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TOP > 記事一覧 > 経営・財務 > ゲーム業界の文化を変える!AIQVE ONE株式会社代表取締役社長・山崎太郎氏にインタビュー
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ゲーム業界の文化を変える!AIQVE ONE株式会社代表取締役社長・山崎太郎氏にインタビュー

2023.12.04

時代の最先端をひた走る経営者に、経営の本質に関わる“5つの問い”を投げかけ、成功の秘訣を紐解くのが本連載「成功を掴んだターニングポイント」。

今回は、AIQVE ONE株式会社代表取締役社長 山崎太郎氏にお話を伺いました。

AIQVE ONE株式会社は2021年にソフトウェアテスト・品質検証サービス会社とゲーム・XR開発会社とのジョイントベンチャーとして設立。「品質管理に、革命を。」をビジョンに掲げ、AI自動化ツールを用いたテストの効率化で、人とAIの最適なコラボレーションを実現しました。今までにない革新的な品質管理サービスを軸に展開をしています。

今回は、AIQVE ONE株式会社の設立から現在までの転換期や組織づくりについて、経営の本質に直結する“5つの問い”をインタビュアーのもりみき(サムネイル画像、右)が伺いました。

AIQVE ONE株式会社
代表取締役社長
山崎 太郎

2002年にソフトウェアテスト専業の株式会社ベリサーブに入社。以来、ソフトウェアテスト業界一筋20年。2021年2月より株式会社ベリサーブとmonoAI technology株式会社との合弁会社であるAIQVE ONE株式会社の代表取締役に就任。

Q1. 自社の歩みの中で印象に残っている”転換期”について教えてください

まさに「オフィス移転」が一番の転換期でした。当社は「品質管理に、革命を。」をビジョンに、AIや自動化といったテクノロジーを活用したソフトウェア品質保証事業を行っておりますが、社風や分野が異なるゲーム業界企業とのジョイントベンチャー設立がスタートでした。ゲーム事業を専門にする企業と、ゲーム事業以外を専門にする企業であったためか、ビジネスモデルや文化など、すべての毛色が異なっており「ゲームに携わる業務しかやりたくない」という社員との軋轢が生じていました。

社員には、「当社はゲームだけの会社ではなく、テストの会社です」と伝え続けてはいましたが、なかなか理解を得られませんでした。とはいえ、会社の利益を考えたときに、ゲーム業界の事業だけではどうしても利益が出づらい構造であるため、会社経営の観点から考えると、事業の幅を広げていく必要がありました。

どうしたら軋轢を解消できるのかと考えたときに、根本的に働く環境を大きく変えることで、雰囲気や文化・社風を一新しようと思い、オフィス移転に踏み切りました。

Q2. 自社のパーパス、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)についてお伺いします

当社の「品質管理に、革命を。」というビジョン自体は前身の企業のものですが、私自身もこのビジョンに非常に共感するなかジョイントベンチャーの設立に至った経緯があり、現在もこのビジョンを継承しております。

実は、ゲーム業界におけるテスターなどの業務は報酬単価が低いため薄利多売となり、給与や処遇が悪く、雇用も安定せず技術力も上がらないという問題を抱えております。テスター業務だけではどうしても社員が望むライフプランを描けないというのが現実で、年齢を重ねるにつれ、生活のためにゲーム業界から離れていく人も多くいました。

そのため、当社に来れば一生安心して本人が望むキャリアプランを描くことができ、やりたいことを諦める必要がない報酬・待遇にしていきたい。そのためには業界文化自体を変える必要があります。

この業界文化を変えるためのビジネスモデルとして、当社では、AIや自動化といったテクノロジーを用いることで生産性を上げ、お客様から高い評価をいただいております。同時に、AIにすべての業務が置き換わることはないと考えているため、テクノロジーを使いこなせるエンジニアとして育てる教育にも力をいれております。

その結果、ゲームのテスターという業務が、将来にわたって続けていける安心したエンジニアの仕事になっていくのではないか。そのような想いを込めて「品質管理に、革命を。」というビジョンを掲げております。

Q3. 採用や組織づくりにおいて重視されていることはありますか

採用時に一番重視していることは「チャレンジ精神」があるかどうかという点です。ゲーム業界・IT業界は変化がすさまじく日進月歩です。常に自分で学ぶ姿勢や、新しいことに取り組みたいという意欲的な方を採用しています。

たとえば、数年前に採用した新卒社員の発案で社内報をつくることになり、今では新卒が社内報を作成することが当たり前になりつつあります。そのような自発的な取り組みができる人材を獲得できればいいなと思います。

組織づくりにおいては、”社員に適した福利厚生を整備する”ということに力をいれております。ゲーム好きの社員が大半なので、ゲームの課金にまで適用されるゲーム補助や、推し活休暇という制度も最近になって整備をしました。推し活動のためであれば、プラスで有休がとれる休暇制度です。あるゲームソフトの発売日には何人かの社員が休暇を取得していました。

また、私の経営の裏テーマは「健康経営」なんです。エンジニアはどうしても運動不足になりがちなので、ジム補助金制度を導入しています。

メンタルヘルスの面では、対人で話すのが苦手な社員もいるため、アバターを被ってオンライン上でカウンセリングを受けることができるシステムを導入しています。心身ともに社員が健康で働き続けることができる組織づくりも大切にしています。

Q4. オフィス移転の目的・移転後の社内の変化について教えてください

オフィス移転の目的はゲーム色からIT色を強化することで、雰囲気や文化・社風を一新しようと思ったためです。また、移転に伴いセキュリティ面やファシリティ面の強化にも重点的に取り組みました。

入退社におけるセキュリティ管理を強化するとともに、現場とマネージャー層との垣根をなくし、フラットな環境構築にも力をいれています。

これらは、ごくごく当たり前なことではありますが、ゲーム業界のスタートアップでは後回しになってしまいがちな面です。オフィスの環境が大きく変わったことで、ゲームのみにこだわっていた社員たちの考えが徐々に変化していき、その結果、個人のスキルや業務の幅が大きく広がりました。

新しいことを始めるのは、誰しもが怖いものです。しかし、社員の働く環境を根本的に変えることで社員同士の垣根がなくなり、意識の変革が起こりました。今後は本社以外の拠点に関してもオフィス移転に取り組む予定です。

Q5.企業の成長についてお考えをお聞かせください

ゲーム業界は志望者が多く、買い手市場なため、低賃金で長時間労働と思われるような現実もあります。しかし、当社は自分のやりたいこと、ライフプランで叶えたいことを、社員が諦めることなく、叶えることができる会社にすることが当面の目標です。

そのためには業界を変えていく必要があり、業界の変化こそが企業の成長そのものだと考えており、当社がその一端を担っていきたいと考えています。

***

リラクゼーションルームには、社員が持ち込んだゲームが溢れていました。「ゲームをするのにモニターが足りないと社員から指摘されて、買い足したんですよ」と、にこやかに話す山崎氏はどこか嬉しそうに見えました。業界文化を変えたいとの高い志を持つ社長ですが、社員の健康を気遣う表情はとても和やかで、笑顔を絶やさないのが印象的でした。

社員の働く環境を整えるだけではなく、社内の垣根を取り払い、意識変革のためのきっかけとしてオフィス移転を活用した山崎氏の発想は非常に興味深いものでした。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

Writing/もりみき
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