出社したいと思えるオフィスに!デザインワン・ジャパン代表取締役・高畠 靖雄氏にインタビュー
時代の最先端をひた走る経営者に、経営の本質に関わる“5つの問い”を投げかけ、成功の秘訣を紐解くのが本連載「成功を掴んだターニングポイント」。今回は、株式会社デザインワン・ジャパンの代表取締役・高畠 靖雄氏と、同社のグループ会社である株式会社DEECHの執行役員である佐藤 正氏にお話を伺いました。
株式会社デザインワン・ジャパンは2005年に創業し、口コミサイト『エキテン』の運営などインターネットメディア事業を展開する会社です。エンジニア出身の高畠氏曰く、「起業当時は営業活動が上手くいかず、苦労した」とのことですが、着実な事業拡大を経て東証一部上場(現在はスタンダード市場)となりました。企業を成長させるうえで重要なこととは何か。経営の本質に直結する“5つの問い”を投げかけてみました。
目次
<プロフィール>
株式会社デザインワン・ジャパン
代表取締役
高畠靖雄兵庫県高砂市出身。岡山大学大学院工学研究科修了後、富士通へ新卒入社し、CRMソリューションビジネスに関わる。2005年にデザインワン・ジャパンを設立。地元兵庫県高砂市の活性化のために何かできることはないかと考え、地域・地元の店舗口コミサイト『エキテン』を開設し、ITによる日本の活性化を進める。
Q1.貴社の事業について教えてください
高畠 靖雄氏(以下、高畠氏):弊社は、大きく分けてメディア事業とDX(デジタルトランスフォーメーション)事業の2つを行っています。メディア事業の始まりは、創業メンバーの家族による悩みがきっかけで、「老舗の和菓子屋でも掲載できるグルメサイトがないか」という声から立ち上がりました。現在、国内最大級の口コミサイトとなった『エキテン』は、グルメ以外も含むオールジャンルに対応しているWebサイトです。
DX事業は、ビジネスの企画設計からアプリケーションやシステムの開発、さらにはサービスの運営まで、各分野のスペシャリストがサポートします。また、新規事業における設計段階からのサポートサービスも提供しています。
Q2.創業から「組織づくり」における苦労はありましたか?
高畠氏:創業してまもなく組織運営が得意な人間が入社したおかげで、創業初期の組織の苦労はなかったものの、 上場したタイミングでいくつかの課題が噴出しました。業務上のアバウトな部分が摩擦につながり、社員たちの不満が大きくなり、幹部たちの揉めごとが増え、退職する社員も出始めました。そこから、責任や権限、人事制度を改善したことで組織は落ち着きましたが、組織の拡大と共に業務ルールの見直しは最重要と認識を改めました。
現在は、リモートワークによって選択肢のある働き方ができる一方で、現場のリアルな状態が見えにくいという課題があります。やはり、メンバー間でどのようなコミュニケーションが行われているのかなどが把握しづらく……。情報も人を経由するとバイアスがかかった状態で入ってくるため、重要な情報が抜けてしまうことも散見され、直接現地へ訪れる機会を増やすようにしました。やはり、リモートと現地では情報量がまったく違いますから、経営に響いてくる中長期的な課題だといえます。
Q3.オフィス移転のきっかけとその後の変化は?
高畠氏:オフィスは、M&Aをしたタイミングと、人員が増えて入りきらなくなった時期に移転を繰り返していました。オフィスを分散させると団結力が低下する恐れがあるので、基本的にはワンフロアのオフィスです。
高畠氏:withコロナでは、オフィスの縮小も考えましたが、結局大きな変更は行わないことにしました。現在は、リモートワークとオフィス勤務を掛け合わせた、出社2日のハイブリッドワークを導入しています。リモートかオフィス勤務のどちらが最適かというと、今は未知数です。
弊社は子育て中の社員が多いので、自由度の高いリモートワークにメリットを感じる方が多いのですが、やはり現場の状況を知るのは重要ですので、オフィスも必要だと考えています。
Q4.企業の成長につながるオフィス環境とはどのようなものでしょうか
佐藤 正氏(株式会社DEECH執行役員/上写真、左):DEECH社とデザインワン・ジャパンの協同で運営しているメディアでDX企業の取材をしています。その中で、成長している9割以上の会社が、遊び心あるオフィスだったことに気づいたんです。おもしろい事業をしている会社はオフィスもユニークである確率が高いように思います。どのオフィスも「人とのつながりを重視しているな」と感じましたし、コミュニケーションやディスカッションが自然に生まれる環境でした。
それと、このメディアで最近始めたのが、お酒を飲みながら受講できるオフラインイベント。そこで勉強会を開いています。今後、一つの組織のあり方として、「勉強会があるから訪れよう」と思えるような仕掛けを組織でいかに取り入れられるかだと思っています。
高畠氏:弊社も、風通しのよいデザインオフィスを目指しました。オフィス内にバーカウンターも設置したので、仕事を終えた従業員たちがお酒を飲みながら交流しています。私はお酒が飲めないんですけどね(笑)
他にも、コーヒーマシンや卓球台の設置、上長の上座がない家具の配置、いろんな場所でミーティングできるスペースのように、経営者と従業員がフラットになって集えるオフィス環境が成長につながるポイントだと思います。
Q5.今後、オフィスをどのように整えていきたいですか?
高畠氏:ハイブリットワークですので、オンラインミーティングによる会議室の利用が増えました。会議室が足りないという声も上がっていますから、個室ブースの増設を検討中です。我が社では、従業員の意見をもとにオフィスをデザインしています。ただ、オフィスのシンプルさも重視しているので、必要ない部分は削っていく予定です。
また、今後のオフィスの方針として、強制ではなく「来たいと思えるようなオフィス」にしていきたいです。強制参加というのは、大きくエンゲージメントを下げてしまう要因の一つだと考えています。
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Q6.今後の展望について教えてください
高畠氏:引き続きM&Aにも力を入れていきたいと考えています。エリアの拡大も視野に入れつつ、コミュニティ型の組織が弊社のトレンドだと思うのです。会社の内部と外部の事業が、気軽にお付き合いできるような組織を目指したいです。会社組織のDX化をサポートするメディア『DX王(株式会社デザインワン・ジャパンと株式会社DEECHが協同でリリースしたオウンドメディア)』というインフラを使いながら、弊社のグループ間でも力を発揮していけたらと思っています。
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創業から18年、事業と組織ともに成長を続ける上場企業の組織づくりや、オフィスについての考え方を聞くことができました。新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行し、ハイブリッドワークが主流となりつつある今、社員の出社率に悩みを抱えている企業も多いはずです。ぜひ、株式会社デザインワン・ジャパンの“出社したくなる仕掛け”を参考にしてみてはいかがでしょうか。
Interview&Photo/Shota Ogawa