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売掛金回収できない

「売掛金が回収できない…」弁護士が解説する売掛金の回収方法と予防策

2022.11.25

売掛金が回収できないという問題は、中小企業にとってとても深刻です。売掛金の回収に時間がかかる、回収不能となった場合、倒産してしまう可能性があるからです。今回は、弁護士である筆者が、基礎的な情報から対応策まで解説します。


売掛金とは

売掛金は、物を販売したり、サービスを提供したりしたときに受け取るべき対価のうち、後から支払う約束となった対価をいいます。売掛金の状態のままで現実に回収できなくても、“収入”は発生したことになります。従って、それに対する税金の支払いも必要になってきますので、売掛金の回収ができないとなると企業にとっては大変な痛手となるわけです。

売掛金が回収できない状況とは

売掛金が回収できない場合は、大きく分けて2つに分かれます。一つは、“金はあるけど払わない型”とでもいうものです。支払うだけの財力などはあるが、何らかの理由(正当なものもあれば不当なものもあります)をあげて、支払いを拒否してきます。そして、売掛金が回収できないもう一つの場合が、“無い袖は振れない型”とでもいうものです。こちらは、「お金がないから払えない」「取れるものなら取ってみろ!」と言わんばかりのケースです。この2つのケースでは、債権回収の仕方が違ってきます。

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「金はあるけど払わない型」の売掛金回収

“金はあるけど払わない型”の場合は、法的手段を使用した債権回収に適しています。相手方に対して、弁護士から内容証明郵便などで支払いを催促します。これだけで、支払ってくる相手方も相当数います。さらには、支払い命令手続きや、調停、訴訟などの法的手段をとることにより、最終的な支払いを得ることができます。相手方も支払い能力がある以上、裁判所の命令が出たときには、通常は支払ってきてくれます。

「無い袖は振れない型」の売掛金回収

対して、“無い袖は振れない型”の売掛金回収の場合は、様相が全く違ってきます。相手方としては、そもそも支払うだけのお金が十分にありません。場合によっては、破産も秒読みということもあります。こういう相手に対しては、法的な手段はほとんど意味を持ちません。弁護士から内容証明郵便などで支払いを催促しても、かえって開き直られるケースもあります。また、債権者全員には支払えないが、一部にだけなら支払えるといった場合もあり、下手に内容証明などで刺激すると、「あそこにだけは絶対に支払わない」などと、かえって逆効果になることもあります(もちろん、「弁護士まで立ててこられたのだから、まずはここに優先的に支払うか」と考える人もいますから、相手を見て対応する必要があるということです)。いずれにしても、単に法的手段でグイグイ行けば、債権回収できるという問題ではないのです。

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売掛金が回収できない…となる前にすべきこと

物的・人的担保の取得

債権回収のために非常に有力なのは、不動産などに付ける抵当権などの物的担保や、資産のある人の連帯保証などです。物的・人的担保をどのようにして取得するのかも債権回収にとって非常に大きなポイントになります。もちろん、このような担保を取引が始まる段階で取得できていたら、そもそも債権回収の問題はそれほど深刻なものとはなっていません。いずれ担保から回収できるからです。しかし通常は、なかなか初めの段階から担保を取ることは難しいでしょう。ただ、担保が取れるかもしれない状況は、常に逃さないようにする必要はあります。

例えば、売掛金回収ができていない状況にも関わらず、相手方から更に取引をして欲しいなどという要請されることもあります。「ふざけるな!」と断りたくなりますが、この機会に既存の売掛金債権を含めて、物的・人的担保をとれないかなどを検討することもあり得ます。

資産や保証人の情報獲得

「無い袖は振れない」と言われても、簡単に信用することはできません。相手方もどこかに財産を隠している可能性があるからです。これについては日ごろからの情報収集が大切と言われています。例えば、相手方の大手取引先の情報など、普段の状態なら教えて貰うことも可能だったはずです。自慢半分で、特に聞かなくても教えてくれていたかもしれません。大手取引先に対して、相手方が売掛債権などを持っているのならば、それ自体を差し押さえることも可能になります。また、親や親戚が財産を持っているという情報も、普段から集めておけば、いざという時に何らからの助けになるかもしれません。

売掛金を回収するために

売掛金の回収のために一番確実な方法は、取引形態の見直しだと言われています。極端な話、前払い制にしておけば、売掛金の回収という問題は起こりません。実際、売掛金回収リスクがない分金額を大きく下げることで、前払いに誘導している会社もあります。ここまでやるのは難しいところもありますが、できるだけ担保を取るように心がけたり、財産や取引についての情報を集めておいたりすることは、少し注意すれば対応できるはずです。

最後に

売掛金の回収ができずに倒産する企業も多数あります。そこから連鎖倒産に発展することも珍しくはありません。それだけに、できる限り売掛金回収のためにできることを、問題が起こる前から考えておく必要があるのです。

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*【IWJ】Image Works Japan、EKAKI、paradax、bee / PIXTA(ピクスタ)

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