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近藤氏

「恐れずに挑戦することが成長の要」株式会社ヒノキヤグループ代表取締役社長兼CEO・近藤 昭氏にインタビュー

2023.10.02

時代の最先端をひた走る経営者に、経営の本質に関わる“5つの問い”を投げかけ、成功の秘訣を紐解くのが本連載「成功を掴んだターニングポイント」。今回は、株式会社ヒノキヤグループ代表取締役社長兼CEOの近藤 昭氏にお話を伺いました。

株式会社ヒノキヤグループは、1988年に設立。「最高の品質と最適な価格で社会に貢献する」を経営理念に掲げ、主力の注文住宅事業に加え、断熱材事業、リフォーム事業などを展開しています。

今回は、2009年から同社の経営を担っている近藤氏に、経営の本質に直結する“5つの問い”を投げかけてみました。

<プロフィール>
株式会社ヒノキヤグループ
代表取締役社長兼CEO
近藤 昭

1967年兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手生命保険会社や外資系保険会社勤務を経て、2001年に株式会社ヒノキヤグループの前進である東日本ニューハウスに入社。専務取締役、副社長を経て、2009年株式会社桧家住宅(現・株式会社ヒノキヤグループ)代表取締役社長に就任。

Q1. 自社の歩みで印象に残っている「転換期」について教えてください

転換期の一つは、2007年の初めての上場(当時の名証二部)です。当時は埼玉発祥の少し大きな工務店ほどの規模で、上場により事業拡大を企図したものの、初日から株価がつかない状況でした。よくある「華々しい上場」とは真逆で、悔しい思いをしました。

それまでは大きな目標の一つとして「上場すること」も掲げていたのですが、この苦い経験があったからこそ、「上場はゴールではなくスタート」という当たり前の事実に改めて気づかされました。

これらをバネにしたこともあり、事業を順調に拡大するとともにM&Aで事業領域も広げていき、2017年には当時の東証に鞍替え上場もできました。

もう一つの転換期は、『Z空調』というオリジナルの全館空調システムを開発し、弊社の住宅に搭載できるようにしたことです。

以前から日本の住宅は、部屋ごとにエアコンをつけて冷暖房をする、というのが一般的です。これは各部屋ごとに温度を調整できるというメリットがある一方で、脱衣所や廊下などとの室温差が生じることから、真夏には熱中症、真冬にはヒートショック(温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することで起こる健康被害)といった原因になり、残念ながら死亡する方も多くいます。

その一方で、欧米では、24時間室温をコントロールする「全館空調」がほとんどで、家全体が適温で保たれ、熱中症やヒートショックが起きにくい構造になっています。

我々は、日本の住環境の常識を変えたいと考え、2016年からZ空調を展開しましたが、使用するエアコンや配管の工夫などで一般的な全館空調よりも経済的メリットを打ち出したところ、発売から6年で累計販売棟数が2万2千を超えました。

振り返ると、Z空調を開発する以前に、全館空調と相性のよい断熱材を主力とする日本アクアという会社をグループ化したことも功を奏しています。これも転換期の一つといえるかもしれません。

Q2. 自社のパーパス・MVVについてお伺いします

我々は経営理念に『最高の品質と最適な価格で社会に貢献する』を、そして企業の成長を後押しする『2023ビジョン』を掲げています。

実は時代の流れに合わせ、今年に入り経営理念を1文字変更しています。以前は「最高品質と最“低”価格」とうたっていたのですが、「最高品質と最“適”価格」に変えました。

弊社の場合は、品質がよいことに加え、価格も低いメリットがある商品をお客様に提供していくことで事業を拡大してきました。ただ今の時代、“安い”ことばかりを訴求しすぎると従業員の賃金や取引先等のどこかに必ず我慢や歪みが生じてしまいます。時代錯誤とならないよう、お客様への提供だけでなく、組織や事業に関わるすべてを「最適にする」というのが弊社の方向性です。

これら経営理念や『2023ビジョン』を社員が正しく認識、理解して行動できるよう、私からも全社会議などの場で、具体的な事例を交えて発信するようにしています。パーパスやミッション、ビジョン、バリューの浸透には、経営者自らが発信し、行動に移すことが大切だと考えています。

※MVV=ミッション・ビジョン・バリューの略称

Q3. 組織づくりや採用で注力されていることはありますか

今年7月に住宅ブランドなど子会社6社を統合し、本社オフィスのフロア移転と増床をしました。東京駅近くにあるその本社オフィスでは、会社や部署を超えたコミュニケーションを生むために、席は完全なフリーアドレスにしました。

世間ではフリーアドレスでも結局みんな同じ場所に座りがちということもよく耳にしますが、弊社では「毎日同じ席に座ることはNG」というルールにしており、その日の仕事内容に応じ、席を自由に移動するなど、フリーアドレスならではのメリットを活用する社員が増えてきています。

また、これは会社統合の前から続けていることですが、住宅展示場勤務の営業社員とフランクに会話できる場も積極的に持つようにしています。

採用面において、新卒採用の最終面接では私が必ず同席し、考え方や想いを話すようにしています。不採用かどうかを判断するために同席するというよりは、「社長の考えや思いに共感するか」「価値観が合うか」を学生自身に判断してもらうための場にしたいという考えからです。

その甲斐あってか、ミスマッチが少なくなり、業界水準に比べ新卒の離職率が低いです。

Q4.  オフィス移転のきっかけと社内の反応を教えてください

7年ほど前のことですが、サンフランシスコのとあるオフィスを見学する機会がありました。壁や間仕切りがほとんどないオープンかつカジュアルなスペースで従業員が生き生きと働く姿が印象的でした。同時に、今後の人材確保のためにも、働き方やオフィスの雰囲気づくりは重要だと考えるようになりました。

一方で、弊社のような住宅業界は、宅建業免許を持つ事務所の要件として、複数の会社が一つのオフィスに連なる場合、「壁を立てる」など“独立性”がなければならないというルールが存在します。そのため、オフィス環境を抜本的に変えることは難しい状況でした。

今回、会社を一つに統合したタイミングとたまたま重なったこともあり、間仕切りがほとんどないワンフロアのオフィスにリニューアルすることにしました。

物理的に壁をなくし、オープンな空間にしたことで、コミュニケーションが円滑になりました。各事業の活動と課題が見えるようになったので、日常的に接点が生まれているのはうまくいっていると感じています。

コロナ禍をきっかけに職種によってはリモートワークの会社が増えていますが、弊社は基本的には出社を推奨しています。

出社すると、いろいろな人と顔合わせたり、廊下や通路、ミーティングの前後などでも「ちょっとした雑談」をする機会がありますが、そこから気づきやアイデアが湧いてくるものだなと実感しています。
もちろん他の拠点や取引先オンラインミーティングも併用しますが、防音の専用ブースや会議室スペースを多く設けるなどの環境にも配慮し、実際、活用もされています。

他社も時代とともに変わろうと一生懸命な最中、弊社も変わろうと努力しなければ衰退していく一方だと思います。その一つの解決策として、働く環境をよくすることで組織全体の意識も変えられるのではないでしょうか。

【こちらもおすすめ】レイアウトを変えるだけ!コミュニケーション活発化を目指すオフィスづくりのポイント

Q5.  成長していく企業の特徴をどうお考えですか

企業の成長には、トップが主体性をもつことが欠かせないと考えます。

経営の根幹的な部分は人から教えてもらうことではなく、当たり前ではありますが経営層で決定していくことが重要です。弊社もコンサルティング会社を利用することがありますが、会社が目指すべき方向性やビジョンというのは、自分たちで導き出してきました。

これまで、トライ&エラーを繰り返してきたからこそ、弊社はZ空調を筆頭に、独自のビジネスモデルや商品・サービスが生まれた特徴的な会社だと感じます。会社の経営を揺るがすような大きな失敗でなければ、最悪のケースも想像し回避策を念頭に置いた上で、恐れずに挑戦することが重要です。企業の成長はこの繰り返しだと考えています。

***

株式会社ヒノキヤグループの代表取締役社長兼CEOの近藤氏にお話を伺いました。統合直後という組織づくりが難しいフェーズでの工夫や、さまざまな苦難に直面しながらも企業を成長させている近藤氏のお話は非常に興味深いものでした。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

Interview&Photo/Shota Ogawa

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