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黒板にPDCAサイクルを手描き – プラン・ド・チェック法

施策を積極的に打つだけではダメ!PDCAサイクルの質を上げるチェック方法とは

2024.01.24

みなさんの会社では経営計画を作成し、計画どおりに実施、施策が進むなかで状況や成果をチェックしていますか?

筆者は経営コンサルタントという立場から、多くの企業の経営計画の作成、実施およびチェックの状況についてお聞きしてきました。そこから感じるのは、多くの企業は何かしらの経営計画を作成し、経営計画上の施策は可能な限り実施しているということです。一方で、「施策の実施をきちんとチェックしているか」となると途端に該当する企業が少なくなります。

今回は、経営計画の実施で成果をあげるためにチェックが重要な理由や、施策の実施状況を効果的にチェックするためのフレームワーク、また組織にチェックを浸透させるためのポイントについてご紹介します。

そもそもPDCAサイクルとは

企業の経営において、計画(Plan)~実施(Do)~チェック(Check)~改善(Action)のサイクルを回すことを、PDCAサイクルといいます。

そもそも、このPDCAサイクルは第二次世界大戦後にアメリカから来日し、日本の製造業の生産性改善に貢献された統計学者エドワーズ・デミング博士の教えから生まれたものでした。

デミング博士は統計学者であるため、製品の品質が統計上予定された基準を満たすものかどうかをチェックすることを重視しました。そして、デミング博士の品質管理の考え方を経営にも応用して生まれたのがPDCAサイクルなのです。

なお、デミング博士が日本にもたらした品質管理の考え方は、高度成長期の製造業の発展に貢献しました。その後、日本経済の急成長に脅威を感じたアメリカは、デミング博士が日本にもたらした品質管理手法をアメリカに逆輸入し、その製造業の復活につながったのです。

やりっぱなしはNG!チェックが重要な理由

さて、製造業の品質管理上は重視されてきたチェックですが、PDCAサイクルでは十分にチェックが実施されないことがあります。しかし、経営計画上の施策が実施されても、そのチェックが行われないと、目指す業績を達成できなかったり、状況の変化が起きないことがあるのです。ここでは、その理由について考えてみたいと思います。

求めていた基準に到達したかわからない

まず、施策の実施状況のチェックが行われないと、経営計画が求めていたものに到達したのかどうかが分からないのです。デミング博士が製品の品質が予定された基準を満たすものかどうかチェックしたように、施策の実施状況も経営計画が求めているものかどうかをチェックする必要があるのです。

たとえば、経営計画では100社の新規開拓を行うことを求めているのに、実際には10社程度の新規開拓しか見込めないとしたらどうでしょうか。当然、施策の実施状況は経営計画が求めている目標とは乖離していることになります。しかし、チェックされなければこの乖離は分かりません。

基準との差を埋める施策を打てない

また、施策の実施状況のチェックが行われないと、経営計画が求めているものとの差分が分からないため、差分を埋めるための改善の施策が企画されたり、実施されることはないのです。

前述の例であれば、100社の新規顧客数目標に対して10社程度の開拓見込みしかなければ、その差分は90社となります。経営計画の目標を実現するためには、新規開拓のエリアを拡大したり、営業パーソンを増員しないといけないかもしれません。しかし、チェックがなければこうした改善施策も企画されることはないのです。

このように、施策の実施状況のチェックがなければ経営計画が求めていたものに合致するのかどうか分からず、また仮に求めているものと差分があっても、その差分を埋めるための施策が企画されたり、実施されることがないのです。

だからこそ、施策の実施状況をチェックすることが経営計画の目指す業績を実現し、状況の変化を起こすために重要になってきます。

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効果的なフレームワークとは

ここから、施策の実施状況をチェックするための効果的なフレームワークについて考えていきます。

「プロセス面」と「成果面」2つの観点から施策をチェック

施策の実施状況をチェックするとき、2つの面があります。それは、施策の「プロセス面」と「成果面」の2つです。

施策のプロセス面と成果面が経営計画が求めていたものに合致するのかどうかチェックするためには、経営計画を作成する際に、求める施策のプロセスと成果の基準を決めておく必要があります。

この基準は、プロセスでは施策ごとの「ガントチャート」ですし、結果では施策ごとの「KPI」で、両方とも経営計画で明確にしていきます。

プロセス面:ガントチャートとは

「ガントチャート」とは、施策ごとの責任者、詳細タスク、担当者、スケジュールを明確にするものです。経営計画の作成の際にガントチャートで計画を立てておき、チェック時に計画どおりに進んでいるかどうかを確認していきます。

チェック時に計画に対して進捗が遅れていることがわかったら、その原因を確認したうえで進捗遅れを取り戻すための施策を企画し、実施することになります。

成果面:KPIとは

「KPI」とは経営計画上の施策の成果が出ているかどうかを測定する指標と目標値になります。たとえば、前述の新規開拓の施策であれば、「新規顧客数」と「100社」はKPIに該当します。

プロセスと同様に、結果でもチェック時に計画に対してKPIが未達であれば、その原因を確認したうえで、未達を取り戻すための施策を企画し、実施します。また、未達の場合、KPIにもともと無理があったり、環境変化(コロナ禍のように突発的な事態など)により達成が難しい場合があります。このような場合にはKPIの見直しを行います。

このように、プロセスではガントチャート、成果ではKPIを活用することにより、経営計画が求めていたものと施策の実施状況が合致するかどうか、また差分がどの程度のものかをチェックすることができるのです。

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組織にチェックを浸透させるには

最後に、チェックを組織に浸透するためのポイントについてご紹介します。

PDCAサイクルとして施策の実施状況のチェックを根づかせるためには、チェックを行う会議体を設定しましょう。この会議体は最低2段階設定します。

1段階目:各組織のトップと各施策の責任者・担当者が参加

1段階目は各組織のトップと各施策の責任者・担当者が参加し、チェックする会議体とします。

1段階目の会議体では、プロセス・成果ともに経営計画通りに施策が進んでいれば問題ありませんし、もし差分があっても現場で改善策を立案、実施できるものであれば対応します。

しかし、プロセス・成果ともに経営計画通りに進んでおらず、かつ現場レベルでは差分を解決できない場合、2段階目の会議体にあげていきます。

2段階目:経営者も交えて検討する

2段階目は経営者と各組織のトップ、各施策責任者が参加し、チェックする会議体とします。ここでは、1段階目からの会議体からあがってきた施策の進捗状況に対して、経営者も交えて検討します。

もし、単体では目標を実現できない場合には、全社レベルで改善策を検討します。組織横断で改善していくためには経営者のリーダーシップが必要です。全社レベルで取り組んでも目標を実現できない場合は、そもそも経営計画が求めるプロセス・成果の目標に無理があった可能性があります。その場合は目標自体を見直すことが必要です。

また、時間の経過による環境変化により、経営者として目標を変化してもよいという場合があります。この場合もこの会議で目標の見直しを行いましょう。

このように目標を見直すことができるのは経営者だけですので、この会議には経営者の参加が必須です。

施策のプロセス、施策の結果ともに未達の場合の対応

1段階目、2段階目ともに、プロセス・結果ともに未達の場合、責任者や経営者はその理由を確認してください。そのとき、多くの答えがリソース、つまり「ヒト・モノ・カネ・情報」が足りないというものです。特に、「他の業務で忙しくて時間が取れない」というのは常套のように使われるセリフです。

そのようなときには、「リソースが足りない」ということで終わらせてはいけません。他の業務からリソースをシフトするなど指示を出していくことが必要です。

たとえば、他の業務で時間が足りないということであれば、他業務のなかで優先順位が低いものをなくしたり、他の人に業務をシフトするなどの指示をすることです。そのような指示は、多くは上長である責任者や、経営者でないとできないことですから、「リソースが足りない」で終わらせず、リソースが足りるような環境をつくっていきましょう。

最後に

前述したような会議体での施策の実施状況のチェックも、当初はなかなか円滑には進まないものです。しかし、粘り強く進めていくなかで、施策の進捗状況が経営計画の求めるレベルに合致していき、最終的には経営計画で目指した業績につながるのです。

筆者がご支援させていただいている企業でも、従来は経営計画の作成後の実施、チェックは各現場に任せていましたが、チェックの進め方を見直し、2段階目の会議を設定しました。そのことにより経営計画で掲げた施策が進み、経営計画が目指した結果が生まれるようになりました。

ぜひ、経営計画の実現に向けてこの記事を参考にしてください。

*Piscine26, Forgem, SFIO CRACHO, Torbz, polkadot_photo / shutterstock