シニアワーカーには特に必要!誰もが気持ちよく働けるオフィスづくりのススメ【産業医が解説】
皆さんの会社の従業員の平均年齢はどのくらいでしょうか? スタートアップ企業で従業員の平均年齢が20~30代が中心という会社もあれば、創業数十年の会社で、ベテラン従業員は70代ということもあるかもしれません。高齢になると働く上でさまざまな問題がでてきますが、誰もが働きやすい環境をつくるにはどのような点に気をつければよいでしょうか。今回は、高齢でも働く❝シニアワーカー❞が働きやすい職場づくりについて解説します。
働くシニアが増えている
近年、❝シニアワーカー❞のための制度が充実してきており、働くシニアの数は年々増えています。2022年の調査で、65歳以上の就業者数は、912万人と3万人の増加となっています。年齢を重ねても、元気に充実した職業人生を送ることができればよいのですが、身体的には年齢を重ねるにつれてさまざまな機能が低下します。頻度の高い慢性疾患としては、高血圧や糖尿病、骨粗しょう症、変形性関節症、難聴などがあります。
【参考①】労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約、概要、統計表等 / 総務省統計局
【参考②】2021年度 高齢者のための健診・予防医療のあり方検討委員会 報告書―健康長寿に向けた これからの健診の在り方について― / 高齢者のための健診・予防医療のあり方検討委員会
「シニアワーカー」は中小企業の大切な戦力
健康課題はありますが、豊かな経験と知識を持った高齢者は人材不足の世の中において貴重な人材です。とくに、人材確保が難しい中小企業ではなおさらでしょう。仕事・趣味に意欲的で、健康意識が高い傾向にある活発な高齢者のことを❝アクティブシニア❞といいます。では、そのようなアクティブシニアを採用するにはどうすればよいのでしょうか? 一般的には、以下の手段が考えられます。
①定年後の再雇用
②ハローワーク
③キャリア人材バンク
④シルバー人材センター
①定年後の再雇用は、技術やノウハウを持つベテラン従業員が働き続けることで、若手の教育に貢献できる、長く働けるということで従業員の就労意欲が上がるなどのメリットがあります。
②ハローワークでは、再就職を目指すシニアワーカーのために相談窓口があります。全国各地に設置されているため相談しやすいことが利点です。セミナーなども開催されています。アクティブシニアの採用に関する各種助成金や支援サービスがありますので、相談してみるとよいでしょう。
【助成金に関する参考】65歳超雇用推進助成金 / 厚生労働省
③キャリア人材バンクでは、就労意欲の高いシニアワーカーと高齢者雇用に興味のある企業のマッチングを行っています。履歴書・職務経歴書の作成支援、キャリア相談や講習など、きめ細やかなサポートを提供しています。
④シルバー人材センターとは、公共団体や民間企業、各家庭から仕事の依頼があると、登録した人材を紹介してくれる仕組みです。雇用ではなく、請負や委任契約となります。短時間から働けること、地域社会の活性化に貢献できることが利点です。
【参考⑤】公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会ホームページ / 公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会
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働くシニアの悩み
個人差はありますが、40歳代くらいから持久力や視力の衰えを感じることが増え、「昔のように無理がきかない」「手元が見えづらくなった」「物忘れやちょっとしたミスが目立つ」などの悩みがでてきます。また、シニアワーカーが課題を抱えやすい業務の特徴としては、以下のような仕事内容です。
・重量物を持ったり無理な姿勢で作業したりと身体を使う
・細かい文字を読む作業、集中力を要する作業
・新しいシステムを覚える必要があるなど変化が速い分野の仕事
シニアワーカーの健康課題として、産業医に相談が多いのは、腰痛や関節痛のために作業がしづらいという訴え、筋力の低下やバランスを崩しやすいことからの転倒、骨粗しょう症により軽い負荷でも骨折してしまったこと、などがあります。ときには、認知症のはじまりが職場で気づかれることもあります。業務中に転倒により骨折すると休業を要する労災になりますし、年齢を重ねると通勤中にケガをする頻度も上がります。実際、年齢が高いほど、労災の件数が多いというデータがあります。
【労災の件数に関するデータの参考】令和3年 高年齢労働者の労働災害発生状況 / 厚生労働省労働基準局 安全衛生部安全課
また、通勤や業務で運転を必要とする場合は、安全な運転ができる認知機能や運動機能が保たれているかについて注意する必要があります。このように、シニアワーカーにとって安全に働ける職場環境や、ミスが起きてしまっても大きな事故を未然に防ぐ仕組みづくりが重要になります。
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シニアワーカーにとって働きやすい職場環境とは
シニアワーカーにとって安全に働ける職場をつくるためにできるオフィスでの工夫として、まずは以下の見直しが必要でしょう。
・つまづかないように段差をなくす
・階段に手すりをつける
・脚立を使わないと届かないような高い場所を減らす
・かがまないといけない低い場所に置くものを減らす
・十分な照明・床の滑りやすい箇所の滑り止めを設置する
また、職場環境改善のワークショップなどにより職場に潜むリスクを評価し、より安全な職場をつくるための取り組みを行いましょう。健康経営を目指して、夏場の熱中症予防に水分補給するリフレッシュメントコーナーや、筋力やバランス機能を保つための運動器具などを設置している職場も増えています。また、iPadなどのデバイスを用いて、文字を拡大や音声読み上げなど、低下している身体の機能を補う技術も発達してきています。シニアワーカーは個人差が大きいので、産業保健職による相談サービスが受けられるとより安心でしょう。
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シニアワーカーの健康課題改善のために
今回は、年齢を重ねてもいきいき働くための施策について、主に職場環境改善の視点から説明しました。そのほかにも、健康診断を確実に実施して結果を役立てること、慢性疾患に関する健康相談、提携医療機関との連携など、様々な取り組みをしている会社が増えています。働くことには、生きがいを得る、コミュニケーションの機会が増える、規則正しい生活を維持しやすいなどの利点がたくさんあります。出生率の低下や死亡率の低下により、老年人口の割合が増加し、労働力の不足についても社会問題になっています。今後は、健康寿命を延ばして、高齢になっても元気に働くことのニーズがますます高まるでしょう。シニアにとって働きやすい職場は、誰にとっても働きやすい職場です。ぜひ年齢を重ねても元気に働く工夫について、みなさんでアイデアを出してみてください。
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*jessie, Fast&Slow, EKAKI, 8×10 / PIXTA(ピクスタ)
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