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マネジメント

VUCA時代を生き抜くために!マネジメントを最新版にアップデートする方法

2023.12.11

最近、各企業の経営者や人事・人材開発責任者から、「若手・中堅社員の離職が増えている……」「現場の施策実行スピードが上がらない」「受け身な組織風土を変えたい」などの声をよく聞きます。

これらの要因として、「現場のマネジメントが最新版に更新されていない」という問題が挙げられます。そこで2回にわたって、各社の経営者や人事・人材開発責任者の方々とのディスカッションや研修コンサルの現場で見聞きしたことを元に、マネジメントのアップデート方法をお伝えします。

今回は第2回として、マネジメントをアップデートする具体的な方法について解説していきましょう。

第1回:マネジメントのアップデートが求められる背景、どのような方向性でアップデートしていくべきか
第2回:マネジメントをアップデートする具体的な方法とは

マネジメントをアップデートする方法

では実際に、マネジメントをアップデートするやり方についてお伝えします。

まず、アップデートの大前提「アップデートを当事者であるミドルマネジャー、管理職に押し付けてはいけない」ということです。というのも、マネジャー個々の能力や旧態依然とした考え方ばかりにフォーカスがあたりがちですが、そもそもマネジメントのアップデートは会社全体の課題であり、現マネジャーだけの課題ではないからです。

マネジャーに「あなた方のマネジメントは古いから、変えてください!」とするのではなく、「会社全体でマネジメントのアップデートを進めていきたいので、一緒にやっていきましょう」というスタンスが重要です。

こうした前提のもとにマネジメントをアップデートする方法について5点をお伝えします。

【こちらもおすすめ】幹部を育てないと会社は伸びない!幹部のマネジメント力を上げるメソッド

前提:「マネジメント能力=スキルの寄せ集め」ではない

前回、マネジメントをアップデートする方向性として「バックキャスティング思考による目標設定力」「等身大型のリーダーシップ」「相談対話型のマネジメント力」「コミュニケーション設計力」の4つをお伝えしました。

ここで一つ、気を付けなければならない点があります。それは、これら4つの能力を身に付ければ、マネジメントのアップデートが実現するわけではないということです。

マネジメントに必要なスキルを要素に分解して、“〇〇力”とテーマを設定し、教育などの施策を講じるのが一般的なやり方です。細分化することで、施策を提供する側(人事・人材開発)は企画しやすいですし、研修・コンサルティング機関もテーマを細分化してパッケージ化することで、効率的にサービス提供することができます(効率という点ではメリットがあります)。

しかし、細分化して施された策というのは、全体としてよい方向へ変化してきている実感が得られにくいという落とし穴があります。

この落とし穴は、人事制度の刷新、組織体制の変更、コミュニケーションツールの導入においても同様です。確かに、一つひとつの施策が素晴らしく、その都度の評判がよかったとしても「それで、組織全体として、よくなったか」というと、疑問が残ってしまうのです。

このような点を念頭に置きながら、マネジメントをアップデートする方法を考えていきましょう。いわずもがな、有機的である企業においては、「部分の集合体=全体」ではないのです。

1:各要素の「つながり」に着目する

マネジメントをアップデートする施策一つひとつが素晴らしくても、各要素がつながらないと期待する成果が上がらず、もったいないことになってしまいます。

マネジメントをアップデートする研修を実施しても「受講者個々人の能力開発」が「点」で終わってしまっては効果の持続性がありません。「人的資本経営 ISO30414」にもある通り、経営戦略と人事戦略を連動させ、「経営がありたい姿に向かっていくために何に集中するか?」「そのためにも、どのようなマネジャーが必要なのか」「マネジャーの変化を組織としてどう支えていけばビジョン・中期経営計画の方向に進むか」と考え、繋がりをもって実践することが必要です。

2:見えない問題を洞察する

マネジメントをアップデートする施策を講じる際、当該マネジャーの一人が頑張って何とかしようとする昭和的なスタイルではなく、「マネジャー同志の連帯を築く」「マネジャーがメンバーに相談する」「マネジャーとトップ層が話せる場を設ける」など、周囲との関係性強化を重視したアプローチを取るのが効果的です。

関係性には「どうせあの人にいっても……」という思い込みや、積年のしがらみがあったりします。厄介ですが、ここに蓋をして綺麗ごとをいっているだけではマネジメントのアップデートはできません。

3:「問題意識の喚起から定着・波及まで」ストーリーを描いて

アップデートには、それなりの工数と時間がかかります。セミナーや合宿を1~2回実施しただけでは効果が期待できません。以下のように「問題意識の喚起(アップデートの必要性を共有する)」から「効果の定着・波及」まで全体ストーリーを描いて取り組む必要があります。

①問題意識の喚起:問題事象の背景にマネジメントの問題があるのではないか?
②現状分析・洞察:どこに原因があり、このままだとどうなるのか
③仮説設定:目指す成果と因果仮説を仮置きで設定
④推進体制の整備:三位一体で取り組む(マネジャー × 支える人 × 制度・仕組み)
⑤プログラムの実施:ワークショップなどのプログラムを通じて、小さくとも目に見える「変化の兆し」を掴む
⑥プログラムレビュー:マネジャー自身や周囲の変化を確認する
⑦定着・波及:変化の兆しを組織へ波及させる

4:プログラムのテーマは経営成果につながるものを選ぶ

アップデートのプログラムに取り組む際、「何をテーマに話し合うか?」は考えどころです。つまり、研修、ワークショップ、オフサイドミーティングでの題材です。

現場のマネジャーを集めて話し合う際、現場の仕事とかけ離れたテーマでは、「この忙しいときに何でこんな話し合いをするのか!」と強い反発を受けそうですし、現場の仕事や数字そのものでは、通常の会議と変わらず、ブレークスルーが起きません。

下記テーマは、実務に近く(かといって近過ぎず)、経営成果とのつながりがあるので適切です。

  • 中期経営計画で掲げている〇〇…中計は会社の注力テーマの塊なので、大義名分が立つ
  • エンゲージメントサーベイの結果…エンゲージメントと業績との相関は、近年の多くの研究で証明されている

テーマ例:「エンゲージメントサーベイの結果」で話し合う場合

サーベイ結果をもとに話し合う場合は、下記のフレームに沿って進めると実のある意見交換ができます。

①このデータは何を物語っているのか?
②なぜこのような結果になったのか?
③どうありたいか? 今後どうすべきか?
④このままいくとどうなるか?

①~④の流れで進めることで、マネジメントをアップデートする必要性、何をどうアップデートしたらよいかが見えてきて、マネジャー間でベクトルが揃ってきます。社内だけでは進行に不安がある場合は、第三者にファシリテーターを依頼するのも一案です。

5:「三位一体」で取り組む

マネジメントのアップデートは、人事・人材開発(会社によっては経営企画室)が音頭を取って始めないと何も起こりません。事業ラインに問題意識の強い人がいるとよいのですが、そういう例は多くはありません。そして、始めた後も、現場マネジャー任せでは続きません。「慣性の法則」により従来マネジメントに戻ってしまいます。そのため、人事・人材開発が継続フォロー策を講じる必要があるのです。

取り組みには、それなりの時間とお金を投資することになります。継続するにはスポンサー(投資のGoサインを出す人=経営陣)の賛同が必要です。賛同を得るには取り組みの成果(手応え・変化の事実の積み重ね)を経営陣に見せていく必要があります。

マネジメントのアップデートは一朝一夕には行きませんので、三位一体での継続的な取り組みが必要です。焦らず、諦めず、根気強く進めていきましょう。

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今回は、マネジメントをアップデートする方法について解説しました。昭和的マネジメントから脱却する「自社ならではの取り組み」を考える切り口としていただければ幸いです。

【前回の記事はこちら】時代は変わったのにマネジメントはそのまま?昭和マネジメントから脱却すべき理由とは

*EKAKI, metamorworks, thailerd  / PIXTA(ピクスタ)

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