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経営者

マイクロマネジメントとは?社員のやる気を削ぐ「悪いマネジメント」の見極め方

2023.11.14

先日Z世代の方たちとどう接するべきかという記事をご紹介いたしました。Z世代の方たちにも関連するのですが、最近私の周りで同じような状況で立て続けに起きたある出来事があります。それは、上司が部下を信用しないあまりに過干渉となってしまい部下がモチベーションを失った結果、退職してしまったという出来事でした。

「管理職」という用語も本来的に筆者はあまり適切でない言葉だと考えているのですが、管理を超えて“干渉”や、場合によっては部下に対して“妨害”を行ってしまう上司の行動を目にすることが少なからずあります。しかも上司自身は自らをよくやっていると評価していたり、それどころか「部下が仕事を上手にやってくれないから自分が過干渉しなくてはならない」と悲嘆的に自己肯定していたりするケースも少なからず目にします。経営者自らが現場に細かく報告を求めるケースもあります。

このような状態を今日のテーマである“マイクロマネジメント”と呼びます。今回は経営者が気づかずに行っている悪いマイクロマネジメントとは何かについて解説していきましょう。また、適切なマネジメントを行うための見極め方やアドバイスもご紹介します。

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マイクロマネジメントとは

改めてマイクロマネジメントとは、経営者・上司が細部まで部下の業務を管理し、細かい指示やチェックを行うことを指します。経営者は本来、戦略的な判断やビジョンの設定に集中すべきですが、マイクロマネジメントに陥ることで現場の効率性を阻害し、部下の能力や意欲を奪ってしまう可能性があります。

マイクロマネジメントのメリットとデメリット

次に、マイクロマネジメントのメリットとデメリットについて考えていきましょう。

デメリット1:現場の意欲が低下する

まずはデメリットですが、マイクロマネジメントはとにかく細かく指示・命令を行うため、現場の社員から自己判断や主体性を大きく削いでしまいます。

そして自ら動くことよりも指示・命令待ちの状況を生み出してしまうため、本来備えている能力も発揮することを控えさせ、現状からの成長を阻害してしまう可能性があります。

デメリット2:経営者が本業にあてる時間がなくなる

経営者側のデメリットとしては、経営者の時間やエネルギーが細かい管理作業を行うことに消費されてしまうため、本来の業務に取り掛かる時間がなくなってしまうという弊害があります。

メリット:新規事業など経営者が業務に大きくかかわる場合の状況把握・業務推進

一方で、マイクロマネジメントが必要な場合もあります。

新しい領域に事業として取り掛かる場合や、実施したアクションの経緯や詳細を記録し、事業の推進と実証実験を同時に行わなければならない場合です。いずれも経営者自身が仮説検証しながら推進する場合に限られます。

マイクロマネジメントは悪?現場の感覚とは

さて、マイクロマネジメント自体が悪影響なのか、特に現場の社員はどのように感じているのでしょうか。筆者の経験から実例を紹介します。

筆者のクライアント企業の話です。この企業の経営者は創業経営者ではなく、先代から引き継いだ2代目経営者でした。そのため、特定の分野の専門性を持っているのですが、事業全体については経験がない分野も少なからずありました。

本人の中では「説明責任や管理責任を果たすため」という動機づけなのですが、作業の計画内容や進捗または予算の状況などについても、微に入り細に入りチェックをし、自分が理解していないことをとにかくなくしていこうという方向に努力を重ねました。

筆者が相談をいただいたタイミングでは、多くの社員がこの状況にストレスを感じており、なかにはメンタルに疾患を抱えてしまった方もいました。この他にもモチベーションを削られていると感じている社員も多く、トップ自らが細かいチェックをしすぎてしまい「ここまで細かく説明しないと理解してもらえないのか」という失望感を招き、経営者自身が社内での信頼を失い始めていました。

このように、社員はマイクロマネジメントを受けることでストレスやモチベーションの低下を感じることがあります。一方で、経営者自身はマイクロマネジメントをしているつもりはなく、現場の意見やフィードバックを重視しているつもりかもしれません。しかし、現場の感覚と経営者の意図が異なることもあるため、注意が必要です。

経営者が気づいていないマイクロマネジメントの兆候

経営者自らがマイクロマネジメントに陥っていることに気づきにくい理由について考えていきましょう。

経営者は自身の行動や意思決定に自信を持っていたり、「自信を持たねばならない」と決めつけていたりします。そのため自身のマイクロマネジメントの兆候を見逃してしまうことがあります。

また、経営者は業績における不安や現場への不信感からマイクロマネジメントに走ることもあります。経営者が気づきにくいマイクロマネジメントの兆候の具体例をいくつか挙げます。

1. 業務の細かい指示やチェックの頻度が高い

経営者が常に現場の業務に介入し、細かい指示や報告を求めることがある場合、マイクロマネジメントの兆候といえます。

  • 日常的な業務の進捗や成果に関して頻繁に詳細なレポートを要求する
  • 日常業務の進捗を過度に精査・批判し、社員の業務に対する自信を奪う
  • 社員の作業を過度に監視し、自由度やプライバシーを侵害する

2. 意思決定の中心が経営者に偏っており、チームメンバーの裁量が制限されている

経営者がすべての意思決定を一人で行い、現場の従業員の意見や提案をあまり受け入れなかったり、経営者が現場の従業員の裁量を制限し、細かな承認や報告のプロセスを設けている場合、マイクロマネジメントの兆候といえます。

  • 単純なタスクでも、社員に詳細な手順を指示することが頻繁にある
  • 小さな判断や決定も経営者が独占的に行い、チームの意見や自主的な判断を許さない
  • 方針や業務内容を頻繁に変更し、社員に混乱や不安を与える
  • チームメンバーの意思決定や行動に対して常に事前の承認を求める
  • 「こうするのが正しい」と一つの方法を強制し、社員の独自の方法を許容しない

3. コミュニケーションの一方的な流れ

経営者がコミュニケーションを主導し、現場の従業員が発言する機会が少ない場合、マイクロマネジメントの兆候といえます。

  • 経営者が会議やプロジェクトの進捗報告で一方的に話を進め、現場の従業員の意見やフィードバックをあまり求めない
  • 必要な情報をチームや社員と共有せず、自らが情報を一手にコントロールしようとする

これらは一部の具体例であり、経営者が気づきにくいマイクロマネジメントの兆候の一部です。経営者は自身の行動や組織の様子を客観的に観察し、悪いマイクロマネジメントをしていないかを注意深く見極める必要があります。

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マイクロマネジメントに代わる現場管理・運用とは

最後に、マイクロマネジメントに代わる現場管理や運用法について解説します。

現場の従業員の自己判断や主体性を尊重し、彼らの能力を最大限に引き出すことが重要です。経営者は目標設定やフィードバックの提供、適切なリーダーシップの発揮などを通じて、現場の自律性と成果をサポートすることが求められるでしょう。

よくないマイクロマネジメントに陥る本当の理由

最後に、筆者の目線から見て経営者の方々に耳の痛いことを申し上げます。

よくないマイクロマネジメントに陥っているかどうかを確認する際、最も重要なことは“経営者自身のモチベーションがどこにあるか”です。

「出来が悪い社員をなんとかしてやろう」「自分のいうことを聞かせてやろう」「思い通りに現場をコントロールしたい」といった、本来は適切ではない感情を持っていませんか?

事業が成長するためには社員も成長する必要があります。分野によっては経営者自身よりも経験豊かで事業推進力のある社員がいてくれないと、その事業は経営者本人ができる範囲よりも先に行くことは決してできません。経営者は大きな権限を持っているからこそ、常に成長を目指す謙虚さを持って、他者をコントロールするような傲慢な態度に周囲から受け取られることのないように自らを戒めねばなりません。

そして、自らが思っているよりも社員は経営者に本音をいいません。社員は経営者のことを辛辣に評価しているのです。これは現場でヒアリングする筆者が常に目にする光景なので、例外はほぼないと思ってください。経営者を前にすると、社員は経営者のことを礼賛し機嫌をとろうとします。そのことを強く自覚することで、自らバイアスに陥ることなく正しいリーダーシップを発揮することができると信じます。

大変難しいことを申し上げましたが、事業を立ち上げ育てるという困難に挑んでいる経営者であればきっと成し遂げられることも同時に信じております。

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*Nopphon_1987, insta_photos, Indypendenz, metamorworks / shutterstock, Lukas, ふじよ / PIXTA(ピクスタ)