
経営者が気づかない…部下を潰してしまう「クラッシャー上司」の功罪
昨今では終身雇用の風潮が鳴りを潜め、特に3年以内の若手社員の離職率が全国的に問題視されています。その中でも見過ごせない問題として、退職の理由が「人間関係」にあることです。指揮命令関係にある上司と部下の場合、上司の働きかけが部下の勤続意欲に反映されるといっても過言ではないでしょう。
今回は、部下に「この人の元では働けない」と思われてしまう、いわゆる“クラッシャー上司”の特徴やNGワードの一例、職場環境を改善するための対策について解説をしていきましょう。
目次
クラッシャー上司とは
クラッシャー上司とは、厳しい言動で責め立て、部下を休職や退職に追い込む一方、出世していく上司のことです。
似たような言葉でパワハラ上司があります。パワハラ上司はストレス発散目的で部下をいじめる行動を取りますが、クラッシャー上司は、仕事をうまく進めるための手段として部下を責める傾向にあります。クラッシャー上司には、優秀な人材が多く、部下にも同じレベルの仕事を求めた結果、部下が潰れて(クラッシュ)してしまいます。パワハラが目的ではないため、会社も指摘しづらい傾向にあるのです。
クラッシャー上司が要因かも?若手の離職理由とは
社員が会社を辞める理由はさまざまですが、入社してからの期間が短い若手社員が会社を辞める主な理由としては、まずは残業や休日労働が多いなどの“労働時間”に関する内容も挙げられますが、人間関係に関する問題も離職理由の大きな一因となります。
同僚や先輩、後輩とのコミュニケーションが取れず、悩みを相談できないまま辞めてしまうケースが多くみられます。また、自分の意見が正しいと信じて疑わない“クラッシャー上司”に当たってしまうと、精神的・肉体的に追い詰められ、ボロボロの状態で辞めてしまう若手社員が多くいます。その結果、人手不足に陥ってしまう企業もあるでしょう。
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部下に嫌われる「クラッシャー上司」の特徴

出典: KY / PIXTA(ピクスタ)
特徴1:社内評価が高い
クラッシャー上司は成果を上げてきた実績から、社内評価が高い傾向にあります。しかし、その一方で、同じ完成度を部下にも求めてしまうため、言い方がきつくなってしまうなど威圧的な態度になり、部下が疲弊してしまいます。結果として、部下がクラッシャー上司を敬遠してしまい、コミュニケーションが取れず、仕事に支障をきたす可能性があります。
特徴2:自分がすべて正しいと思っている
自身の成功体験から自分のやり方が正しいと思い込んでしまい、価値観が合わないと「部下が間違っている」と決めつけ、言動を否定したり、意見を聴かずに叱責したりしてしまいます。意見が聞き入れられないことが続くと、部下は疲弊してしまいます。
特徴3:自己承認欲求が高い
社内で評価されているため、「自分がいないと会社はダメだ」「自分が会社を支えているんだ」と思っており、部下が失敗すると過剰に叱責することがあります。責めるだけでなく、大事にならないうちにその後の処理も行ってしまうため、部下の成長機会も奪ってしまいます。
クラッシャー上司が厄介なのは、決して「ストレスをぶつけてやろう」「いじめてやろう」という気持ちではないことです。決して悪気があってやっているわけではないからこそ、改善方法も難しいのです。
クラッシャー上司が使いがち!注意すべきNGワード
ここでは、クラッシャー上司が使いがちなNGワードを紹介します。
NGワード1:「何故やらないんだ!? やる気あるのか?」
失敗した部下にかけがちな言葉ですが、あまりに当たりが強く、仕事に対して真摯に取り組んだ部下に対する言葉としては思いやりのない表現といえるでしょう。
NGワード2:「自分なら、このくらいの仕事はすぐできた」
確認することが困難な以前の上司自身の能力と比較されることで、部下はやる気を失い、上司に対して敵意を抱くような一言です。
NGワード3:「お前のためを思っていっているんだ!」
恩着せがましい言い回しにより、いわれた部下にとって非常に不快な一言になります。上司とはいえ、相手の尊厳を無視した上から目線の言動は部下を苦しめます。
NGワード4:「言い訳無用」
この一言をいわれてしまうと、部下は意見をいえなくなります。その結果、部下が直面したミスに明らかな要因が隠れている場合でも、上司が聞く耳を持たなかったことで見逃され、今後も同じようなミスが発生する危険性があるリスクの高い一言になります。
クラッシャー上司への適切な働きかけとは
クラッシャー上司に気づきを与え、悩んでいる部下を早めに見つけ出すには以下を実践してみましょう。
対策1:相談窓口の設置
クラッシャー上司によって、部下は疲弊してしまい、最終的には休職や退職してしまうでしょう。そのようなことになる前に、社内に相談窓口を設け、早めに状況を把握できるようにしましょう。クラッシャー上司だけでなく、会社で発生するその他の問題への対処法にもなります。
対策2:社内研修の実施
また、部下に指示を出し、会社を回していく役目となる管理職に対する研修の実施という方法も挙げられます。特に、コンプライアンスに関しては全国的に意識が高まっており、企業倫理が欠けている上司は社内に不協和音を湧き起こす存在として懸念視されています。相手に対する考え方や対応法、会社内で守らなければならないルールの再確認など、コンプライアンスに関する研修を実施することで、相手の気持ちに沿った対応を取ることができるようになるでしょう。
対策3:オフィス環境の改善
さらに、クラッシャー上司に苦しめられている社員が他の人へ相談できるように、社員同士が容易にコミュニケーションを取れるような休憩スペースや社員が座る席の配置を見直したりする方法も効果が期待できます。コロナ禍の影響により、社員が顔を合わせて話をする機会は激減しました。役職や業種にとらわれず、大人数から1on1まで、気軽に話をすることができる場を設けることで、社内の風通しがさらによくなるでしょう。
ここまで見ると、クラッシャー上司はよくないという印象ですが、その優秀さは生かし方によれば会社に大きく貢献します。優秀なクラッシャー上司のスキルやノウハウを社内に浸透させるためにも、まずはクラッシャー上司に気づきを与えることが重要です。若手の離職率が高いなどの問題を抱える経営者は、改めて自社を見直し、社内体制や制度を整えてみてはいかがでしょうか。
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