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asian businesswoman sitting in office, looking tired.

エンゲージメント向上で若手採用・成長・定着を実現!成功の鍵はマネジメント革新

2024.01.11

経営者や人事・人材開発責任者から、「若手・中堅社員の離職が増えている」「現場の施策実行スピードが上がらない」「受け身な組織風土を変えたい」などの声をよく聞きます。このような悩みに頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。

以前、当サイトでマネジメントをアップデートする方法について解説しました。しかし、実際に自社で行う場合はどうすればいいのか…と考えている方もいらっしゃるかと思います。そのような方に向けて、今回は経営課題解決の手段としてマネジメントのアップデートを行った成功事例を解説いたします。ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

A社の事例

今回、事例として取り上げるA社は、独立系SIerで社員は130名、公共、文教、製造、金融分野を主な顧客としている会社です。

課題認識は若手人材が「採用できない、育たない、定着しない」の三重苦です。優秀な人材を惹きつけるために企業の魅力を高めたり、すでに「社員を囲い込む」という発想は通用しないということを徐々に認識しています。また、働きやすい職場づくりが逆に「ゆるブラック」化を招いていないかということであったり、事務所移転やミッション再定義、評価・報酬制度改定、さらには1on1制度の導入などと矢継ぎ早に手を打っているが、なかなか手ごたえが見えてこないと悩んでいる状況でした。

このような状況で、「社員のエンゲージメントをさらに高めるためにはどうしたらよいのか」を追求する取り組みをスタートしました。

エンゲージメントの向上は、社員の定着率の向上だけではなく「組織の生産性」や「イノベーションの推進」にもつなげて、ビジネス変革による持続的な企業価値の向上を図っていくことが重要です。今回は、エンゲージメント向上に成功したA社の事例をもとに、マネジメントのアップデートを進める方法や現場の変化などを紹介していきます。

エンゲージメントの種類

まず、マネジメントのアップデートに触れる前に、A社のゴールである“エンゲージメント向上”について解説します。エンゲージメントには、“仕事そのものに対するエンゲージメント”と、“会社という組織に対するエンゲージメント”の2つがあります。定着率ばかりに目がいくと、上図右側の会社に対するエンゲージメント向上策に偏ってしまいかねません。

A社がまずはじめた施策である、事務所移転やパーパスの明示、制度の改定などの策は、ほとんどが右側の施策です。エンゲージメントは左右両方が重要ですので、片方だけではあまり効果が上がりません。

ではどのようにしてエンゲージメントをあげていけばよいのでしょうか。

A社の場合、右側の組織に対するエンゲージメント施策を打ちながら、左側の“仕事そのものの魅力”を感じてもらうための施策を打っていくことになりました。エンゲージメント向上のカギを握るのは現場のマネジメントではありますが、社員のなかでも特に若手社員とマネジメント層が協力して一緒によりよいものをつくっていこうという認識を持つことが大切です。

【こちらもおすすめ】時代は変わったのにマネジメントはそのまま?昭和マネジメントから脱却すべき理由とは

マネジャーは、今までのマネジメントのあり方を見直し、時代にあったものに更新していく必要があります。これを「マネジメントのあり方をアップデートする」と表現しています。一方、社員は同時に仕事や職場との向き合い方をよりポジティブなものにする、ジョブ・クラフティングの発想を持つことが必要です。マネジメントと社員のどちらもが意識することによって、エンゲージメントの向上を図ることができるといえます。

解決策はマネジメントのアップデート

エンゲージメントの向上を目指すにあたって、マネジメントのアップデートは急務です。マネジメントのアップデートについていま現場で問題となっていることは、「若手の価値観」と「従来のマネジメントスタイル」のミスマッチです。

今や、転職は若手の価値観の変化として当たり前の時代となりました。金銭報酬が1番に重要ではなくなっていたり、「この仕事をしていて自分は成長できているのか」という焦りと不安、そして情報が溢れすぎているこの世のなか、隣の芝が常に青く見えるのです。

一方、マネジメント層は、数字をつくるためだけの指示が中心となったり、上から下への一方通行のコミュニケーションが発生しています。さらに、若手社員にうまく仕事を振ることができずに抱え込んでしまうプレイングマネジャーがいたりと、コミュニケーションが不足しているような状況です。

このミスマッチを放置すると、若手社員の不安は解消されませんし、若手社員の成長鈍化とマネジャーの負担が増加することでマネジャー自身が疲弊していってしまうのです。若手社員はそんなマネジャーの姿を見て「あんな風にはなりたくない」という逆ロールモデル化につながってしまいます。

エンゲージメント向上において天敵となるのは“不安”です。似たような言葉に“不満”という言葉がありますが、不満はガス抜きをしてあげたり、仕組み改善や制度改定といった努力である程度解消はできますが、不安の解消には、別のアプローチが必要です。特に若手社員が抱く不安は“成長”に対する不安です。具体的には、「自分が成長できる仕事をしたい」「そういう仕事ができる会社で頑張りたい」といった思いを抱いています。こうした思いを満たすための取り組みを社内で行っていかなければなりません。

エンゲージメントをどう向上させる?

では、実際にA社がどのようなステップを踏んだのかを紹介します。今回は、当社がオススメしている上図の「エンゲージメント向上施策の展開ステップ」に沿って、3年に渡り進めていきました。

実は、フェーズ2の部長対象のマネジメントアップデートプログラムだけは当初の計画にはありませんでしたが、追加で実施することになりました。フェーズ1のプログラムが終わった後に当社とA社でレビューを行った際に、お互いに「部長の巻き込みが足りなかったような気がしますね」「たしかに、マネジャーさんたちから話を聞くと、部長から『研修もよいけど、日々の業務の数字づくりもやりきること!』と以前とまったく同じことをいっていて、やりづらさを感じた」という声が半数あったためです。

マネジャーからすると、今回の取り組みは中長期的なものを想定していました。結果的に数字成果にもつながることを想定したうえで、研修と現場を切り離さずにお互いのエンゲージメントを高めることで生産性アップ、チャレンジ風土を醸成していこうと考えていました。その共通理解を部長の方々にしていただく必要があったのです。

そのような背景があり、「フェーズ2ではいよいよ若手社員への“仕事に対する認知や行動を変えることで、やりがいを感じない仕事をやりがいのあるものへと変える人事教育であるジョブクラフティングプログラム”に入るので、このままでは思わぬ方向に進んでしまわないか心配だ」という声があがり、今後の展開を見直すことになりました。

その結果、部長対象に、この取り組みへの関わり方の理解度向上をおもな目的としたマネジメントアップデートプログラムを実施し、部長のみなさまにご理解いただく取り組みを織り交ぜることにしました。現在は、3年やってみてどうだったかを振り返り、フェーズ4に進んでいます。やはり上の方のマインドを変えなければ、組織は変化しないのです。

マネジメントのアップデートプログラム展開フロー

ここで、上図内のマネジメントアップデートプログラムについても触れておきます。

マネジメントのアップデートを通じて社内のエンゲージメントを向上させ、優秀な人材の離職抑制、生産性のアップ、イノベーション推進につながるチャレンジ風土づくりを目的として行いました。研修という堅苦しい感じではなく、お互いに知恵を出し合っていく取り組みとして、上図のように進めていきました。

A社の事例を通じて、お伝えしたかったポイントは「マネジメントアップデートを通じ、マネジメントスタイルのミスマッチを解消することで、エンゲージメントは向上する」ということです。

ミスマッチの解消は経営者やマネジャーと若手社員が支え合っていくことが重要です。どちらか一方が頑張らなくてはいけないということではありません。

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人材教育投資の累積効果

A社の今回の取り組みにおいて、人材教育投資の累積効果は以下のようなものが出ています。

1つ目のコミュニケーションについては、上司も部下も「一緒に考えよう」という流れができつつあるようです。お互いに対話するときの話題に変化の兆しがあるようです。

まだぎこちないところはありますが、社員の成長やキャリアも話題にあがっているようです。そうなってくると、最初は、会社から与えられた1on1の制度も、徐々に前向きに捉えられるようになっていくでしょう。

2つ目に、人事評価に対する社員の納得感にも変化があるようです。たとえば、面談で話す内容の中身を意図的に変えたマネジャーが出始めています。結果、通知だけではなく、プロセス行動の承認や今後の課題を一緒に考えたり、動機づけをする機会としての活用を試みるなど、育成の視点が濃くなってきたという手応えを感じているようです。ただ、まだ十分ではないので根気強く継続していく必要があると考えられます。

3つ目については、取り組みはまだ道半ばですが、離職率が5ポイント改善し、ストレスチェックにおいても改善が見られるようです。

これらについて、A社さまは「最初に実施したミッションの再定義、事務所移転、人事制度の改定に今回の取り組みがつながり始めたということではないか」と推察しています。このことから、3年くらいのスパンで見ると、各施策がつながることで着実に諸施策の効果が出てくるということになるでしょう。

ぜひ自社でも実践してみてください。

*imtmphoto / shutterstock

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