ワンマン社長は中小企業に必要?ワンマン経営が導く組織崩壊の末路と成功
“ワンマン社長”と聞くと悪い印象を持たれる方が多いかもしれません。しかし、会社の状況によっては必要なタイミングもあります。一方で、誤ったタイミングでのワンマン経営は組織の成長を阻害することもあるのです。今回は、数多の組織を見てきた経営コンサルタントである筆者がワンマン社長の役割や必要な状況における判断について解説します。
目次
創業期は必然的にワンマン社長が主役
創業期はまだ事業が安定していないため、あらゆる事態に対して臨機応変にスピード感を持って意思決定判断を行わなくてはなりません。ワンマン社長と思われるくらいの強い思い・信念を持ち、自ら先頭に立って課題を解決していく人柄でなければ創業期のリーダーは務まらないことも少なくないでしょう。
実際、創業期は一人または少人数の共同経営者に頼ったワンマン体制による経営がその企業の強みや個性であることも多くあります。“カリスマ社長”と呼ばれるような例はまさにその一例でしょう。
さまざまな資料・文献にワンマン社長のメリット・デメリットという記事を確認できますが、ワンマン経営のメリットは、まさに難しい意思決定判断でもスピード感を持って行うことができるという点につきます。
ワンマン経営から離脱が必要になる時期とは?
一方で、ワンマン社長による経営のままでは、事業の成長に限界があります。社長がいかにスーパーマンであったとしても一人の人間にすぎず、抱えられる業務量は限界があります。一人の経営者がすべての経営判断を抱え続ける許容量を超え、さらに事業を成長させねばならない時期は、順調に事業が発展していく先に必ずやってきます。
幹部を育成し、権限委譲を行う
そのタイミングで、運営の中での無理や非効率を感じ始めたとき、まさに先日の記事でご紹介した経営幹部の育成を行って、経営者自らの権限委譲を進め、よい意味でのチームワークが組織内で広まっていくような移行に取り組んでいく必要があります。
事業が成長し職員が増えた状態で、経営者が裁量権限をすべて手放せないような状況のままでは、自分のところに情報が届くまで時間がかかってしまうため、意思決定が遅滞するようになり、事業のスピード感は著しく失われます。並行して、組織内には社長の決定に委ねてすべての運営を行う因習がはびこってしまう一因にもなってしまいます。
経営幹部から現場レベルまでにそれぞれの立場で執行できる権限の委譲をしっかりと設計して進めていくことが継続的な事業成長には必須です。
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再びワンマン社長が必要になるときも
変革期にも同じような強いリーダーシップが必要なことがあります。創業期のリーダーは事業を立ち上げた本人であることがほとんどで、事業の進むべき方向性や組織のあり方を決定するのは自分自身であると自認もしていますし、周囲もそのように認識しています。
事業の創業期を乗り越え安定期に入り、一定の成功を収めることができ、場合によっては地域で老舗と呼ばれるようになった企業でも、継続的なビジネスモデルの見直しを行わなければ事業継続の危機を迎えてしまうことも少なくありません。詳細は以前の記事にもご紹介したとおりです。
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そのようなときに、組織全体は“過去の成功体験”に縛られてしまっており、これまでのやり方に囚われ、あらゆる変革や新しい取り組みに抵抗的になってしまうことがあります。そんなときこそ、ワンマン社長として失敗したら全責任を背負う覚悟で大鉈(おおなた)を振るう人材が必要になります。
事例:組織成長のためにワンマン社長として大鉈を振るう
筆者が懇意にさせていただいているクライアント経営者から伺ったお話です。こちらの経営者は創業3代目の経営者ですが、引き継いだときには赤字が累積して倒産寸前の状態でした。この状態から一つひとつ成功体験を積み上げ、見事に会社を黒字転換し、業界でも著名な経営者としての評価を受けていらっしゃいます。
経営を引き継いで10年以上経た現在、内外でそのような評価を得ている彼ですら、今まさに “現場の主”化している社員が派閥勢力を構成し、社内制度改革に対して感情的に妨害工作を行っていることに苦慮しているそうなのです。こちらの経営者は地域の雇用などにも常に気を向けていらっしゃる方(というか一族)で、大鉈を振るう一方で社員に対しての家族的な扱いで守り通すことにおいても努力している方です。
筆者としては、こちらの推移を今後も見守りたく思いますが、やむを得ず業務命令に従わないことがこれ以上積み重なると証跡を取りながら退職勧奨を行っていくしかないとお考えのようでした。
「これが果たしてワンマン社長なのか?」というと議論はあると思います。こちらの経営者は、事業の方向性や市場の変化なども組織内にしっかりと伝え続けている方です。筆者がお会いした社員の方々も、ほとんどはよくその内容まで咀嚼して理解していらっしゃいました。
しかし、こうした事業変革を行うタイミングによっては経営者自らが英断を下す必要があり、決して合議的な判断では下せない判断も必要になっていることがよく伝わってくる事例でした。
ワンマン社長は必要なときに迫られて務めるもの
今回は、ワンマンスタイルの経営者にありがちな悩みである、部下との距離感を感じることや、事業の現状と経営者自身のマネジメントスタイルがマッチしなくなったという課題から、ワンマン社長の役割や必要な状況における判断について紹介しました。
実際、経営者が積極的に強いリーダーシップを発揮することで事業成長できてきたでしょう。一方で、ワンマン経営の弊害として「部下が過度に社長の機嫌を伺うようになってしまった」「意思決定方法が事業の規模と一致しなくなってきた」という理由で、事業のスピード感が損なわれてしまうことがあります。そのように感じた場合、よい経営スタイル変革の時期と考えてみてください。
また、経営幹部の育成を積極的に行うことで事業の成長に寄り添った組織変革を促すことができるようになると考えます。ぜひ、自社の状況に合わせたリーダーシップを考えてみてください。
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*metamorworks, EKAKI, ふじよ, takeuchi masato, Kazpon / PIXTA(ピクスタ)