
令和6年度エイジフレンドリー補助金、申請受付開始!高齢化社会へ向け、申請方法と注意点を解説
「令和6年度エイジフレンドリー補助金」の申請受付が令和6年5月7日から開始しました。令和2年から始まった「エイジフレンドリー補助金」は、近年の高齢者の就労拡大に伴い労働災害が増加したことから、高齢者が安全に働けるような職場環境整備の推進を目的としています。本記事では、どんな企業が申請できるのか、どんなものが補助対象になるのかなどの概要から、申請の流れなども解説します。自社が活用できる補助金であるか、ぜひ確認してみてください。
エイジフレンドリー補助金の概要
エイジフレンドリー補助金は厚生労働省の管轄で、高齢労働者の労働災害を防止するための対策、転倒や腰痛を防止するための専門家による運動指導、健康保持の増進に対する取り組みなどに対して受けられる、中小企業向けの補助金です。条件により最大100万円まで、補助を受けられます。
補助金と似たような制度として、「助成金」が挙げられます。どちらも厚生労働省の管轄ではありますが、助成金は要件を満たす申請者すべてに支給される制度である一方、補助金は期間内に応募し審査を通過しなければ支給してもらえません。エイジフレンドリー補助金は名前の通り「補助金」で、申請すれば必ずもらえるというわけではないので注意しましょう。
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補助金の対象となる企業の要件
エイジフレンドリー補助金を申請するためには、まず下記の基本要件を満たす必要があります。
- 労災保険に加入している
- 中小企業事業者
- 1年以上事業を実施している
どの範囲を「中小企業事業者」とするかは、厚生労働省のホームページに記載されています。まずは確認してみてください。
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対象企業のコースごとの要件
エイジフレンドリー補助金には、3つのコースがあります。前述した基本要件の他、申請するコースにより要件が異なるので、事前に確認しておきましょう。
できるだけ多くの企業を幅広く支援するという観点から、一法人の補助金の支給回数は同一年度内に1回限りです。さまざまな取り組みを行う場合や、複数のコースを行う場合には、まとめて申請するようにしましょう。複数コースで申請した場合の補助上限額は、100万円です。
1. 高年齢労働者の労働災害防止対策コース
「高年齢労働者の労働災害防止対策コース」では、60歳以上の労働者が安全に働けるよう、危険な場所や負担の大きい作業を解消する取り組みなどに対して補助金が支給されます。
項目 | 内容 |
要件 | 高年齢労働者(60歳以上)を 常時1名以上雇用している(役員、派遣労働者を除く) 対象の高年齢労働者が補助対象に係る業務に就いている |
補助対象 | 1年以上事業実施している事業場において、 高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入、その他の労働災害防止対策に要する経費(機器の購入・工事の施工等) |
補助率 | 1/2 |
補助上限額 | 100万円(消費税を除く) |
このコースでの補助対象は「1年以上事業を実施している事業場」であり、建設から1年未満の事業場では対象となりません。補助対象となる労働災害防止対策は、以下の通りです。
(1)転倒・墜落災害防止対策
- 作業場所の床や通路のつまずき防止、滑り防止のための対策
- 転倒時のけがのリスクを低減する設備・装備の導入 など
(2)腰痛予防対策
- 不自然な作業姿勢を解消するための作業台などの設置
- 重量物搬送機器・リフトの導入(乗用タイプを除く)
- 重筋作業を補助するパワーアシストスーツの導入
- 介護における移乗介助、入浴介助の際の身体的負担を軽減する機器の導入 など
(3)熱中症防止対策
- 熱中症リスクの高い暑熱作業のある事業場における休憩施設の整備
- 体温を下げるための機能のある服の導入 など
(4)交通災害防止対策
- 業務用車両への踏み間違い防止装置の導入
工場内の熱中症のリスクの高い作業場において休憩設備を整備する際、休憩設備のエアコン設置は補助対象となりますが、一般的な作業場や事務室に設置するエアコンは対象となりません。また、高所作業台やパワーアシストスーツなど労働者ごとに費用が生じる対策については、高齢者以外の従業員が必要となる場合でも、補助の対象となるのは高齢者の人数分(対策に関わる人数分)のみなので注意しましょう。
2. 転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース
労働者の身体機能低下による転倒や腰痛といった、行動災害の防止を目的とした取り組みにかかる費用対し、補助を受けられるコースです。身体機能維持改善のための専門家(※)などによる身体機能チェックおよび運動指導(オンライン開催可)の、両方を行う場合に補助対象となります。
※専門家:医師、理学療法士、健康運動指導士、労働安全・衛生コンサルタント、アスレティックトレーナーなど
項目 | 内容 |
要件 | 労働者を常時1名以上雇用している(年齢制限なし) |
補助対象 | 「転倒防止」「腰痛予防」のための 身体機能のチェックおよび運動指導などに要する経費 |
補助率 | 3/4 |
補助上限額 | 100万円(消費税を除く) |
メタボリックシンドローム対策などの運動指導を取り入れたい場合には、後述する「コラボヘルスコース」を検討してみてください。また、このコースでは物品の購入はできません。
3. コラボヘルスコース
このコースでは、コラボヘルスなど労働者の健康保持増進のための取り組みに対して、補助が行われます。コラボヘルスとは、医療保険者((協会けんぽなど)と事業者がそれぞれの役割を明確にし、良好な職場環境のもと労働者の健康づくりを効果的かつ効率的に実行することです。
項目 | 内容 |
要件 | 労働者を常時1名以上雇用している(年齢制限なし) 事業主健診情報が保険者に提供されていること |
補助対象 | 事業所カルテや健康スコアリングレポートを活用したコラボヘルスなど、労働者の健康保持増進のための取組に要する経費 |
補助率 | 3/4 |
補助上限額 | 30万円(消費税を除く) |
具体的には、次のような取り組みが補助の対象となります。また、「転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」と同様に、物品の購入はできません。
(1)健康教育・研修など
産業医、保健師、精神保健福祉士、公認心理師、労働衛生 コンサルタントなどによる、健康診断結果などを踏まえた禁煙指導、メンタルヘルス対策などの健康教育・研修など
※オンライン開催、eラーニングなどを含む
(2)システムの導入
健康診断結果などを紙ではなくデータで保存・管理し、事業所カルテ・健康スコアリングレポートの活用などによりコラボヘルスを推進するためのシステム導入
※初期導入費用のみ対象。ただし、パソコンの購入は対象外
(3)栄養・保健指導
栄養指導や保健指導など、労働者への健康保持増進措置
※健康診断・歯科健康診断・身体機能チェックにかかる費用は除く
申請プロセスと期限
申請から交付までの流れは、下図の通りです。
①交付申請書類提出から③交付決定までは月末で取りまとめられ、翌月に下記のようなスケジュールにて審査が行われます。結果連絡の日程もすでに公表されているので、設備導入などのスケジュールが立てやすいでしょう。
申請受付期間(当日消印有効) | 審査期間 | 結果連絡 |
5月7日~5月31日 | 6月 | 6月30日~7月上旬 |
6月1日~6月30日 | 7月 | 7月31日~8月上旬 |
7月1日~7月31日 | 8月 | 8月31日~9月上旬 |
8月1日~8月31日 | 9月 | 9月30日~10月上旬 |
9月1日~9月30日 | 10月 | 10月31日~11月上旬 |
10月1日~10月31日 | 11月 | 11月29日~12月上旬 |
申請に必要な書類
ダウンロード資料
交付申請に必要な書類は、エイジフレンドリー補助金のホームページよりダウンロードできます。サンプルも掲載されているので、ぜひ参考にしてみてください。なお、各コースで提出する様式が異なります。ダウンロード資料の内容を確認しましょう。
ダウンロード資料に加えて必要な書類
各コース共通のもの
- 労働保険申告書
- 労働保険領収書
- 見積書(税抜表示)※相見積は不要
コースにより異なるもの
- 労働災害防止対策コース
- カタログ(購入予定品や使用部材の写真と、型番のページをカラーで提出)
- 図面(対策を行う場所が分かるように印付け、色つけ) など
- スポーツ・運動指導コース
- 運動指導の実施プログラム など
- コラボヘルスコース
- 保険者へ事業主健診結果データを提供できていることが確認できる資料 など
申請方法
近年、ネットから行う電子申請も多くなってきていますが、エイジフレンドリー補助金は郵送または宅配便のみでの受付となります。メールでの申請もできません。封筒に消印が確認できない料金別納・料金後納や、受付日の確認ができない宅配便ではなく、消印・受付日が確認できるような方法で送付しましょう。送付先は、以下の通りです。
書類送付先 |
〒105-0014 東京都港区芝1-4-10 トイヤビル5階 エイジフレンドリー補助金事務センター |
エイジフレンドリー補助金の注意点
交付決定日より前の取り組みは対象外
全コースに共通して、交付決定日より前に安全衛生対策等を開始していた場合は、補助対象外となります。必ず、交付決定後に施工等の取組を行うようにしてください。
申請前には最新情報を確認しておく
エイジフレンドリー補助金の補助対象は、直近の労働災害発生状況や予算額などを勘案して年度ごとに見直されています。そのため、過去に補助対象であった取り組みだとしても、令和6年度(2024年度)は対象外である可能性も否めません。たとえば、下記のような取り組みは過去に補助対象でしたが、令和6年度は対象外なのでご注意ください。
- 危険箇所への安全標識や警告灯などの設置
- 防滑防止の靴
- トラック荷台などの昇降設備の導入
- 事務室や作業場へのエアコン(スポットクーラー、工場扇などを含む)の設置
- 黒玉付熱中症計
- 新型コロナウイルス感染症を防止するための空気清浄機
補助金の二重申請はできない
エイジフレンドリー補助金の補助対象となる取り組みに対して別途補助金(助成金を含む)が交付されている、もしくは交付される予定がある場合は、エイジフレンドリー補助金を利用できません。
最後に
エイジフレンドリー補助金について、内容・申請方法などを解説しました。人手不足の中で高齢者の労働人口も増え、労働環境の整備はますます求められるでしょう。補助金の申請は、積極的に検討していただければと思います。
2024年10月31日までと申請期限が長くあるように感じますが、導入するものによっては現場のレイアウトから検討する必要があり、見積りに時間を要することもあるでしょう。また、交付決定額が予算に達した場合、申請受付期間中であっても受付を締め切るとされています。条件に合致する場合には、早めに検討・申請することがおすすめです。
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