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クロスSWOT分析

中小零細企業にマッチする!根拠ある戦略・戦術をつくるクロスSWOT分析の手法

2024.01.30

前回の内容を簡単に振り返ります。初めて聞いた方もおられるかもしれませんが、クロスSWOT分析はその原型が1960年代に米国で発案された中小零細企業に馴染みやすい伝統的ビジネスフレームワークです。資金面のカギを握る取引金融機関も精緻なクロスSWOT分析を高く評価するためしっかりと理解しておくべきでしょう。

【ダウンロードはこちら】Excel(エクセル)でクロスSWOT分析シートを作成する 

クロスSWOT分析の構成は、①積極戦略、②改善戦略、③差別化戦略、④撤退縮小戦略の4つです。中小零細企業が業績向上やV字回復へ向けて最優先で取り組まねばならないのが前回詳細に説明させていただいた積極戦略です。今回は②~④の戦略について説明していきます。

クロスSWOT分析とは

前回掲載した「クロスSWOT分析イメージ図」を再掲します。クロスSWOT分析の全体像をおおまかに掴む際に参照してください。

【前回はこちら】金融機関との共通言語に!中小零細企業にクロスSWOT分析が必要な理由

改善戦略について

置かれた市場を攻略していくうえでボトルネックとなっている点をあぶり出し、改善するための施策を考え出すのが改善戦略です。「機会」×「弱み」を掛け合わせて思考していきます。

この改善戦略は一気に短期間で克服しようとすると無理がたたってしまうケースも考えられます。じっくり腰を据えて、積極戦略の効果をより発揮するために障害を排除していく必要があります。「弱み」の内容もその企業によって分野は多岐に渡ると考えられます。特に多いのが経営の3要素、ヒト・モノ・カネでいえば、ヒトとカネの問題ではないでしょうか。経営資源を冷静に見渡し、資金面が最優先であれば、資金繰りの改善に最優先で取り組まねばならないでしょう。ヒト(人材面)が問題なら、採用と育成、さらには内部の管理体制まで大きくメスを入れていかねばならないと考えられます。

時間軸はどうしても長期視点で考えていかねばならず、劇的な改善は見られない場合がほとんどです。じっくりプロセスを計画し、克服していかねばならない領域であると思います。

差別化戦略について

かの高名な経営学者であるフィリップ・コトラーが提唱した「ポジショニングこそ競争優位の源泉である」という考え方が近しいと思います。

経営資源が得てして乏しく、潤沢とはいえない中小零細企業が市場において勝ち抜いていくには、競合他社が少なく、模倣しづらい市場における立ち位置を確立することが必要です。「脅威」×「強み」で思考して戦略を考えましょう。自社がどういう独自の立ち位置を意図的につくり、競争優位の状態にしていくのかという観点で戦略を考え進めていきます。

「言うは易く、行うは難し」のテーマかもしれませんが、ここでも経営者と幹部複数人、ケースによってはコンサルタントを交えて、思考の盲点が発生しないように、じっくりと事にあたらねばなりません。ここで自社の「強み」は、「脅威」を克服するに値するチカラがあるのかをシビアに見定めねばならないでしょう。もしかすると、中小零細企業経営において永遠のテーマかもしれません。

撤退縮小戦略について

撤退縮小戦略は、致命傷回避戦略といい換えることもできます。とにかく、業績が思うように伸びない場合を冷静に見定めることが大切です。損切の判断はどんな局面においても難しい意志決定となります。事を起こす前に撤退基準を必ず決めておくべきでしょう。

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端的な事例

なかなかイメージしづらいと思いますので、筆者が実際にコンサルテーションし、実行してきた戦略・戦術事例を示します。少しおおざっぱ過ぎるように思われる方もおられるかもしれませんが、中小零細企業においてはどういったフレームで戦略を考え、のちに客観的に振り返りができる体制を構築するかということが重要です。内容の濃さや細かさは少しずつ増していけば問題ないと筆者は考えています。

今回はとある製造業の事例を取りあげ、紹介します。

積極戦略
今まで、近隣と県内中心の販売網であったが、大手商社とのパイプを構築し、関東や東北といった遠方での販路を開拓しました。売上の落ち込みを吸収し、微増させていくという積極戦略を取りました。これにより、経営者の行動における優先順位が明確になり、副産物として営業活動全体が活発になり、既存の県内販売網での売上も伸びていきました。

改善戦略
老朽化した設備の入れ替えが進んでいなかったので、国と県の補助金も活用しつつ、着実に生産効率を高めていくという改善戦略を設定しました。当然、経営計画を示したうえで、取引メインバンクのプロパー融資での支援を取り付け対応しました。この動きに加えて、人材の採用と育成に長期視点で取り組み、製造面、販売面での能力を高め、さらなる受注増に備えられる体制になりました。

差別化戦略
自社ブランドが県内においては一定レベルでは確立しており、商品を構成する要素も、競合他社にはない独自技術があるため、この点をまだ知らない消費者や販売先に訴求していくためのさまざまな宣伝告知、ブランディングに取り組む戦略をとっています。

撤退縮小戦略
新商品と新事業においては計画段階で明確な撤退基準を定めたうえで取り組むという戦略を取り、時には大胆な断捨離を行っているという現状です。

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まとめ

2回に渡って、経営戦略立案の手法であるクロスSWOT分析について説明しました。中堅大手企業において戦略を土台とした戦術の決定のプロセスはそのほとんどの企業で確立されていることと思います。しかしながら、経営資源が乏しく一つの施策のミスが致命傷に繋がりかねない中小零細企業においては、今までの取引の慣習に引っ張られた案件積上げ型の経営がなされているケースが多く見られます。日本全体が高度経済成長期のような、市場規模がひたすら拡大している外部環境であるなら自然体の経営でも大丈夫であったのかもしれません。

しかし、いうまでもありませんが日本はとっくの昔に人口減少社会に突入し、その流れに拍車がかかった状態です。そしてVUCAの時代といわれる、不確定でつかみどころのない社会情勢や社会環境という厳しい状況において経営を進めていかなくてはなりません。そのためには、自社の経営資源を冷静に見て、最適と思われる仮説に基づいた戦略の立案が必須となってくるのではないでしょうか。

今回の内容が少しでも、読者の方々にとって参考になり、行動変容のきっかけになれば幸いです。

*metamorworks, 阿部モノ, Jake Images, freeangle / PIXTA(ピクスタ)

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