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過去の財務分析をする必要はある?行うメリットや流れについて解説

2024.05.29

「財務分析」とは、決算書などをさまざまな財務指標において分析することです。自社の財務的実態を、客観的な数値で把握できます。得られたデータを活用すれば、業績を伸ばしていくための施策にも反映できるでしょう。中小零細企業経営において財務分析をすることは、飛躍的に業績を伸ばすきっかけになると筆者は考えています。

今回のコラムでは、財務分析を行うメリット、必要性、流れ、実際の手法の一部についてなどをわかりやすく説明します。

財務分析をするメリット

「財務分析は難しい印象」「難解でイメージが湧かない」「そもそも何をどうすれば良いのか皆目見当がつかない」と思われる方は、多いかもしれません。なかには、毎年決算書を作成するものの、うまく経営に活かせていないと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

財務分析のメリットは、基本スキルを習得してしまえば、自社における大筋の問題点と解決の方向性を見つけられる可能性がある点です。また、仮説構築のチカラも身に付くでしょう。経営改善に着手するために、まずは一期分の決算書と真剣に向き合ってみることをおすすめします。

過去の財務分析をする必要性・重要性

「将来に向けた改善や経営の発展に活かす」これこそが、財務分析を行う目的といえるでしょう。過去の財務分析を行うことで、将来の収益性を予測しやすくなります。また、過去の数値を参考に、自社の成長性を把握することも可能です。

自社にとってあるべき理想の未来を描くには、過去と向き合うことから始めなければなりません。正しく過去を理解することで、正しく未来を予測しやすくなります。つまり、現状を知り進んでいくための道筋を設定していくために、財務分析は不可欠です。

初めて行う人はとっつきにくいと感じるかもしれませんが、慣れれば短時間でスムーズにできるでしょう。毎月の経営状態の振り返りに加え、決算期ごとに自らの手を動かして財務分析することは、特に経営管理分野のチーム組成が不十分な中小零細企業にとっては、大切なことです。

過去の財務分析に必要な書類

損益計算書・貸借対照表(附属明細書・別表もすべて)

財務分析では、主に損益計算書と貸借対照表を利用します。

損益計算書は、その期の成績表です。貸借対照表は今までの経営実績の通算成績であり、資産の状態を表しています。簡単に言えば、企業の健康状態を判定する最大のエビデンスであり、仮説・検証していくための情報源です。

【こちらもおすすめ】貸借対照表とは?作り方や分析法、損益計算書との違いも【わかりやすく解説】

銀行借入返済予定表(銀行から発行される返済明細)

銀行借入をしている企業は、全体の90%以上です。勘定科目明細の金融機関借入一覧では、詳細について記載されていません。具体的には保証協会付なのか、プロパーなのか。貸付方式は証書貸付か、手形貸付(今後は手形の制度上なくなる予定)、当座貸越なのか、分かりません。

銀行借入返済予定表には、融資実行の時期・期間や返済方法など細かい情報が記されており、今後の再編を検討するうえで、金融機関の思惑や自社の組み換え希望に有益な判断材料が詰まっています。

業界平均値データ

業界の平均値は、業績を判断する軸の一つになります。たいていの企業が日本国内を中心に活動しているため、国内同業者の数値が参考になるでしょう。簡単にいえば、中高生時代に全国統一模試で自らの学力がどの位置にあるのか参考にして、卒業後の進学先を考えていたことと同じです。業界平均値と自社の数値を比較することで自らの立ち位置を把握でき、企業が達成すべき目標設定の参考になります。

現在、各業界の平均値データは、日本政策金融公庫のサイトやネット上の経営データサイトで拾えるようになりました。どうしても見つけられない場合は、提携している会計事務所からデータをもらってもよいでしょう。
【参考】小企業の経営指標調査/日本政策金融公庫

財務分析の流れ・手順

損益計算書の項目を確認する

  1. 平均月商を計算する
  2. 差別化要因を探るため、売上総利益率と業界平均を比較する
  3. 売上高営業利益率と売上高経常利益率を算定して業界平均値と比較し、自社の位置を把握する

貸借対照表の項目を確認する

  1. 現預金の月商比を出し、現預金の業界平均値と自社の水準を比べる
  2. 在庫の月商比を出し、業界平均値と自社の在庫水準を比べる
  3. 経常運転資金額を算出し、経常的に必要な運転資金額を出す

経常運転資金額の計算式は、以下の通りです。
売上債権+棚卸資産-仕入債務

返済予定表を確認する

返済予定表では、以下を確認します。

運転資金借入が4本以上の場合 多重債務で非効率な調達方法であると判断できる
返済負担が大きい場合 複数借入の一本化、長期化の可能性を検討する

経常運転資金に関しては、当座貸越・手形貸付などの短期継続融資を検討してみてもよいでしょう。

意識したい分析視点

フリーキャッシュフロー

「経常利益-法人税等+減価償却費」で計算される数値が、1年間の借入の元金返済原資となります。このフリーキャッシュフローが1年間の元金返済額に満たない場合は、フリーキャッシュフローの増加を狙う、もしくは借入の再編で返済額を抑える必要があるでしょう。

【こちらもおすすめ】経営者が知っておくべき決算書の読み方とは?貸借対照表とキャッシュフロー計算書を理解する【第2回】

収益性

儲け指標となる売上高営業利益率の業界平均値と、自社の売上高営業利益率を比較して、収益性の水準を把握しましょう。

生産性

従業員1人あたりの売上高を、業界平均と比較しましょう。

損益分岐点

現在の固定費の水準で、営業黒字を確保するための売上高を計算します。そこに目標営業利益額を足して必要な売上高を出し、今後の目標設定に活用しましょう。

まとめ

いつも不思議に思うのは、人間は健康診断をして真剣に年に1回は自分の健康と向き合うのに、企業の財務的健康状態には割と無頓着な経営者が多いという実態です。

自社の財務分析をすれば、自社が過去にどういう儲け方をして生き残ってきたかがわかります。そして過去の振り返りこそ、未来を描くヒントの宝庫といえるでしょう。この本質を理解できれば、今まで以上に真剣に財務状態と向き合い、永続していく企業が増えるはずです。そんな願いを込めて、今回のコラムを記しました。

繰り返しになりますが、決算書類を直視することは、経営者にとって根幹の仕事の一つといえます。過去の財務分析ができたら、クロスSWOT分析という王道のフレームワークを利用し、自社が置かれた市場でどういう儲け方をしていくか、戦略と戦術を編み出していくことをおすすめします。

【ダウンロードはこちら】Excel(エクセル)でクロスSWOT分析シートを作成する

*fizkes, CrizzyStudio, MEE KO DONG, New Africa, Andrey_Popov, EkaterinaNovikova / shutterstock

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