事も】パワハラが発覚したとき、会社の法的責任を回避するには?【事例・弁護士が解説】

取引先との関係や人材確保におけるリスクも

モラハラ問題を放置しているような企業では、取引先との関係や採用においても問題が生じる可能性も否定できません。最近は転職サイトなどに企業の口コミが載ることもめずらしくありません。パワハラ企業という評判はさまざまな面で企業に不利益をもたらします。

モラハラを放置した結果裁判に至った例

実際にモラハラの問題で裁判となった実例もいくつかあります。セクハラやパワハラに比べれば少数ですが、今後ますます増加していくものと思われます。

たとえば、同僚7名から執拗に悪口を言われ、上司に相談したが会社は適切な対応を取らなかった。その結果裁判となった事例があります。裁判所は同僚たちと会社に責任があることを認めました。

この他にも、同僚から「臭い」「死に損ないのブタ」などと執拗に悪口を言われたような事例でも、裁判所はモラハラの存在を認め、損害賠償を支払わせる判決を出しました。

企業がとるべき対策

2022年4月1日から中小企業も「パワハラ防止法」に基づくパワハラ防止のための措置が要請されることになりました。モラハラはパワハラと似ているところも多いので、事業主の方針の明確化と体制の整備、事後的な迅速な対応などパワハラ防止法で定められている措置を講じておけば、まずは十分でしょう。

 

モラハラは比較的新しい分野ですが、同僚間の問題も放置すれば企業の責任が問われることは理解しておくべきです。男女の問題(セクハラ)、上司と部下の問題(パワハラ)にとどまらず、全ての従業員において良い人間関係の職場を構築することが、企業に求められているのです。

【こちらもチェック】企業に求められる対策とは?パワハラと認められなかった事例も

*metamorworks、星野スウ、阿部モノ / PIXTA(ピクスタ)