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ストレス 経営者

まさか自分がうつに?孤独を感じる経営者に今すぐ試してほしい「セルフケアの方法」

2022.09.16

経営者は、本質的に孤独なものです。組織のマネジメントや事業の成長、売り上げ、資金繰りなど、悩みはつきません。また、経営者の中には、“タフで自立した”イメージを大事にしていたり、“自分で頑張って解決する”乗り越え方をこれまで繰り返してきた、弱みを見せることをよしとしない価値観の方もいらっしゃるでしょう。

経営者は重い責任を担い続けることが多いので、どのようにコンディションを整えられるかが、個人としても、事業としても、成功するカギになります。本記事では、産業医の筆者が、経営者やマネジメントを担う方々に向けて、自分のコンディションを整える“セルフケア”の方法をお伝えします。

経営者がメンタルヘルス不調になる要因

経営者の主なストレス要因は3つあります。1つ目は、精神的なプレッシャーです。大きな決断をしなければならない、多額のお金を扱うことが多い、従業員の生活がかかっているという責任があります。2つ目は、長時間労働です。経営者すべてに当てはまるわけではありませんが、労働基準法に守られていない場合、労働時間や深夜・休日労働、有給休暇といった概念の枠の外で働くため、自分で自分の時間や健康の管理をする必要が出てきます。3つ目に、相談できる立場の者がいない、家族や友人にも話せない情報があるといった、“サポート資源(ソーシャルサポートと呼ばれます)”が限られていることです。

過度なプレッシャーが続いたり、休息や睡眠が足りなかったりすると、体調不良やイライラなどのストレス反応を引き起こし、うつ病などのメンタル疾患のきっかけとなります。病気には至らない場合でも、心身のコンディションが悪いと、判断が遅くなる・判断を誤る・大事なことを見落とす・攻撃的になってしまい人間関係を損なうなど様々な問題が起こりえます。コンディションが悪くなる前に、メンタル不調のサインに気づく・対処するというセルフケアがとても重要なのです。

メンタルヘルス不調のサイン

ストレスがかかった時に出るサインを“ストレス反応”といいます。これは、身体反応、気分・感情、行動、認知の4つに分けられます。

身体反応のサインとは、頭痛・腹痛・めまいなど“からだの症状”です。気分・感情に出るサインは、不安やいらいら・怒りなど。行動に出るサインとは、アルコールの量が増える・買い物でストレスを発散するなど、他人から観察できる行動の変化のことをいいます。最後に、認知のサインは、頭の中の考えに出るものです。“マインド”や“思考”という言葉のほうが、馴染みがあるかもしれません。ストレス反応としての認知には、「私が悪かったのかな」と自分を責める考えや昔の嫌なことを思い出すなどがあります。

ここでご理解いただきたいのは、ストレス反応が出るのは正常な反応だということです。ストレス反応に気づいて適切な対処をすることで、病気に至ってしまうのを防ぐことができるでしょう。

【こちらの記事も】あの人がどうして?誰でもなり得る「心が壊れる前兆」と経営者として取り組むべきこと

ストレスに気づき、自分で自分のケアする

自分で自分のケアをすることを“セルフケア”といいます。セルフケアは、自分がご機嫌に仕事をするための大切な行動です。「甘えでは?」「さぼっていると見られるのでは?」と心配する経営者の方もいらっしゃいますが、そうではありません。

本来は、「体調があまり良くない」と感じるときは、ストレスの原因から距離を取り休息を取るのが一番です。雇われて働いている人であれば、疲れたら有給休暇を取って休む、病気になったら休職制度を利用するなどの選択肢があります。ただ、経営者という立場では、“仕事を休む”という選択はなかなか取れない状況が多いでしょう。そこで、ストレス反応に気づいたらすぐできる仕事から離れなくても実践しやすい、セルフケアの方法をいくつかご紹介します。

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①ストレスを外在化する

感じているストレスを、紙に書きだしたり、スマホに打ち出したりしてみましょう。これは、心身の“内側”で生じた現象を、紙やスマホといった“外側”の媒体に“出す”行為です。こうすることで、自分や状況を客観的に眺めることができるのです。ストレスを客観視することで、ストレスしか見えていなかった状況から、「私は今、ストレスを持っている」「ストレスはあるけれども、そうではない部分もある」と他の部分が見えやすくなります。例えば、“つらさ”を数値化してみると、「こんなに自分は疲れているんだ」「1週間前よりも元気になったかな」ということに気づきやすいです。

②日常の生活の中にささやかな楽しみを持つ、自分へのごほうびを用意する

仕事をしているとどうしても頭を使うことが増えますから、ストレス解消(ごほうび)には五感を使うものを用意してみましょう。例えば、味覚であれば、美味しいものを味わって食べる。ながら食いではなく、食事の時はテレビやスマホをオフにして、お料理に意識を向けてみましょう。聴覚であれば、好きな音楽。虫の音など自然の音に耳を傾けるのも良いでしょう。嗅覚であれば、アロマセラピー。本格的なものでなくても、入浴剤でいろいろな香りを用意しておいて、その日の気分で選ぶのも楽しいものです。視覚であれば、美術館に行く。芸術に触れると、普段使っていない脳の部分が活性化します。触覚であれば、ペットを撫でるなど、心地よいものに触れる。あるいは、マッサージなど人に触れてもらう方法もあります。

仕事をしていると思考することに一生懸命で、”ただ、感じる”ことを忘れがちです。短い時間で良いので、五感を使い、こまめにリフレッシュしましょう。

③頼れる人を持つ

経営者はサポート資源(ソーシャルサポート)が限られているというお話をしました。経営者である以上、外に出せない相談事や、気軽に相談することが難しい場合もあるでしょう。

そこで、守秘義務を守ってくれる専門家を頼ることをおすすめします。例えば、メンターやコーチなど、プロフェッショナルの活用です。評価や批判なしに、ただ話を聞いてもらえる人がいるというのは大切なことです。また、業界の事情やステークホルダーとの関わりがない、プロフェッショナルな聴き手と話していると、自分の思考やストレスの要因が整理され、これまで思いつかなかった解決法が思い浮かぶということはよくあります。

 

今回は、経営者の方に向けて、ストレスに気づくことの重要性と自分で自分をケアする(セルフケア)方法をご説明しました。小さなストレスに気づき、手当することを繰り返していると、ストレスが大きくなる前に対処できるようになります。また、周りの人のストレスに気づいたり、サポートしたりすることもどんどん上手になります。それは経営者としての強みになるでしょう。経営者だからこそ、“自分をケアすること”“自分を助けること”を大事にしてください。

【こちらの記事も】メンタル不調で休職…産業医がいない企業で実施すべきメンタルヘルス対策とは

【参考】
『セルフケアの道具箱ストレスと上手につきあう100のワーク』(伊藤絵美)/晶文社
コロナ禍のセルフケア「ハートランドごほうび大全集」』/ハートランドしぎさん

*PanKR、Ushico、けあとん、kouta、freeangle / PIXTA(ピクスタ)