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女性が2人で話している様子

1on1ミーティングの失敗事例から学ぶ教訓。年上の部下にはどう接する?成功の秘訣をケース別に解説

2024.08.21

1on1ミーティングを行う企業は年々増え続け、一過性のブームではなく常設の仕組みとして定着し始めているといえるでしょう。しかし、実際に1on1を行う指導者の方々から以下のような声をお聞きします。

「話題がなく、結局案件の進捗確認ミーティングになってしまった」
「こちら(先輩・上司)が一方的に話すだけで終わってしまった」
「若手との1on1を実施し分かり合えた感じがしたのに、1週間後には退職依頼が出てきた」
「年上のメンバーに対して1on1を行ったが、まったくいうことを聞いてくれない」

うまくいかない1on1はなぜ発生するのか。本記事では失敗事例から得られる教訓を基に、有意義な時間とするためのヒントをご紹介します。

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CASE1:成長を支援したいが予定調和でかわされる

上司Aさんと部下Bさんのエピソードです。

A:タスクの進捗はどうですか?
B:はい、問題ありません。
A:それはよかったです。ところで、今度のプロジェクトにBさんにも入ってもらいたいと思っているんだけど、どうでしょう。(できれば、リーダーとして立候補してほしい)
B:ありがとうございます。ただ、タスクをかなり抱えている状態でして、サポート的な立ち位置ならなんとかやれそうです。
A:そうですか……。では、また声をかけますね。(リーダーをやってほしかったけど難しそうだな)

解説

Bさんは、社員の中でも1on1をかなり冷めた目で見ているタイプといえるかもしれません。「上司・指導者の業務に付き合います。でも重い責任は負いたくありません」というスタンスが予定調和を引き起こしている状態と考えられます。

「上司も企業から『部下を気遣い、モチベーションを上げなさい』『部下の問題を発見し、成長を促しなさい』なんていわれているんだろう。こちらも仕方なく対応しよう」と、職務上の義務を理解しつつ、自分の冷めた本音を悟られないように接しているのです。そのうえで、責任を負わされることのないように対策を行い、1on1で「上司用の演技」を行うのです。

教訓:等身大の自分を見せて「本音の相互理解」から始める

部下は「上司は抱えている問題や成長させるためのタスクを用意して、自分に任せようとしているだろう」などと考え、本音をひた隠しにしている可能性があります。このような部下に対しては、上司が「どうにかやる気を出してもらわないと」と指導色を強めようとするほど、演技武装で対抗しようとするでしょう。

本気で成長を促したい、本気を引き出したいとするならば、まず上司が腹を割って話すことが重要です。たとえば「上司として成長を促すために話をしているが、Bさんからも私が役割として演じていると思われているように感じる。自分でも本気でBさんに成長してほしいのか、上司の責務としていっているのか分からなくなるときがある。でも、一緒によくなりたいのもまた本音。Bさんはどうだろうか」などと伝え、相互の本音を知り合い、信頼関係を築くことが先決です。

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CASE2:強みや個性を尊重したいが全力回避される

課長Cさんと入社3年目のDさんのエピソードです。

C:この間Dさんがつくった提案資料、要点がまとまっていて感心しました。Dさんはヒアリングと要点把握力があると思います。
D:ありがとうございます。
C:今度新しいプロジェクトが立ち上がるんですけど、複数のお客様からヒアリングしてまとめる必要があって、Dさんの力をさらに伸ばせるかなと思うんですが、どうですか?
D:今抱えている業務量が多くて、これ以上は厳しいです。
C:そうですか……。今はどんな業務を抱えているんですか?
D:(説明)
C:それなら現在の業務は優先順位を落としても問題ないので、プロジェクトを優先してもらえるとありがたいです。
D:そうですか……。ただ、少し厳しい時期なので、一部対応するだけでもいいですか?

解説

Dさんは、「ありたい姿の実現に向けて頑張る部下と、それを支える上司」という暗黙の前提に嫌気がさしているが、自分が落ちこぼれるのも嫌という、1on1という仕組みそのものに意味を見出せていないタイプといえるでしょう。上昇志向が強くなく、大きな責任を負わされることや成長への期待を重圧に感じるのかもしれません。一方で「上司から認められなかったらどうしよう」という不安も抱えているはずです。

つまり「落ちこぼれにはならず優秀過ぎない、ちょうどよい立ち位置で成長したい」というのが本音である可能性が高いでしょう。そこに「次にあなたの成長に向けて任せたい仕事は……」と伝えても、「今抱えている業務が多い」と自分がある程度仕事に向き合っていることをアピールしつつ、「少しだけなら関与します」となるべく責任を負いすぎない方向に、自分の立ち位置を持っていこうとするのです。

教訓:コントロールしようとせず、仕事への向き合い方を見せる

落ちこぼれることからも、先頭に立つことからも回避しようとするこのタイプに「自分も若いときはそうだった」「強みがあるのだから挑戦してみよう」といっても焼け石に水です。どうやったら回避できるか、次の1on1に向けて必死に対策を立ててくることでしょう。(そんなことに時間を使うなら、もっと仕事に向き合えばいいのに……という気持ちは痛いほどわかります)

根底にあるのが「失敗を回避したい」という心理である以上、まず仕事を任せるうえでは「最終的な責任は上司である自分が持つから、思い切ってやってほしい」と伝えることが大切です。実際にトラブルが起こった(起こりそう)なときには、自分が矢面に立ってどのようにリカバーするか見せます。指導者である自分が、仕事(特に失敗の場面)にどのように向き合っているのかを見せることが学びになるでしょう。

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CASE3:意識の高い社員に的確な助言ができない

課長Eさんと、主任のFさんのエピソードです。

E:いつも部署の問題を解決してくれて本当に助かっています。どんなことでもいいんですが、Fさんが仕事で困っていることはありますか?
F:先輩の◯◯さんが、どうしたら前向きに仕事してもらえるか悩んでいます。今のキャンペーンも「お客さんが前向きじゃない」の一点張りで。どうすれば先輩にも協力してもらえるでしょうか?
E:(参ったな。自分も同じことで悩んでいるぞ)うーん……確かによくないけれど、こちらで対応するから、Fさんは自分のことに集中して大丈夫ですよ。
F:そうですか。わかりました。(本当にそれでいいのかな……)

解説

Fさんは普段から前向きで挑戦心が強く、各職場においてリーダー的な立ち位置を早い段階から任されるタイプでしょう。1on1に対しても「待ってました」と言わんばかりに積極的な姿勢で挑むはずです。このタイプが1on1を活用する目的は「考えて行動しても分からない悩みを伝え、ヒントを得る場」という実に前向きなものです。

言い換えれば、その場面で「そうすればよかったのか!」と膝を打つアドバイスが受けられなければ、そのことが不満やストレスとなり得ます。最悪の場合、ある日突然「さらに成長するために次の企業で挑戦したい」という決断に至ることも考えられます。

教訓:その場しのぎをせず、本音を伝える

普段から自らの理想像や課題に真摯に向き合っている人ほど、1on1のような場で出てくる悩みは複雑な背景を持ち、前例のないものが多いと考えられます。しかし、それが理由で問題を後回しにしたり、一時しのぎの回答をすることは、社員との信頼関係を損なうことにつながります。

場を取り繕おうとせず「自分はその件について◯◯さんに伝えようと思う。正直、それでうまくいくかは分からないけれど」「その回答は少し時間をくれないかな。明日には必ず返答するから」といったように、本音で対応し、問題に真剣に取り組む姿勢が重要です。

年上の部下に対する1on1で注意すべきポイント

これまでは、部下が年下である前提でお話ししましたが、実際には、年齢が逆転している状況で1on1を行うこともあります。そこで、年上の部下に対する1on1で注意すべきポイントをご紹介します。

1. 丁寧な言葉遣いを心掛ける

日本の社会では、年齢層が上がるほど「長幼の序」を意識する傾向があります。企業の風土によって敬称の使い方はさまざまですが、年上の人には丁寧語で接することが、無益な衝突を防ぐ効果があります。ご自身が肩書きや地位を理由に偉そうに振る舞っていないか、振り返ってみてください。

2. 期待する役回りを明確にし、感謝の意を伝える

相手の強みや持ち味に目を向け、1on1では「◯◯さんがこれまでされてきたスキルや経験を考えると、ぜひこの役割をしてほしいです」と、期待する役回りについて明確にすることが大切です。また、チームの目標達成に一役買っていることを伝え、疎外感を与えないようにしましょう。貢献してくれたことに対して本人に感謝の意を伝えるだけでなく、他のメンバーに対しても「◯◯さんのおかげで助かった」と公表すると、チームになじみやすくなるのではないでしょうか。

3. 相談を持ちかけてみる

1on1という2人きりの場を活用し、「ご相談があり、◯◯さんのご意見をお伺いしたいのですが……」「◯◯さんの知恵を貸してください」と、自分の弱みや困っていることを伝えて相談してみるのもよいでしょう。

4. 役割行動を遠慮することはない

人によっては年上であることを意識しすぎて、指示出しや指摘をしづらいと感じるかもしれません。しかし相手も大人なので、上司の責任としてやるべきことは何か分かっています。上司としての役割行動を発揮することに躊躇する必要はありません。

まとめ

本記事では、1on1がうまくいかないケースを事例として、部下との相互信頼を図るために必要な指導者の出方についてお伝えしました。指導者として、1on1の能力を高めるうえでのご参考としていただければ幸いです。

*fizkes, wutzkohphoto, Production Perig / shutterstock

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